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豪商の仲間と家族

 藩秋蓮は時折石花県から出ては許可が下りた他県に行って取引をしている。月経用の下着の販売・流通が可能な所は三十県だが、各自で最初から制作したり販売したりしているわけではない。既に二十年も下着を扱ってきた石花県の人達から技術を教わり、試行錯誤をしている。特に秋蓮と仲間達は単に作って売るだけではなく、古くなった下着を回収しては焼却処分してその灰を原料になる作物の畑に撒いている。


 秋蓮と仲間達は石花県の他の団体と話し合っていた。自分達の技術を他県に敢えて気前良く教える代わりにその対価をもらう。どんな技術をどれだけ教えていくらもらうか。団体によって制作方法や商品の質や取引の仕方や流通網が違っていたが、最低限の技術をまとめた。それは消費者や他県の新手の商人にとっても信頼の保証にもなる。


 最初に始めた秋蓮とその仲間達の規模や流通網は最大な上に商品の質も最良で価格もその割に安めだ。更に使用後もしっかりと責任を持つ。石花県の商人達も他県も認めざるを得ない。


 秋蓮とその仲間達は女性が多い。材料になる作物を育てるのも、糸を紡いで織って製作するのも、女達を集めて宣伝するのも、売るのも、決済や帳簿管理に責任を持つのも女性ばかりだ。力仕事や河川で船を漕ぐのは男性が多いが、彼等はそんな女性達に敬意を払っている。


 秋蓮の団体は他県に懇切丁寧に教えてそれなりの対価を貰っているので、元々儲かっているのに更に稼いでいる。また、秋蓮は先帝の第六皇子を夫に迎えて仲睦まじく暮らしているので免税を受けている。人々は妬みよりも憧れを抱いている。


 秋蓮は今年で三十八歳になる。十四歳になった息子の真銭は秋蓮を必死で手伝っている。天気の良い時に二日に一度ほどの頻度で秋蓮の指示を受けるままに行動する。時折、秋蓮と一緒に他県に同行もする。休日は父親の夏鉄から勉強を教わったり茶を飲んで談笑したりする。真銭は秋蓮からも夏鉄からも女達に敬意を払って無茶をさせないようにと釘を刺されている。しかし真銭は秋蓮はそこら辺の男よりもたくましいと感じているし、他の女達の体力や勤勉さに舌を巻く思いだ。


 秋蓮と夏鉄の娘である金花は十歳。金花も使用人達から誉められながら家事を教わり、掃除・炊事・洗濯・子守をしている。けれども金花は機織が楽しいと感じている。糸を紡いで絡まない様にまとめて経糸たていとを一本ずつ織り機に張って織る。苦労するがこの一連の作業が面白い。金花は二日に一度は休んで夏鉄から勉強を教わったり川辺で魚釣りをしたりしている。使用人達は豪商の娘である金花には家事や家業に励むよりも勉学に力を入れるべきではないかと考えたが、主人である秋蓮と夏鉄の教育方針に逆らうつもりもなかった。


 秋蓮とその仲間達も家族も忙しかったが、滋養の有る食物を食べているせいか運が良いのか健康に恵まれていた。


 夏鉄は今でも秋蓮と同じ寝床で寝て秋蓮を抱いているが、性行為を避けていた。性欲が無いわけではなかったが、中途半端に妊娠して多忙な秋蓮の行動を制限したくはなかったし、高齢出産は危険だ。秋蓮は夏鉄の遠慮に気付いて、

「夏鉄様。老けた私で良ければ御遠慮なさらないで下さい」

「こんなに働いてて老けているわけがないだろう。子どもを産むのは命懸けだが」

 夏鉄が言い返す。秋蓮は、

「我慢し過ぎる前に妾を迎えるのはどうでしょう」

「そんな事を言うな」

 夏鉄は低い声で叱責した。目が泳ぐ秋蓮を夏鉄はしっかり抱いて、

「こうしているのが俺の幸せだ」

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