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何父子

 石花県で藩一族と会う前に何英芝は息子の藹鐘を連れて遊郭に何箇所も入って酒を飲んだ。性行為を楽しむより楼主達から話を聴きながら芸妓の歌や踊りや演奏を楽しんでいる。芸妓に触れなくても彼女達の力量や覚悟は分かるし、酒を飲んでいるので楼主達は日頃の狡猾な演技から本音が漏れる。英芝はそれを楽しみ、藹鐘は芸妓達を観察しながら絵を描いている。楼主達が性行為を勧めても父子は興味を示さなかった。


 藹鐘は性的に淡白だし、英芝は目的の藩一族に興味を持っている。これから会う見合い相手である藩金花に対して藹鐘は特に思い入れはない。縁談を否定も肯定もしない。一方、英芝は金花の両親がどんな人物か確かめたかった。金花の母親である秋蓮は帝国一番の豪商、父親である夏鉄は皇帝の末弟。夏鉄は英芝の母方の叔父でもある。つまり金花と英芝はいとこだ。


 秋蓮の評判は良かった。楼主達は何とも言えない顔で語る。月経用の下着を扱ってきた秋蓮にとって特に楼主達は大事な顧客である。しかし媚びへつらうどころか役所に遊郭を何度も密告している。それに激怒して秋蓮との取引を止めた楼主は少なくなかったが、既に秋蓮は英雄に近い存在だ。女達からも他の商人達からも支持を得ている。賄賂に頼らず正確な帳簿を作成しているので役人達も認めている。


 秋蓮は女の味方で遊郭は女の仇敵。楼主達は帝国中の視線を感じざるを得ない。楼主達は秋蓮に報復してこれ以上の顰蹙ひんしゅくを買うより、秋蓮と細々と取引をした方が賢明だと判断している。今まで女を消耗品以下に扱ってきた事を改めた楼主すらいる。


 夏鉄もまた評判が良かった。四年前、秋蓮と共に実母のいる冷宮を新築して孝行をした。しかしその実母は今年に亡くなった。実母を溺愛していた夏鉄は現在寝込んでいる。心優しい皇子に人々は心を動かされている。更に夏鉄は秋蓮と仲睦まじく、全く浮気も不倫もしない。女には優しいが誘惑しない。女達も羨望の眼差しを向けるだけだ。遊郭にとっては客にならないつまらない男だが、夏鉄を勧誘したり茶化したりする者はいない。


 芸妓達の綺麗な演技を鑑賞しながら楼主達の話を聴いた後、英芝は作詩し柱にそれを書いた。藹鐘も描いた絵を渡す。楼主達は父子の作品に驚嘆し、代金を貰わなかった。父子は墨汁の匂いのする質素な服を着ているが、名門貴族である何一族だと皆、認めざるを得ない。立居振舞も上品だ。


 何藹鐘と藩金花が見合いをする。藩秋蓮は更に栄華を極めるのだろうと楼主達は軽い恐怖を覚えた。

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