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見合いの食事

 食事が運ばれてきた。皆、乾杯する。何英芝は藩秋蓮と賀夏鉄の息子である真銭がいないことに気付いて、

「真銭殿は調子が悪いのですか」

 と、尋ねた。秋蓮は、

「いいえ。今、息子に仕事を任せております」

 英芝はチラリと息子の藹鐘を見やる。藹鐘は料理を観察しながらゆっくりと食べている。絵を描きたくて仕方ないのだろう。真銭は妹の見合いよりも仕事、藹鐘も見合いよりも絵だ。真銭も金花と同じく英芝のいとこだ。金花は不安そうに藹鐘の様子をうかがっている。


 夏鉄は苦笑いして、

「商人は迂闊に休めないので申し訳ない。後で息子に挨拶させる」

「それは嬉しいです」

 英芝は返事をした。料理は精進料理と川魚料理だ。素朴だが美味い。塩や香辛料を絶妙に使い分けており、舌触りも食べごたえも丁度良い。下処理が十分なので香りも絶妙だ。高級ではないが滋養に良さそうなものばかりだ。


 英芝と藹鐘は酒を勧められる。藹鐘は英芝を見やる。英芝は、

「お気遣いなく。実はせがれは下戸なのです」

「そうだったのか。けど、貴方は酒豪だと聞いている」

 夏鉄が言った。英芝は夏鉄含めて藩一家に使用人達が酌をしようとしないことに気付いた。英芝は、

「叔父上達が禁酒なさっているならば私も酒を飲みませんよ」

 夏鉄は苦笑いしながら、

「我々も酒が苦手なだけなので、気にしないで欲しい」

「では一杯だけ」

 英芝は酌をしてもらう。酒はそれほど美味くなかったが、悪酔いしないたぐいだと分かる。


 夏鉄と秋蓮が英芝の家族について尋ねた。英芝は答える。母親の玉葉は老いているが元気でまだ頭は冴えている。妻は郷の長官として懸命に働いている。藹鐘以外の子ども達は勉学よりも芸術に興味を持っている。小説を書いたり楽器を演奏したり彫刻したり陶芸したりしている。それらを領民達に譲っている。領民達はその返礼として作物や薪や衣類を贈ったり建物の修繕をしたりする。


 先程から秋蓮と夏鉄が英芝と話している。時折、金花が質問を受けてそれに答えている。緊張しているようだが滑舌が良く、姿勢は良いままだ。家事や機織の家業について自信を持っているが芸術には詳しくない。科挙には三段まで合格している。仕事が出来て教養もそれなりにあるようだ。英芝は良い縁談だと思った。


 しかし藹鐘は料理の観察以外にも壁際や出入口に待機している使用人達を眺めたり、部屋の中の調度品を見つめたりして、会話に参加していない。英芝が時々睨んでも気付かない。英芝は金花が少し不憫になった。秋蓮は不安そうに、

「藹鐘様。つまらないのでしょうか」

「いいえ。これは絵が描きたくて仕方ないのです」

 英芝が代わりに答えた。秋蓮は商人だが帝国一番の豪商である上に夏鉄の唯一の妻だ。名門貴族であっても英芝は気を遣う。


 夏鉄は金花に振り向き、

「では、食後に藹鐘を案内して差し上げなさい」

「紙と筆記用具を用意させます」

 秋蓮が藹鐘に言った。藹鐘は目を丸くして興味を持った。英芝は気まずそうに、

「お気遣い、申し訳ありません」

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