<第一章 Slothの種> 第2章 不穏な学園生活 3話
120名中2名。1/60。珍しいです。
「まずはみんなの魔法が見たいんだけど…今年の生徒に適性の複数持ちは…」
トリーナは生徒の情報が載っているであろう用紙を見ながら小さく頷いた。
「二人もいるのか!ではその二人を除いた生徒は六つに分ける。それぞれの適性で分けるから安心して欲しいな。複数持ちから先に魔法を見せてもらう!やってもらうことは簡単だよ。訓練場に立っている案山子に向かって全力の魔法を放ってもらうだけだからね!まずはオルド・ルイーズ!」
「はい!」
呼ばれたルイーズは鋭い目つきで前に出る。オルドは一四歳の女子とは思えない雰囲気を醸し出していた。
「ルイーズ君は火と風に適性があるみたいだね、まずは火魔法から!」
「わかりました!ッふー。我求めん・変わらぬ祈りと・小さき霊に・熱の喝采を<ジュニラ・イグニス>!」
ルイーズが放ったのは下級魔法だった。彼女の伸ばした手から赤子一人分の大きさを持つ火の弾が放たれた。その弾は勢い良く案山子に向かい、見事に命中する。
ウーゴは感嘆の声をあげようとした時、エドワードが彼女を鋭い目で見ていることに気づきやめる。
「エド?どうしたんだ険しい顔をして?」
「上には上がいる、分かってたんだけどよ。やっぱ悔しいよなぁ…」
ウーゴは気休めでもいいから慰めの声をかけるべきかどうか悩んでいる最中に、次の魔法が放たれる。
「素晴らしいね!それじゃあ次、風魔法お願いね!」
「はい!我求めん・小さき祈りに・空の喝采を<ウラ・ヴェント>!」
最下級風魔法が案山子の頭を直撃し、ルイーズは安堵の息を吐いた。二つの魔法を見たトリーナは楽しそうに生徒を褒める。
「素晴らしい!本当に素晴らしいよ!その年で下級火魔法を扱えているうえに風魔法の精度が高い!ルイーズ君は努力家なんだね!」
「ありがとうございます!」
「うんうん、元気もあってなお素晴らしいよ!っと熱が入りすぎたね。では次ラーネア・ブリジット君!君は地と光だね、まずは地魔法から!」
「はい。」
二人目の生徒は穏やかな空気感を出しながら案山子の前に立つ。ルイーズとは正反対で年頃の女子らしさを持っているブリジットが魔法の詠唱を始めた。
「いきます。我求めん・小さき祈りに・大地の喝采を<ウラ・テーラ>」
ブリジットのかざした右手の平に訓練場の砂が集まりだす。そして拳ほどの大きさになり土の弾が出来上がる。ブリジットは手を案山子に向け、最下級地魔法を放った。トリーナは魔法が無事発動したことを褒め、次を促す。
「ブリジット君の<ウラ・テーラ>も精度が高いね!それじゃ最後!」
「分かりました。いきます。我求めん・小さき祈りに・天の喝采を<ウラ・ルークス>」
今度は小さな光が集まりだし、小石ほどの大きさになると案山子の頭に向かって熱線を放った。その後、徐々に光の弾は小さくなり、それと比例するように熱線が小さくなり消滅する。
トリーナはブリジットにも誉め言葉を投げかける。そうして二人の魔法を見終わったので、残りの生徒に声をかけた。
「ブリジット君の<ウラ・ルークス>は密度が高くていいね!これで複数持ちの魔法は全て見たから残りの生徒達、各々の魔法を見せてもらうよ!これから訓練場に六つの案山子を用意する。それぞれの属性に対応しているから自分の属性に合った案山子に集まること!それじゃ少しだけ待っていてね!」
トリーナは急いで訓練場の倉庫に向かっていき、見えなくなってから生徒達の歓声が上がった。
ーすげぇ!
ー下級魔法ってあんなに凄いの!?
ーあの二人なんでCクラスに居るんだよ!?
「トリーナ先生、凄く興奮してたなぁ。魔法好きにも程があるとエドも思わないか?」
「……っ。あぁそうだな!だが気持ちは分かる気がするぞ!」
「エド?」
「好きなものを目の前にして興奮しないやつがいるか?いーやいないね!しかも!この学園の先生になれる程の魔法使いならなおさらだろ!それにしてもブリジット嬢の佇まいは気品があって美しいな!ウーゴもそう思うだろ?」
軽口を叩こうとしたウーゴだったが、様子のおかしいエドワードを心配する。ルイーズに関して話したくないのか、早口でブリジットを褒めるエドワードに対してどう対応すべきかウーゴは頭を捻らせる。
「…あぁそうだなぁ。高嶺の花っていうのは彼女のことを指すんだろうなぁ。」
結果、ウーゴはブリジットを褒める彼に賛成の言葉を吐くだけだった。少しの間二人が沈黙しているとトリーナが戻ってきた。
案山子を設置し終わったトリーナは、生徒達へ向けて楽しそうに話しかける。
「さて!準備が出来たよ!左から順に火、水、地、風、光、闇に対応した案山子だよ!各自の魔法に合った案山子に集まるように!」
「俺は水魔法だから二番目のだな。エドはなんだ?」
「火だから一番目だ!この実技が終わったら三人一組になるだろ?一緒にどうだ!?」
「構わないさ。残りはゆっくり探そう。」
二人は会話を済ませ、持ち場へ向かった。そうして六つの集団が出来上がり、二刻半にわたって魔法の実技が行われた。
羨ましい、どうすれば近づけるのか。




