表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/70

第7話 手のひらの温かさ

 森を抜け少し歩くと、待機している馬車が見えてきた。


 馬車に乗ろうとすると、後ろに狼が続く。抱きかかえようとすると、シュッという音と共に、びっくりして、後ろずさる。

 そして、その煙が人の大きさくらいに大きくなると、その中から、見知った顔……御影さんが現れた。一瞬、また裸になったら?と心配したけど、ちゃんと服を着ていて安心する。

 聞いていたけど、本当に御影さんだったなんて。


「レェナ、無事そうでよかった」

「うん、来てくれてありがとう」


 私は彼に近づいて、お礼を言った。今度は屈んでではなく、まっすぐ手を差し出す。思わず笑顔になった。

 彼の手は温かい。


「あれ……?」


 彼が手を握ってくれた途端、涙が溢れてきた。いくら拭っても止まらない。

 そしてガタガタと肩が、足が震え始めるのを感じる。


「う…………うっ……」


 必死に止めようとしても、止まらない。

 安心感もあるし、怖かったのもあるし。孤独だったのも、人ではないとはいえ、声をかけてくれた者が命を落とすのも見た。


 御影さんが、優しく私の肩に触れていた。気がつくと、いつのまにか彼の胸に引き寄せられている。


「大丈夫。心配ない」


 御影さんの柔らかい声に、安堵して、ますます、涙が止まらない。でもその分、怖さも、悲しみも、孤独も、まるで彼に溶けていくような、そんな心地よさと温かさを感じる。


 優しく髪を撫でてくれる手が優しかった。


 しばらくして涙が収まるとようやく、私は御影さんから体を離した。彼がどんな顔をしているのか見たかったけど、

 今度はユーユが抱きしめてくれた。同時に、ハンカチを渡してくれる。きっと酷い顔してるんだろうな。


「さあ、出発しよう。街まで数時間かかる」


 クレフさんが、言ったのが聞こえた。私たちは先に馬車の荷台に入る。


 しばらくして、ユーユが重い雰囲気を切り替えるかのように話し始めた。


「御影さん! どうしてここに来る前に、戻らなかったの? なかなか言ってることが分からくて苦労したんだよお」

「あ、ごめん。でも、戻り方が分からなくて」

「じゃあさっきのは勝手に?」

「うん。もしかしたら時間に制限があるのかもしれない」


 それから御影さんが、こちらに寄ってきて耳打ちする。


「……さっきはごめん」

「何のこと?」

「あの…………手を舐めてしまって」


 そうか、あの狼は御影さんだった。


「狼だったし大丈夫だよ」

「そう言ってくれると助かる。君を安心させたくてしたことだったけど、改めて考えてみれば恥ずかしいよ……」

「ふふっ」


 思わず、笑ってしまった。照れる姿がかわいいと思った。


 私たちを見てユーユが、ニヤニヤしている。


「どうしたの?」

「なんでもないよおー。元気になったみたいで安心した」

「ユーユもありがとう」

「どういたしまして」


 そのまま馬車は走り続け、街には深夜に到着した。


 宿屋は深夜にもかかわらず、私たちを快く受け入れてくれた。今日はユーユの提案で、男性と女性で部屋を分けて取ることになった。

 私は、宿屋の部屋に入ると、気を失うようにベッドに倒れ込んでしまった。とてつもなく、眠い。


「もーしょうがないんだから……今から服脱がして体を拭くけどいいよね?」


 そう言うユーユの声は、どこか興奮した様子だ。ぐったりとした、私の服を脱がし始めている。


 「自分でやるよ」と言う前に、私は眠りに落ちていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=oncont_access.php?citi_cont_id=122268010&sツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