第7話 手のひらの温かさ
森を抜け少し歩くと、待機している馬車が見えてきた。
馬車に乗ろうとすると、後ろに狼が続く。抱きかかえようとすると、シュッという音と共に、びっくりして、後ろずさる。
そして、その煙が人の大きさくらいに大きくなると、その中から、見知った顔……御影さんが現れた。一瞬、また裸になったら?と心配したけど、ちゃんと服を着ていて安心する。
聞いていたけど、本当に御影さんだったなんて。
「レェナ、無事そうでよかった」
「うん、来てくれてありがとう」
私は彼に近づいて、お礼を言った。今度は屈んでではなく、まっすぐ手を差し出す。思わず笑顔になった。
彼の手は温かい。
「あれ……?」
彼が手を握ってくれた途端、涙が溢れてきた。いくら拭っても止まらない。
そしてガタガタと肩が、足が震え始めるのを感じる。
「う…………うっ……」
必死に止めようとしても、止まらない。
安心感もあるし、怖かったのもあるし。孤独だったのも、人ではないとはいえ、声をかけてくれた者が命を落とすのも見た。
御影さんが、優しく私の肩に触れていた。気がつくと、いつのまにか彼の胸に引き寄せられている。
「大丈夫。心配ない」
御影さんの柔らかい声に、安堵して、ますます、涙が止まらない。でもその分、怖さも、悲しみも、孤独も、まるで彼に溶けていくような、そんな心地よさと温かさを感じる。
優しく髪を撫でてくれる手が優しかった。
しばらくして涙が収まるとようやく、私は御影さんから体を離した。彼がどんな顔をしているのか見たかったけど、
今度はユーユが抱きしめてくれた。同時に、ハンカチを渡してくれる。きっと酷い顔してるんだろうな。
「さあ、出発しよう。街まで数時間かかる」
クレフさんが、言ったのが聞こえた。私たちは先に馬車の荷台に入る。
しばらくして、ユーユが重い雰囲気を切り替えるかのように話し始めた。
「御影さん! どうしてここに来る前に、戻らなかったの? なかなか言ってることが分からくて苦労したんだよお」
「あ、ごめん。でも、戻り方が分からなくて」
「じゃあさっきのは勝手に?」
「うん。もしかしたら時間に制限があるのかもしれない」
それから御影さんが、こちらに寄ってきて耳打ちする。
「……さっきはごめん」
「何のこと?」
「あの…………手を舐めてしまって」
そうか、あの狼は御影さんだった。
「狼だったし大丈夫だよ」
「そう言ってくれると助かる。君を安心させたくてしたことだったけど、改めて考えてみれば恥ずかしいよ……」
「ふふっ」
思わず、笑ってしまった。照れる姿がかわいいと思った。
私たちを見てユーユが、ニヤニヤしている。
「どうしたの?」
「なんでもないよおー。元気になったみたいで安心した」
「ユーユもありがとう」
「どういたしまして」
そのまま馬車は走り続け、街には深夜に到着した。
宿屋は深夜にもかかわらず、私たちを快く受け入れてくれた。今日はユーユの提案で、男性と女性で部屋を分けて取ることになった。
私は、宿屋の部屋に入ると、気を失うようにベッドに倒れ込んでしまった。とてつもなく、眠い。
「もーしょうがないんだから……今から服脱がして体を拭くけどいいよね?」
そう言うユーユの声は、どこか興奮した様子だ。ぐったりとした、私の服を脱がし始めている。
「自分でやるよ」と言う前に、私は眠りに落ちていった。




