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 ホームルームや自己紹介が終了した。昨日のうちに、入寮が決定した僕は、蓮と共に寮へ赴く。

 そうそう、蓮から色々事情を聞けたんだ。最初から、凛様と蓮二人共僕の許嫁だったらしいね。

 でも、僕と会う日、凛様は見たいテレビがあった、とかでお父さんと一緒にテレビ鑑賞をしてたとか。後々紹介されたのは、単に水族館という餌につられたんだろう。

 まぁ、彼も僕には興味がなさそうだ。それでいいよ、立場的に、僕と君は敵同士さ。仲良く派閥を作ってやりあおうね?


「――悪かったな、無理に入寮させて」

「全くだね。君は、最初から素直になればいいものを」

「あぁ、そうだった。お前のご両親にも、後で理由を話さないと……」

「そうしてくれると、両親も喜ぶよ」


 そうそう、凛も最初からこの学校の寮に入る予定。

 しかも、凛様と悠斗様は別な階で、蓮だけ別な階らしい。蓮は、それが嫌で駄々をこねたとか。聞けば聞くほど、狼じゃなくて兎だと確信してくる。


「ほら、見ろ。桜が見える」

「あぁ、綺麗だねぇ」

「本当だな。桜って、お前によく似合うよ」


 おや、口説き文句? そういうのは、女の子にしてあげなよ。僕にやるなんて、ボーイズラブじゃないか。

 いや、一応女に属してるんだけど、僕は王子様候補だからね。口説く大将には入ってないよ?

 ほら、こんなに優雅でかっこよくキメる女なんて、お姫様より王子様のほうが、よく似合うだろう? そうだろ? だって、計算してるからね!


「ありがとう。でも、そういうのは好きな子に言うといいよ」

「――そうか? 一応、許嫁に言ったんだが」

「高校卒業までに、そんな関係が続くのかなぁ?」

「――続いてたら、結婚を申し込んでいいか?」

「そんなに続くんなら、自然とそうなるだろうねぇ」


 やぁやぁ、蓮。僕は、今から王子様になるんだ。その頃には、許嫁じゃなくて、君の親友にジョブチェンジしてるさ。


「そうか……。それまで待つよ、俺は」

「忘れてくれて、構わないさ」


 だって、高校入学の時に、君は恋をするんだ。桜舞い散る薔薇園の近くで、運命的な出会いを――。

 その女の子に一目惚れし、蓮、君は、その女の子にキスをする。

 それから、僕らの物語は始まるんだ。

 その時、君が勝つか、それとも僕が勝つか。凛や悠斗が勝つかもしれないね。

 僕らが紡ぎだす『君色ラバーズ』は、どんな物語だろう……?

 実に、開始の時が楽しみだね。


 * * *


 ゆっくり桜鑑賞をしていたら、夕飯の時間になった。蓮に催促され、僕はホールに向かうことになった。

 あぁ、そうそう。僕ね、髪型を変えてみたんだ。一つ結びにしてみたら、蓮からダサいだのおばさん臭いだの散々の評価を頂いたよ……。

 難しいなぁ、男装というのは……。


 それで、現在のノーメイクではなく、男装メイクなるものを発見し、試してみようと思う。

 でも、眉を全剃りしなきゃいけなくて、やるかどうかカミソリ片手に悩んでいるところさ……。

 だって、メイクを落としたら怖くなるからね、それがどうも……。


「何してるんだ?」

「メイクしようかなぁって」

「はぁ? 今のままで十分だぞ?」


 うぅっ……、全剃りしないと、夢見る王子様にはなれないんだよ。できれば、早めにイメチェンしたい。


「それに、全剃りすると剃り後が青くなるぞ?」

「そ、そうなんだね……」


 色々と情報を調べないとね。だって、見た目がよくないと王子様にはなれないから。

 そういうわけで、髪型は元に戻す。


「そうそう、そのままが一番だ」


 くっ、王子様への道は険しい。

 僕は、お母さんにメイク術を習おうとメールをした。

 本当は、こんな小さい頃からメイクをするのはよくないとわかっている。

 でも、どうしても、僕は王子様になりたいんだ。悠斗様や凛様、そして蓮よりかっこよくなりたい……!!

 僕は、女の子の注目の的になりたいんだ……!!


「詳しいねぇ、蓮」

「まぁな、俺も一時期やろうと思ったから」

「そうなんだって……、ちょっと早いんじゃないか?」

「おいおい、お互い様だろう……? 肌荒れは、スキンケアでどうにかなる。安い化粧品を買わなきゃ、大丈夫だとか。でも、周りの大人の評判が良くないらしい」


 うっ、確かに。僕は、髪を短く切るわけにもいかないし……。

 だって、お母様とお父様に会った時、なんて言い訳すればいいかわからないんだ。

 ただでさえ、お母様が僕の一人称だけで、ハーレークイーンの世界に入り込んじゃうのに。髪を切ったら、次はハーレークイーンの世界から戻ってこなくなる。そんなの、嫌だ。ずっと、あんな演劇のような台詞を聞かされる身にもなってほしい。


「はぁ、上手くいかないなぁ」

「ん、なにか悩み事か?」

「うーん、大丈夫」


 ライバルに、言えるわけがない。だって、君もかっこよくなりたいんだろう?

 僕と同じ悩みを抱えるのがライバルだなんて、相談できるわけもないさ……。


「ねーっ、ご飯食べに行こうよー?」


 悠斗様の声が僕の部屋の中に響いた。

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