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僕は、自由研究の課題を見つけるため、クラス全員で移動してた。その最中、凛様や悠斗様の居る3組に差し掛かる。
――すると、悠斗様が、首をがっくりと垂れていた。寝てる……? 居眠りか、何のために学校に来たんだろう?
その時は、それで終わった。
僕ら一組は、図書館へついた。通常の小学校とは違い、膨大な量の本が用意されている。
「姫香、どんな研究にするか決めたか?」
「うーん。興味がありそうな医学書を読んで、面白そうな研究のレポートをまとめていこうかな?」
「――おいおい、小学生が医学書か……。ま、まぁいいけど」
横に居る、蓮が乾いた笑いを浮かべる。
でも、中身は成人済みだからね、医学書の一つや二つくらい普通読むよ。ごめんね、中身おばさんで。
こうして、僕は一人だけ色々な医学書を読み進めた。自由研究なんだから、ある程度研究対象となる人物を確保でき、観察できるのが条件だ。
そうして、行き着いた一つの病気。
それが、『ナルコレプシー』。どんな場所でもすぐ眠ってしまい、緊張しなければいけない重要な場面でも寝てしまう。日本人に多く発生する病気だが、あまり認識されていない病気だ。
――そう、悠斗様を利用させてもらうのさ。
だって、現在進行形で症状は進んでる。彼の授業風景を写真に収めて、後は多数の医学書をまとめ、それを自由研究として提出する。
なんと、簡単で安易だけど、自由研究として最低限認められる物を発見してしまったんだろう!? 僕は、喜びのあまり鼻歌を歌いながら、担任の先生のところへ向かうのだった。
「先生、カメラを貸してください」
「えぇ、いいわよ。何にするか決めたの?」
「ナルコレプシーにしようと思います」
「――あら、いい題材だと思うけど、授業風景1枚じゃ味気ないわね。何箇所か、寝てはいけない場所に病人を連れて行き、現場を押さえるほうがぐっと来るわよ?」
「はい、わかりました」
なるほど。言われてみたらそうかも。僕は、とりあえず先生からカメラを借りて、居眠りしてる悠斗様の写真をゲット。後日、二人でクラシックの演奏会や映画に行こう。できるだけ、早く終わらせたいから、一日で回れる程度にしとくかな?
気分よく図書館に帰り、後はナルコレプシーに関する本を纏めていく。
同時進行で、悠斗様に質問する内容を数個まとめる。
その作業をしていると、先生に声をかけられた。
「どう、ナルコレプシーに関する案件は纏まったかしら?」
「はい、研究対象に質問する項目をまとめているところです」
「そう? それなら、医学で使われてるアンケートを持ってきたの。これ、使えると思うわよ?」
「先生、ありがとう!!」
「いえいえ、どういたしまして。ナルコレプシーは、マイナーなほうだから、いい自由研究になると思うわ。期待してるからね」
「はい、お任せを!!」
* * *
時刻は過ぎ、昼食になった。
その頃には、僕の正体はバレ、「スカしやがって」と言ってた張本人、凛様も笑顔で話しかけてくる。凛様って、結構裏表あるかもね。要注意人物だ。
本当は、如月さんが僕と昼食を食べたがっていた。結構、僕の今の見た目を気に入ったみたい。如月さん、好みの異性はとりあえず、目の保養として側に置いとく癖があるから。
「姫香、自由研究は決まったのか?」
「もちろん、決まったよ」
「へー、そうか。賞を取った生徒を受け持つと、先生の給料がアップするらしいぞ?」
「――あ、そうなんだ……」
うわぁ、これは責任重大。先生の臨時ボーナスのためにも、悠斗様にはお手伝い願おう。
「そうだ、悠斗様。質問いいかい?」
「あ、うん! なに?」
急に話しかけたせいか、ちょっと悠斗様は驚いてた。
