ちょっとした秋蓮の頭角
藩秋蓮が十五歳になった初冬。遥か東から大船団がやってきた。伯父や父親から話を前々から聞かされていたし、七年前も似た光景を目の当たりにした。秋蓮がいる伊鈴町では戒厳令が敷かれ、不要不急の外出は制限されていた。異国の者達が塩を贈り自分達紅帝国の者達は蓄えていた米を返礼品として渡すのだ。
しかし秋蓮は水運業を営む父親である草仁と共に役人達と一緒に塩を受け取る作業を手伝った。女である秋蓮は腕力が無かったが、小舟を器用に漕げるし、異国の人々と筆談も出来るし、帳簿を作成したり確認したりも出来た。どの船からどれくらいの塩を貰って何処へ届けるのか。大船から降ろされた塩俵を草仁の子分達が小船に載せると、秋蓮は漕いで行く。ここ数日、何度も往復している。疲れは溜まっているが、責任有る仕事にやり甲斐を感じている。
下級官吏でいとこでもある啓軟の息子である順温は秋蓮と同じ歳で、秋蓮を監視しながら秋蓮を警護したり手伝ったりした。順温は今年の科挙で五段目まで合格し、父親を普段から手伝っている。秋蓮も二段目まで合格している。勉強をし始めるのが遅かった割には秋蓮は成長していると順温は感じた。今回の仕事もすぐに慣れてテキパキとこなしている。女だが持久力は順温よりも有るようだ。
秋蓮は動きやすくて地味な服装をしているが、礼儀は正しい。豪農豪商貴族相手でも物怖じしないが文字通り腰を低くしてしっかりとした口調で受け答えする。商人としての素質もある。むしろ順温の方が明らかに緊張したり不安な目で睨まれたりしている。順温は机上で書物を読みながら考え事をするのは得意だが、対面しながら身体を動かす仕事に苦手を感じている。順温の書く文字は美しく文体も簡潔で美的なのでそこは父親からも友人からも評価されるが、不器用な態度は何度も注意される。
秋蓮の父親の草仁と伯父の草士は秋蓮と順温を遠目で観察する。秋蓮は相変わらず勉強と機織りを頑張り、更に最近では小船を漕いだり帳簿を管理したりしている。草仁は期待せずに仕事を少しずつ任せていたが、予想以上に秋蓮はこなしている。草仁の子分達も草士の子どもや孫達も秋蓮を見直している。
しかし、やはり秋蓮は家事をやりたがらない。掃除も炊事も洗濯も使用人達に任せきりだ。草仁は秋蓮に注意しようとしたが、使用人達も子分達も間に入って草仁を宥める。機織りと水運業の手伝いと勉強で既に秋蓮は多忙だ。秋蓮は既に二段目を合格したので草仁は勉強を止めさせようとしたが、勉強を教えている草士は秋蓮に期待している。
草仁は秋蓮が嫁入りしたり婿を迎えたり出来るのだろうか不安になった。けれども草仁以外の者は妻の祥華を含めて秋蓮を認めている。




