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今現在、夕飯を食べている。
メニューは、飛鳥井家が選抜した一流シェフが作ったらしい。
が、それ程上手いとは感じない。見た目が豪華なだけだ。
そもそも、具同士の掛け合わせが下手だね……。
これなら、まだお母様の料理のほうが美味しいよ。もちろん、白桜家のシェフなら格段に上さ。
だって、白桜家の母方のお祖父様は、アメリカで一流日本料理店を出す板前。その技を学ぶため、遥々日本から学びに来るお弟子さんも多い。
そして、母方のお婆様は、五つ星フランス料理店を持つ、一流シェフ。そう、実はお母様、料理界のサラブレッドの間に生まれた娘なのさ。
おかげさまで、母方の親戚一同、料理人関係が多い。お母様も、そこそこ鍛えられてるから、料理が上手いんだ。
そのぶん、皆お金持ちだからね。天音ちゃん家もお嬢様って呼ばれるくらい、お小遣いをたっぷりあげてる。
なんか、天音ちゃんは父方の親戚にはウケが悪いけど、母方の親戚には可愛がられてるからさ。
そんな、お嬢様な環境なのに、黒ギャルだから、父方の親戚には敬遠されるんだと天音ちゃんのお父さんは言ってる。親戚づきあいって、難しいね。
「わーっ、美味しいねっ! 毎日、こんな料理が食べれるなんて、俺幸せー!」
「バイキングだから、好きなだけ食えよーっ」
「――馬鹿、こういう時はビュッフェと言うんだ」
「へー、そうなんだ」
「なんだよー、お前偉そうにー」
「間違いを正しただけだ」
「ま、まぁまぁ、二人共落ち着きなよー。ね?」
チープな味だと思うよ? 前世も、少々裕福層よりで生まれたから、白桜家に生まれて一層食へのこだわりが増したね。
だからこそ、ここのデザートは絶対食べない。だって、僕の得意分野だもん……。全部食べきれるか、心配だよ。
僕、天音ちゃんがくれるなら、チープな味でも大丈夫。でも、天音ちゃん以外だと、どうも受け付けないんだ。仕方ないね、家族補正がついてるのさ。
「きちんと食えよ?」
「――うん、食べてるよ」
うーん、自分で作ったほうがいいかも。一応、僕も料理を習い始めてるから。グランマから、アイスケーキの基礎を学んでるし、この年でグランマからパティシエとして認めてもらったんだよ。やっぱり、デザートは自分で作りたいや……。
僕は、機材があるか確認しに行く。機材の品揃えは、まずまずだと思う。材料的に、プリンが作れそうだなぁ。
でも、今から作れば時間がないよ……。
「あら、白桜様」
「あー、如月さん」
この子は、幼稚舎からのお友達の如月舞妓ちゃん。僕のこと姫って狙いすぎ!! っていちゃもんつけてきた子ね。結構、僕に話しかけてくるんだ。良くも悪くも、思ったことをそのまま言っちゃうタイプなんだろうねぇ。
「――はぁ、満足できまして?」
「うーん、デザートはパスした」
「私、何も食べれませんの。後から家の者に言いつけて料理を持ってこさせますわ……」
「そうだねぇ、僕もお母様に電話しよう……」
悪いけど、師匠。僕には無理そうです。
「食の神様、白桜家に変なものを食べさせるなんて、恥を知りなさい……!!」
「しょうがないよ、一般層からこっちの世界に上がってきたばかりなんだもん」
「チープな味に慣れてらっしゃるのかしら?」
「経費削減じゃない?」
「あぁ、成程。いい英才教育が受けれると楽しみにしていましたのに……、あんまりですわっ!!」
如月さんは、日本舞踊用の扇子をバッと広げた。
これ、如月さんの得意技なんだよね。片手で一振りするだけで、扇が広げられるんだ。彼女が、日本舞踊の家元だからこそ、幼い頃から厳しい特訓を受けた成果だって、本人が言ってた。
そして、口元を隠す。これも本人が言ってたけど、機嫌が悪いと口元に出ちゃうんだって、如月さん。意外と、この子、キャラ作り歴に関しては先輩なんだ。
辺りを見渡せば、皆食べてないみたいだー。うーん、これはまずいぞー?
このままほっとけば、栄華ある聖羅学園の評価が一気に下る。
「あぁっ、寮生だけ、特別カリキュラムが受けれると聞いていましたのに!! キィー!!」
「如月さん、落ち着いて。――仕方ない。まだ、フランス料理の免許皆伝貰ってないけど、僕が作ろう」
確かに、今までの聖羅学園は、学力低下により評判は下がったよ。
でも、料理とかの内部は完璧だったから、それなりの評価はあった。
だからこそ、料理の評判を落とすとまずいんだ。
僕は、お母様に電話した。白桜のシェフを明日から、寮に配属できないかどうか。
すると、数分後学園内のシェフがやってきた。
どうやら、寮内のシェフと学園内のシェフは違う人たちだったらしい。
おかげさまで、その数時間後、聖羅学園の名に相応しい料理が並んだ。
飛鳥井双子と、悠斗様の困惑した表情がどうも気になったけど……、後から説明するしか無い。




