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お風呂が終わり、僕はスキンケア一式を終えた後。
メイドの楓に頼み、加湿器の水を全て入れ替えてもらってた時だね。
「白桜様、いらっしゃいますの?」
「あー、如月さーん?」
ドアを開ければ、日本人形のような如月さんが居る。
「メイドが居るのでしょう? 貸してくださいな」
「えぇ、なんでまた?」
「スキンケアを頼みたいの」
実はね、さっきの夕飯騒動のせいで、召使い禁止だったのがOKになったんだ。
一人につき、メイドか執事一人だけって決まりだよ。そのおかげで、楓が部屋にやってきたんだ。
「如月さんとこの召使いは?」
「それが、ちょっと家に事情があるんですの」
後ろを振り向けば、僕のスキンケアセットを持った楓。無表情で無口だけど、腕は一流なんだよ。
「やってくれるってさ」
「流石、楓。よろしく頼みましてよ?」
んー、ちょっと如月さんとこ色々家計事情が危ないのかなぁ?
そういえば、他のお金持ち学校に、有力なお金持ちな生徒はほとんど取られたって聞いたな。如月さん、結構頼みの綱なんだけど……。
「相変わらず、貴方は加湿器をよく使うのね?」
「うん。加湿器を使って、常に部屋を潤したほうが、お肌の美容にいいんだって」
「――後は、こまめに水分補給をするのがよろしいかと……」
「あらぁ、私も使おうかしら……?」
「いいと思うよ。小さい頃から、身だしなみを整えたほうが、後々楽って聞いたなぁ」
「流石、心の友ですわ。話が合いましてね」
心の友だったのかぁ、始めて聞いたよ。
だって、今まで結構仲悪いほうだと思ってたからね。
まぁ、仲がいい子が増えるのは、悪いことじゃないさ。
「召使いが到着したら、早速フル稼働させましょう……!」
「後から到着するの?」
「えぇ、今現在召使いによるいざこざが原因で、誰も信じられない状況ですのよ」
「大変だね、如月さんとこ」
なんだぁ、よかった。それなら、安心したよ。だって、有力なお金持ちが減ると、この学校危なそうだから……。
「それが、誰が次の長になるかで、薙刀を持ちだした大騒動になりましたの……」
「――元々、如月家もヤクザですから……」
「うわぁ、危なっかしい」
でもさ、なんだか映画みたいでワクワクするな。ちょっとだけ、見てみたいね。
「――終わりました……」
「あら、楓。助かりましたわ」
「――いえ、お気にならず……」
その後、楓はせっせと加湿器の水換えに戻る。働き者だなぁ、楓。
そうそう、僕は現在お母様からのメールを見てる。美意識に目覚めたのが嬉しいらしく、色々アドバイスくれるんだ。
でも、やっぱりメイクの許可はおりない。
あーあ、一回楓に相談してみよう……。
「ねー、楓ー。僕、ちょっとかっこよくなりたいんだけど……。メイク駄目って言われたからさー」
「――畏まりました。朝には支度できるよう、準備しておきますので……」
コクコク、と楓は頷く。でも、その後いつも通り加湿器の水の入れ替え作業に戻ってるし。大丈夫かなぁ、本当。
まぁ、駄目でも特に問題ないから、いいけど。
* * *
そして、翌朝。
「――お嬢様、天音様の洗濯をします。すぐ起きて下さい……」
「あぁ、うん……」
天音様というのは、天音ちゃんから貰ったクマのことだ。
実は、僕ってぬいぐるみを抱っこしないと眠れなくて……、僕の部屋には大量のぬいぐるみが隠されている。この秘密を知ってるのは、ここだと如月さんくらいだね。
僕は、眠い目をこすってのろのろと起きる。
昨日、僕の隣で寝ていたはずの楓は、もう既に起きてる。メイドの朝って、早いんだなぁ。
「――お嬢様、身支度を……」
「あー、うん……。おねがぁい……」
まだ、眠いや……。もうちょっと温かい布団の中で、ゆっくりしていたい……。
僕は、渋々顔を洗い、楓に朝のスキンケアをやってもらう。
「――メイクは禁止、ということで……」
「うん、お願い……」
僕が、欠伸をしながら背伸びしつつ、眠気を覚ましている間の出来事だった。髪を束ねて、本物そっくりなウィッグを取り出し、器用に本物そっくりなショートヘアに変えていく。鏡越しに見ているけど、凄い神業だ……。
「――お嬢様は、まだ幼い。素材もどちらかと言えば、美人系。カッコイイ系は、無理です……」
「お、おう……」
ハッキリ死刑宣告しないでくれるかな、楓?
「――なので、可愛い系アイドルを目指します……」
「うん、お願いね」
本当は、もっと色気のある男のイメージだったんだけど。思ったよりイメージとかけ離れてるなぁ。現実って、世知辛い。
* * *
そして、数分後。確かに、男の子っぽい見た目に変身したと思う。でも、本当にコレじゃない感じは凄いよ、楓。
「――お嬢様、それが精一杯です……」
「も、もっとかっこ良く……」
「――中学生になってから……」
「は、はい。ごめんなさい」
今の僕は、確かに男の子っぽいよ? でも、洋ショタで検索したらよく出てくる可愛らしい男の子って感じだ。――もっとかっこ良くなりたいよぉ。
「――小学生にはまだ早いです……」
「うん、理解したよ」
僕は、楓から男子用の制服を受け取った。青と白の可愛らしいチェックの短パンに、黒いブレザー。そして、ネクタイを絞めた。
まぁ、女の子らしさから開放されたね。
「楓、夕方には戻るから!」
「――いってらっしゃいませ、お嬢様……」
こうして、僕の王子様への第一歩が始まった。




