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僕は今、朝ご飯を食べている。周りには、知り合いは誰もいない。
そもそも、食べている人数すら少ない状況だ。
だからこそ、僕は、混むことを考え、早く食べ終わることにしたのさ。
「あら、こちらよろしいですか?」
「あぁ、構わないよ」
僕に、声をかけてきたのは初対面の人物じゃない。如月さんだ。
「お名前を聞いてもよろしくて?」
「白桜って言うんだ」
「――へっ?」
「だから、白桜だよ」
下の名前まで、言わないよーだ。姫香って名前は、今の僕には似合ってないからね。
「あ、あ、あら、白桜様ぁ!?」
遠くで食べていた子たちが、全員ムセ始めた。そんなに、皆驚かなくていいじゃないか……。
「あらー、急に口調を変えたと思ったら、小学校へ向け、イメチェンをしたのですね」
「そんなに変わった?」
「え、えぇ。随分……。カッコイイ殿方が居ると思えば……」
なぁんだ、つまんねぇの。って感じの歪んだ表情を見せる如月さん。
あー、なんか、ごめんね……。君のそんな表情、始めて見たよ……。
で、でもまぁ、僕の王子様への第一歩は成功したわけか! ありがとう、楓。
「混む前に、食べ終わりましょう」
「うん、そうしたらいいよ」
さっきとは、かなりテンションが変わった如月さん。通常のテンションに戻ってるんじゃないかな?
こうして、僕らが食べ始めてから10分後。女の子の群れが到着した、と思えば、その群れを従えるように、蓮、凛様、悠斗様の三人が入ってくる。
「うーん、なんかイマイチ、イケてませんわねー」
「君、結構面食いなんだね」
「えぇ、もっと綺麗さが欲しいですわ」
ほー、そのお眼鏡にかなった僕は、結構いい線いってるのか? なぁんてね!
まぁ、調子にのってはいけないね。勝負は、これからさ。
「ったく、姫香は何処行った?」
「探してますわよー」
「ほっときな」
蓮は、不機嫌オーラ全開だ。
それでも、カッコイイらしく、女の子たちが目を輝かせて辺りをうろちょろしてる。
「あ、あの……。横いいですか……?」
「この人は、この如月 舞妓の物よ。もっと向こう行きなさい」
「アハハ、いつ君の物になったんだか」
嬉しそうに頬を染めてた女の子は、凄い形相で如月さんを睨みつけ、ちょっと遠くの席に移動。
でも、ちらちらと僕の方を眺めてる。辺りを見渡せば、同じ状況の人は何名か居るんだ。
「そういえば、白桜様。なんて呼べばいいのかしら?」
「さぁ、そこまで考えてなかったなぁ」
「うーん、できれば白桜様ってわからないようなあだ名がほしいですわね」
「そう? どうせ、クラスは蓮と同じ一組だし」
「あら、残念。私2組ですのよ?」
「2組かー。隣だね」
「えぇ、そうですわね。休み時間に、遊びに行きますわ」
「そう? 覚えてたら待っとくよ」
朝ご飯が食べ終わると、如月さんはちゃっかりと僕の食器の上に自分の食器を載せてくる。こんな時に、レディー扱いしろっていうのかい!?
はぁ、まぁいいよ……。ついでに片付けるから……。
「さ、行きましょう?」
「はい、はい」
エスコートしろってか。ちゃっかりしてるよ、如月さん。
僕は、彼女の肩を抱いて、エスコートするべく歩き出した。
後ろから、女の子の目線を凄く感じた。幸先絶好調?
「なぁんだ、アイツ。スカしやがって」
後ろから、聞こえてきたのは凛様の声。
それ、君の許嫁だからね、と心の中で苦笑しておく。
その後、教室につき、仲良くなったクラスメイトと会話している時に、予鈴ぎりぎりで蓮が入ってきた。息を切らせて走ってきた様子をみれば、どうやら遅刻寸前だったと見た。
そして、僕が座ってる席を見て、凄く嫌そうに目を細めるのだった。
「はーい、皆さん出席を取りますよー?」
そうして、次々に名前が呼ばれていく。
「白桜さーん?」
「はい、おはようございます」
僕は、鏡で練習した王子様スマイルを発動させれば、前に座ってた蓮が、目を見開いて後ろを振り返ったのだ。
その時の彼の表情が、今までで一番面白い表情だったね。




