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風紀を守る叱責

 藩草仁と妻の周祥華は真っ青な顔をしていた。石花県の中心都市である台光城まで呼ばれ、県の長官から直接、叱責を受けていた。長官もその側近達も直接的な暴力を振るわなかったが、長官は何度も机を叩き、側近達は怒鳴った。草仁と祥華は長官の執務室の机の前で震えながら土下座している。


 しかし怒鳴り声で眉を引きつらせながらも二人の後ろで土下座している娘の秋蓮は何処か涼し気だ。長官はそれに気付いて、

「元はと言えば、お前が一番悪いのだぞ!親不孝者!」

 秋蓮は悲しい顔で前にいる両親の後ろ姿を見つめた。女性の月経用の下着が想像以上に売れて儲かったが、風紀を乱すということで今、長官達から責められている。地元の柳洗郷の長官は閉経前に登り詰めた実力者であり、秋蓮の商品に理解を示して購入していた。しかし、その長官も両親と県の長官の間に立たされて項垂うなだれている。


 県の長官は柳洗郷の長官と藩一家を指差しながら、

「東江の長官であらせられる仙鉄殿下もお怒りだ!私は一度、平手打ちを受けたのだぞ!お前達のせいでな!」

 紅帝国は四つの大河川である四つの江で分割されており、その行政区は代々皇族が任されていた。実質的な地方統治はその下部組織の県単位から下の単位だが、四つの江は権威ある職務だ。


 郷の長官は身体を震わせている。それにかまわず、県の長官は机を再度叩き、

「こちら石花県は皇后陛下の故郷でもあるのだぞ!」

 草仁は土下座している状態から更に床に頭を叩きつけた。県の長官が更に怒鳴ろうとすると、他の役人が入って来て、

「夏鉄殿下がもうじき来られます!」

 執務室にいる者は全員、息を飲んだ。前々から第六皇子が商品の件で視察に来る事は知らされていた。しかし、緊張することに違いはない。県の長官は藩一家三人に手を振り、

「お前達は裏の牢屋で待機してろ」

 と、役人に案内させた。ずっと土下座していた三人は足がしびれてフラフラになりながらも立ち上がり、言う通りにした。柳洗郷の長官は執務室の隅に立たされ、待機した。


 県の長官は苦い顔をして席を立つと壁際に座る。皇室から直接、皇子が叱責するのだ。腹が痛い。


 官吏達が皇子を案内しているのか足音が響く。皆、緊張しているので余計な私語は無い。入口に気配がしたので長官達は一斉に拱手して頭を深々と下げた。第六皇子・夏鉄が供の者達と一緒に入る。その供の者達の一人である壮年期の宦官が夏鉄に長官が先程座っていた席に誘導して座らせる。夏鉄は一瞬、躊躇ったが、着席した。長官達は青白い顔を下に向けたまま、夏鉄に向かい合った。


 同じ頃、県の牢屋に入れられた藩一家は呆然としていた。特に草仁は嗚咽しながら涙を流している。祥華は俯きながら溜息を吐いている。秋蓮は両親に申し訳ないと思いつつも、納得がいかず、両手に握拳を作って座っている。


 月経は糞尿と同じ生理現象だし、それがないと子どもは産めない。殊更、月経を忌み嫌い、女達を排除する社会に違和を覚える。また、月経用の下着で女達の行動が広がり仕事も家事もできて生産性も上がった。健康的になった女達も少なくない。今まで女達を抑圧していた風紀とは何だったのだろう。秋蓮は怒りを覚えた。

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