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第12話 元の世界へ帰りたい?


「ただ、推測ですが特別な職階級を生み出す土壌を作り出すのが目的を考えると、祖先に何か考えがあったのかも知れないな」


 その推測に続けて、ちょっと話が逸れるが、と前置きして神官長が言う。


「この村は、伝記によると二千年前から防衛機構と共にあるという。そんな昔から脈々と掟を守りながら続いているらしい。ただ、原因はまったく不明なんだが、いつの頃から子供が少なくなっている。このままでは村がどうなってしまうのか!」


 確かにそうなのだ。村で私が一番若い。とにかく、子供が生まれない、不思議だと大人が話しているのを聞いたことがある。


「この異世界でも少子化とは」


 御影さんがつぶやいた。それに神官長が興味を示す。


「御影さんの世界でもですか!?」

「そうですね。国によって、違いますが。中には爆発的に増えている国もあるのです」


 彼はそう言いながら、少し遠い目をしたように見えた。


「人口が減っているのは、この村だけではなく、この世界中でそうなっているらしいので事情が違うのかも知れませんね。それで次に、御影さんの件ですが!」


 神官長は真剣な目をして、御影さんに向き合った。異世界人の能力というのは――。


「ライトの魔法が使えたと聞きまして、魔術師かとも思いましたが、少し違うものを感じます。自然を利用する力のようですが、生憎それに該当する職階級(クラス)を知らないといいますか、聞いたことが無いのです!」

「そうですか……はぁ」


 御影さんはがっくりと肩を落とした。


「知識が無いというだけで実際には何か力が使えるかもしれない。御影さんの元の世界での知識や信仰が元になると思います!」

「うーん。自然ということは八百万(やおよろず)の神ってやつか……」

「やお……? よく分からないけど何か能力、頭のひらめきなどないか、意識しておいてください。こちらでも、レェナちゃんの職階級と合わせて、古い本を調べておきましょう!」


 調査は、何日もかかりそうだということなので、気長に待つことになった。


 その後は、防衛機構を動かす板を見せて貰った。板には、村周囲の生き物がどこにいるのか分かるようになっていた。赤い点で表示されている。昨日の襲撃もそれを見て把握したのだという。


 もっとも、昔は生き物の位置が分かる範囲が今よりもっと広く、空に浮かぶ魔方陣も見えなくするようにできたという。他にも遠方から攻撃できたり、もっと詳しい情報を知ることができたのだとか。

 調子が悪いのは明らかで、昔のように直したいそうだ。しかし、複雑な仕組みになっていて、今では直せる人がいないとのこと。

 御影さんは「場違いな工芸品(オーパーツ)」とか言って感心していたっけ。大昔に作られたはずなのに、今では修理することができない物。


「ロマンだ!」


 とか言っていたけど、男の人はこういうのが好きなんだろうか。私だけほったらかしで、男三人で楽しそうだった。何度かこれを見てよと声をかけてきたけど、興味がわかないので別室で一人でお茶を飲んで過ごしたのだった。

 私の特技。ぼーっとして何時間も過ごせるという技を駆使して。



 神殿からの帰り、私は御影さんと二人で叔母さんの家に向かっていた。

 鮮やかに染まる夕焼けの空。ぽつんぽつんと、村の家々に明かりが灯り始める。すれ違う人はいない。


「――なんかすごかった」

「いつもあんな感じだよ」


 御影さんは、神官長のテンションの高さにすっかり疲れたようだ。


「知識は豊富だった。俺の力が分からなかったのは残念だけど、何かあるなら頑張ろうと思う」

「うん……御影さんは真面目だね」

「そうかな? 君もなかなか……」


 この性格は、彼の世界・国では当たり前なのかな?

 突然こっちの世界に呼び出されて、理不尽な命令を仕組まれて、それに従おうとしている。私だったら、そんなことできるかと言われると……。ずーっとぼーっとしてるかも。


「そうだよ。何もせずに怠けたって私は文句言えないのに」

「そりゃ、君のお父さんからお願い(命令)されたことがあるからな」


 御影さんはちょっと意地悪そうに、少し笑いながら言った。不思議と嫌な気持ちにならない。茶化したように感じたので、私が少し頬を膨らませると、それを見て彼は笑ってくれた。

 そしてふと、疑問に思ったことを聞いてみる。


「ねえ、もし元の世界に戻れるとしたら、帰りたいと思う?」

「そうだな……」


 少し悩んだ上で、彼は静かに言った。


「うん、帰るよ。帰ることができるのなら。やっぱり自分は、元の世界の人間だと思う」

「やっぱり、大切な人がいるとか、楽しいから?」

「大切な人は()()()()()。楽しい? と聞かれてもよく分からない。だけど、戻らないといけない気がする」

「そっか」


 どういう意味なんだろう? もっと聞きたいと思ったけど、今はそれ以上聞いてはいけないような気がした。

 御影さんが帰るとしたら、その時は私はどう思うのだろう。ちくりと、胸が痛んだ気がしたけど、彼の望むようになればいいな、と思うことにした。


「無事、帰られるといいね」

「……そうだね。無事、君のお父さんを見つけて、方法を聞かないと。呼び出せたんだから帰す方法も知っているでしょ」


 そこからは私たちは無言で叔母さんの家まで帰った。


 叔母さんの家に着いて、食事の準備を手伝った。私より御影さんの方が少し、料理ができるようだ。

 うん。ほんの少しだけ! なんか悔しいけど。

 食べるのは私の方が得意のようだ。主に量で。勝った……。


 食事中に、商人の馬車が到着したことを聞いた。明日は買い物とか、旅の打合せを行うことに決まる。

 この後私が、これからお風呂施設に行くと伝えると、御影さんが是非行きたいと言い出した。なんと彼の国では家にそれぞれお風呂があって、毎日入るのだという。

 正直、羨ましいと思った。とはいっても村の他の人は私ほど、頻繁にお風呂に入ったりしないのだけど。


「じゃあ、二人で行っておいで」


 叔母さんがそう言って、送り出してくれた。

 夕暮れになって、空の魔方陣が少しずつはっきり見えてきていた。何度見ても綺麗だと思う。今日も起動しているんだ。

 それを見ながら、今度は他愛もない雑談をしながら、御影さんとお風呂の施設に歩いて行った。

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