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仕事熱心な両親

五歳になった秋蓮は母親である周祥華の手伝いをするようになった。機織り職人である祥華は時間をかけて糸を紡いだり経糸たていとを織り機に張ったり機織りしたり実演してみせた。まだ幼い秋蓮はぎこちなかったが、少しずつ技術を習得していく。


 綿や麻の繊維から糸を作り上げる。それが絡まない様に綺麗に丸める。時折、糸や繊維を様々な色に染めていく。経糸を一本一本織り機に張っていくのは秋蓮には難しかったが、祥華が懇切丁寧に教えてゆっくりとおさ綜絖そうこうの穴に通していく。準備をし終えたら織る。秋蓮は力が足りてなかったが祥華は試しに織らせる。秋蓮は楽しんでいる。


 出来上がった反物や糸や道具の整理をしたり掃除もする。秋蓮は嫌がらずに祥華の言う通りにする。使用人達は真面目な秋蓮を誉める。秋蓮は素直に喜んだ。


 父親である藩草仁は少し苦い顔をした。秋蓮は家業の手伝いには熱心だが、家事をやろうとしない。工房以外の掃除も炊事も洗濯も嫌がり、完全に使用人任せだ。まだ幼いとはいえ、興味を示そうともしない。


 しかし草仁が煩く指摘すると秋蓮は逃げて祥華や使用人に隠れるので、草仁は苦い顔して黙っている。時折、使用人達や妻の祥華には秋蓮に家事を習わせるように命じる。


 秋蓮にとっては数日に一度しか家に戻らず、家事を女達に任せる草仁を幼心に不条理に思えた。更にたまに一緒に食事する時には草仁は箸の持ち方や姿勢を低い声で何度も注意する。怒鳴ったりも暴力を振るったりもしないが、秋蓮にとっては威圧的な父親だ。特に父親はゆっくり噛むように命じる。更なる叱責が嫌なので秋蓮はそれに従う。


 祥華も使用人達も秋蓮には草仁が水運で過酷な商売をしている事を何度も説明している。船で河川を往来し遠くまで客が頼んだ荷物を運んで相手に渡す。そこから収入を得て家族や使用人達を養っている。


 秋蓮は草仁を敬遠しながらも、皆が草仁を尊敬している事を何となく感じた。浮気や不倫の概念についてはまだ分からなかったが、父親の草仁が女遊びをしない仕事人間である事はそれとなく幼い秋蓮に伝わっていた。


 祥華と草仁は互いに多忙で十日に一度、じっくり一緒にいられれば良い方だったが信頼関係があった。夫婦仲は悪くない。会えば素直に互いの近況を報告し合う。


 草仁と一緒に仕事をする子分達も、祥華と一緒に仕事をする使用人達も、結束力があった。普段は草仁が男達を率いて、祥華が女達を率いる。役割分担はあったが、互いに尊重し合っている。祥華達の反物はよく売れた。

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