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商品の妥当性

 夏鉄は石花県の長官の執務室に来る前、東江の長官を務めている異母兄の所で一泊しながら話を聴いていた。異母兄は仙鉄。夏鉄よりも十八歳年上で何年も前から先代を務めた叔父から仕事を引き継いでいた。夏鉄が生まれる直前に仙鉄は結婚して叔父を補佐していたので、夏鉄はこれまでに里帰りした仙鉄とは数えるほどしか会っていない。


 仙鉄は殴りも蹴りもしないが少し短気でよく怒鳴る。夏鉄には月の障りの商品を売る商人を罵倒し机を叩きながら説明していた。女達からの支持があるので商人達への処罰を待つようにと父帝や皇后から命じられているので、仙鉄はその通りにしている。


 夏鉄が長兄の旬鉄とその実母である皇后の近況を報告をすると、仙鉄は安堵した。落ち着くと使用人に命じて茶と商人や県の資料を見せた。


 夏鉄はそれを読んで確かめると報告者が感情的に記述しており、客観性が弱かった。婦道から逸脱している事に嫌悪する男達の愚痴と不満が滲み出ている。夏鉄は仙鉄に再度、女達からの聴き取り調査や証言は無いか尋ねた。仙鉄は苦い顔をしたが仙鉄の正妻と妾達がそれを見せた。決済記録も含まれている。女達からの評判は良く、公正な商売をしているのが伝わる。


 今、夏鉄の目の前にいる者達は青白い顔をして俯いている。県の長官も苦悶の表情を浮かべている。執務室を隅々まで見渡すと、約五十人中、五人ほど女がいる。夏鉄は彼女達に商人と商品、女達の評価について発言させた。男達は眉を寄せたが、夏鉄は途中で口出ししないように命じる。


 女達は躊躇いがちに語っていく。行動範囲拡大による生産性の向上、衛生面向上による健康への好影響、流通経済を通じての女同士の親睦。男社会の脅威になるどころか男達にとっても利益にもなる。女達は特別、男達に反発もしなければ何も要求をしていない。


 特に麻梨郷の長官まで登り詰めた女の証言は理路整然としており、夏鉄は叱責する気が起きなかった。女達は怯えているが、月経用の下着の重要性を指摘している。傍らで聴いていた男達は黙ってはいたが、険しい顔で女達を睨んでいる。夏鉄は男達に何を言わせても感情的で居丈高だと悟った。


 県の長官は頭を下げたまま、

「殿下はどう決断なされますか」

 夏鉄は宙を睨んだ。兄の仙鉄は処罰を望んでいるが、父帝と皇后は叱責だけを求めている。夏鉄自身は叱責すらも躊躇っている。女達の怯えて疲れた様子や男達の嫌悪感を露わにしている様子を見ると、既に男達は女達を責めているようだ。夏鉄は、

「こちらへその商人を呼んで来てくれないか」

 と、命じた。県の長官は血相を変えて頭を上げ、

「あんなけがらわしい商人とお会いになれば心も身体も障りますぞ、殿下!」

じかに会って確かめてみなければならない」

 夏鉄は落ち着いた声で言い返した。長官と他の男達は互いに顔を見合わせる。夏鉄と共に来た宦官と官吏も不安そうな顔をする。しかし、夏鉄は真顔で待っている。長官は官吏の一人に目配せして言われた通りにさせた。

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