よくよく考えれば、僕はずっと凛様か蓮とお喋りしてたもんね。意外と、悠斗様って女の子とお喋りしないんだもん。
だって、あの如月さんでさえ、蓮や凛様とは仲良くなったみたいで、軽口を言い合ってたのに。
悠斗様は、その光景をただじっと見てるだけ。
でも、それが男相手なら違うんだ。凛様や蓮が、他の男子生徒と喋ってる時は、すんなり会話に入っていく。どうやら、悠斗様は女の子が苦手みたい。
最初の反応だって、僕と喋ることを躊躇してたしね。
「本を読んでる時って、全部読み進めることはできるかい?」
「――それが……、文庫本大好きなんだけど、すぐ途中で寝ちゃうんだ」
「そうそう、コイツ最後まで読んだことないんだ。本当に好きなのか?」
「一応、熱心に読んではいるぞ。お前と違ってな?」
「何だよっ!」
「漫画しか読まないくせに」
仲の良い双子は置いとこう。むしろ、邪魔だよ。君たち。
「テレビを見ているときはどうかな?」
「うーん、一応熱心に見てるつもりなんだけど、途中で起こされる」
「なるほどね」
「大勢居る場所で、じっとしてないといけない時、起きてるのは苦手?」
「それが、頑張って背伸びしたりして、眠らないように努力はするんだ……」
苦手、と。これはこれは、順調にチェックが入っていくじゃないか。
「夜は、6時間以上眠ってるかい?」
「うん。最低8時間は寝てるんじゃない?」
「コイツさ、一緒にゲームしてる最中に眠るから、自然と睡眠時間多くなるんだ」
ということは、逆に凛様のほうが睡眠時間は短い。
なのに、特に眠いといった症状はないね。
「眠っている時に金縛りにあった経験は……?」
「あ、昔一度だけ」
「俺もあるよ! 真夜中、急に体が動かなくなるんだ」
「レム睡眠の金縛り現象だね。頻繁に出るようだったら、寝方に問題があるのかも」
「あーっ、俺その時、ゲームで寝落ちしてたから、辛い姿勢だったかも?」
「それは、一般的な金縛りだね。夢だと思って寝直すといいよ。それで、悠斗様、君のほうは?」
「えっ、俺……? 俺は、普通に布団で寝てたよ。いつも通りの時間だったし。朝、目が覚めたら体が急に動かなくてさ……。頭は起きてるのに」
ははーん。目覚めた後の金縛り……。実にいいね。テンプレートのような、ナルコレプシー患者に出会えたよ!!
「お前、起きてるか寝てるかわかんないよー」
「――もしかして、睡眠に関する自由研究か?」
「しー!!」
何か、深く考えていると思ったら、ネタバレしようとする蓮。お願いだから、写真取る前に病院行かれると困るから、自由研究終わった後にネタバレしてほしいんだ。
「答えてくれて、ありがとうね」
「い、いや。これくらい大丈夫だよぉ……、えへへ」
悠斗様は、人懐っこそうな笑顔を浮かべて笑ってくれる。
そうだ、このままお礼と良い、写真確保の予定を立てよう。静かな場所がいいと思うし、ここは、如月さんを利用させてもらうか。僕が写真を取るより、舞台側からこっそり写してもらったほうが、いい写真になるね。
「そうだ、お礼に今度日本舞踊でも見に行くかい? 良い記念になると思うよ?」
「えっ、本当? い、いつにする?」
「そうだねぇ、今週は君が忙しいんじゃ……?」
「どうせ、誕生日は夜だけだ。土日も昼間なら開いてると思うぞ?」
あれ、何故か飛鳥井双子も参加する感じ……?
まぁ、いいけどね。
「わぁ……、楽しみにしてるね!」
「うん、後で予定の時間を送るから」
「――お前、普通の格好で来いよ?」
うっ、釘を差されたか。仕方ない、今回は僕のお手伝いだ。言うとおりにしよう。
その後、僕は如月さんに報告し、無事に自由研究のための写真撮影や、如月さんの日本舞踊見学をお願いした。彼女は、二つ返事でOKしてくれたよ。
知王様の今後の活躍にご期待ください。
知的な方向で。




