姉弟の再会
父帝の葬儀はしめやかに行われた。民草の負担を考慮して生前、父帝は墓の大きさも葬儀の規模や方法も控えめにするように命じていた。三年は喪に服さなければならないが、長い遺書を残しており、政治闘争の火種を潰し、経済を冷え込ませない配慮をしていた。
皇太子である長兄の旬鉄は疲れ気味であったが、長男の俊学と正妻の胡雪菊に支えられながら毅然と指揮をして立派に喪主を務めた。
皆、声を出しながら泣いた。父帝は四十年以上の治世で外交も内政も絶妙にこなしていた。為政者として純粋に尊敬する者達や嘆き悲しむ者達が多かった。それでも張り合うように大袈裟に泣き喚く煩い宦官や官吏も少なからずいた。完全な嘘泣きではないので誰も咎めなかった。
地方から来た官吏達や臣籍降下した元皇族達は宮廷や墓前に献上品や供物を差し出す。短期間で用意したにも関わらず、どれも一級品だ。
公主だった賀月竹は夫の陳慶伯と共に葬儀に参加し供物や献上品を慇懃に差し出した。慶伯は父親の跡を継ぐ様に安昌県の長官を務めている。親の七光りや月竹の威光だけではなく、十二段有る科挙を十段目まで合格して職務に励んでいる。
葬儀と献上の後、既に高齢で皇帝を失った皇后を見舞った。皇后は顔色が悪いが気丈に振る舞っている。
帰る前に月竹は慶伯を連れて実母である宋加蘭の所に向かった。後宮の手前に位置している大広間で再会した。約二十年ぶりである。同時に同父母弟である夏鉄とも再会した。夏鉄とは子どもの時に後宮で張り合っていたので加蘭を目の前にしても月竹は涙を流さなかった。慶伯は夏鉄と加蘭に恭しく拱手して深々と頭を下げる。夏鉄の隣には地味な女が両膝を床について拱手しながら頭を下げている。その頭を見たら加蘭が昔、ハレの時に付けていた簪を差している。月竹は女を見つめたまま、息を飲んだ。加蘭はそれに気付いて、明るい声で
「こちらは夏鉄と結婚した藩秋蓮。私が渡した簪を秋蓮に譲ったのね」
慶伯は頭を上げて秋蓮を見やる。月竹は周りを見渡す。父帝の側室達は地方から帰省してきた子ども達と嬉しそうに再会しているが、自分達から離れている。秋蓮は月経用の下着を扱う商人である上に帝国全土の百県にその許可か禁止を選択させた張本人だ。
月竹は秋蓮と夏鉄を険しい顔で交互に見比べた。加蘭は穏やかな声で、
「月竹、落ち着いて座りなさい。秋蓮、顔を上げて立ち上がりなさい」
と、命じた。月竹も秋蓮も言う通りにした。月竹は夏鉄を睨みながら、
「母上。大事な簪ですよ。夏鉄を叱らないのですか」
加蘭は苦笑いして、
「陛下から許しを得ていたし、私がそうするように命じたから怒らないで、月竹」
慶伯は不安そうに皆を見比べる。秋蓮は気まずそうに俯き、月竹は不服そうな表情で加蘭を見返し、加蘭は夏鉄に微笑んでいる。夏鉄は無表情で慶伯を見つめている。慶伯には夏鉄の感情が読み取れなかった。




