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崩御

 藩秋蓮と賀夏鉄が三十三歳の年の冬に訃報と意外な報せが同時に入って来た。皇帝が崩御した。皇帝は生前に月経用の下着の販売・流通の許可や禁止を紅帝国内百県が各自で判断するように勅令を出していた。帝国全土で喪が開ける三年以内に決断することになった。これによって騒動や政治闘争が起きた所には増税を課す。


 それを知り、何度も確認した夏鉄は首都が位置する西側に跪いた。妻の秋蓮も九歳になった息子の真銭も五歳になった娘の金花もそれに倣った。足腰が弱くなった秋蓮の両親も両手を合わせて頭を深々と下げ、両膝をついた。


 秋蓮が始めた商売が帝国全土に認められつつある。夏鉄は二度も皇太子である長兄の旬鉄に手紙を送ったとはいえ、父帝が罰せずに受け入れるとは思わなかった。


 皆が立ち上がると真銭は躊躇いがちな態度で、

「父上。宮殿に行かれるのですか」

 と、尋ねた。夏鉄は咄嗟に答えられなかった。葬儀に参加して父帝に礼を述べるのが孝行だが、夏鉄は第六皇子として元から影が薄かった。二人の子どもに恵まれ、秋蓮との結婚に満足しているが、宮廷や参列者達から賤しい商人の婿と蔑まされるだろう。


 秋蓮の父親である草仁は秋蓮に、

「身支度を整えて無礼のない様に殿下をお連れするんだ」

 母親である祥華も、

「恥じない商品を宮廷にお送りしなさい」

 夏鉄の家来達も、

「我々が間違いの無い様に支度と案内をします」

 秋蓮はやや強張った表情で、

「分かったよ。皆」

 金花は違和感を覚えたが何も言わなかった。皇帝は帝国の中で最も偉い人で、時々殿下と呼ばれている父親は高貴な人間だと何となく幼心に分かってはいた。どうやら両親は遠い所に行くらしい。金花は、

「私と兄さんは留守番ですか、父上、母さん」

「そうね。間違いを絶対に起こしてはならないから寂しいけれど我慢して」

 秋蓮が答えた。金花は不安と緊張を感じて腹に重みを感じた。


 金花と真銭は部屋の隅で静かに遊んだり勉強したりして大人しくしていた。時折、祖父母の草仁と祥華が見守る。使用人達が家事をする。秋蓮と夏鉄は家来達や水運業の子分達と共に急いで準備していく。宮廷や皇帝の墓前に献上する品をしっかり吟味したかったが、遅れてはならないので早めに出発した。


 金花と真銭、草仁と祥華が夏鉄と秋蓮を乗せた船を見送る。予定通りならば一ヶ月以内に戻って来るはずだ。四人は使用人達の世話を受けながら夏鉄と秋蓮の帰りを待つ。


 草仁は不思議な気持ちになった。崩御した皇帝と草仁は同じ歳だ。七十を過ぎている。引退した商人と皇帝とでは身分があまりにも違うが、僅かに親近感を持つ。皇帝は婿の父親でもある。まだ幼い孫達が気がかりだが、草仁は死ぬ覚悟が出来た。

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