2-2 解放軍の少年少女
鬱蒼とした山林の奥地で、
ガリア軍に追われていたマヤは、
ひとりの少女と出逢った。
背丈は、マヤと同じくらい。
栗茶の髪をさらりと流し、
詰襟をぴっちりと着こなす。
名は、ハナ。
『ダンベリア島解放軍』の所属と称した。
頬を桃花に上気させ、
マヤの両手を握り、
ぴょんぴょんと跳びはねる。
「すごい! 本物の王女殿下だ!
王家の方なんて、初めて!」
握られた両手が、ぶんぶんと上下に。
一見すると、害意のようなものは感じ取れないが、
『解放軍』というのが、マヤには引っかかった。
一昨日、彼女を攫ったオーシャニア海軍の連中も、
駆逐艦内で、同じ名称を用いていたような。
「待て、『解放軍』のハナとやら。
われを探していたようだが、一体全体、何の用だ。
まさか、また、
われを拐かそうという連中ではあるまいな」
強めた語勢で問うと、
ハナは、両手を止める。
視線を右斜め上にちらり。何かを一考する。
「そうだよね。驚かせちゃったかな。
ごめんなさい。つい、はしゃいじゃって」
両手を離され、一歩退かれる。
「……」
見えない糸に引かれるようで、
距離を測りかねるマヤに、
ハナは、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「わたしたち、王女殿下を助けにきたの。
昨日のハーバーマスの騒乱を聞きつけて、ね。
だから、攫うとか、拐かすとか、
そんなつもりはまったくないから安心して。
一緒に、この山林を脱け出さない?
わたしたちが王女殿下を守るから」
ちらりと瞳を覗かせたハナが、一歩戻るが、
マヤにはどうにも信用できない。
「王女を助けに」「王女を守る」
それらの言葉が、
マヤには真逆の意味で響くのだ。
「そう言って、また、『海軍極秘緊急なんとか』で、
われをどこかの島へ連れていくつもりか。
なれも、
エヴァンスやコルウィンの仲間ではないのか」
毅然とした態度で詰めると、
ハナは、また、視線を右斜め上にちらり。
「ええと、海軍極秘、緊急なんとか、
エヴァンス、コルウィン、
……、
ううん、よくわからないけれど、
もしかして、他の島の解放軍のことかな?」
「他の島?」
ハナは、うんうんと頷く。
「わたしたち、他の島の解放軍とは、
ちゃんと連携が取れていないの。
ずっと、
この島の占領軍と戦いつづけていたから。
……、
だから、その、信用してほしい、
なんてことは言えないけれど、
わたし、王女殿下と仲良くしたいな、って」
上目遣いが、猜疑心に訴えかける。
駆逐艦の連中とは無関係ということだろうか。
しかし、何だろうか、このつかみどころのなさは。
……その時だった、ガリア軍の兵士が叫んだのは。
「王女か!」
「あそこにいたぞ!」
「逃がすな!」
茂みの向こうから、
散弾銃を構えたのは、
三人の占領軍の兵士ども。
咄嗟に、
マヤは、腕輪の〈灼天の紅玉〉を構えるが、
ハナが、庇うように躍り出て、右目をぱちり。
「ここは、任せて」
「何?」
彼女の右手が握り締めたのは、
〈卵化石の欠片〉の首飾り。
『濡レタ岩窟ノ深層部、這ヒ蠢クハ艶美ノ躯幹』
「おいで、〈妖蛇トゥルナイ〉!」
詠唱とともに、光がはじけた。
瞬発したのは、薄紅の鱗に覆われた大蛇。
艶めかしい長尾をくねらせ、
濃紫の毒牙を剥き、
兵士ども目掛けて、突進した。
〈妖蛇トゥルナイ〉、蠢動!
「〈霊獣〉だ! 撃て!」
バババンッ!
三人の兵士どもが発砲するが、
薄紅の鱗が、悉くはじきかえす。
大蛇は、俊敏にも、
端の一人の腹を頭突きで潰し、
長尾を器用に操って、
隣の一人の首を先端で刎ねた。
最後の一人は、
鋭い瞳孔に怯ませたところを、
濃紫の毒牙で噛み裂き、
軍服から肉体まで溶かしてしまった。
赤黒い凝膠体と化した屍を睨み下ろすと、
〈妖蛇トゥルナイ〉は、
光の粒子となり、
ハナの〈卵化石の欠片〉の元へと、還った。
「なれの〈霊獣〉か」
驚くマヤに、
ハナは深呼吸をし、笑顔をつくってみせる。
「すごいでしょう?
少年練兵場からの大切な相棒なの。
でも、詳しい話は、後。
今は、ここから離れないと」
ハナの瞳が、マヤを促す。
ひとまず、ここは頼ってみるか。
留まっていても窮状は揺るがないのだから。
それに、信用すべき相手かはさておき、
自分のために戦ってくれたという事実だけは、
マヤの瞳には、たしかだった。
「しかし、どこからこの山林を脱け出す」
「大丈夫、秘密の抜け道を知っているから。
どうか、わたしについてきて、王女殿下。
わたしの双子の兄が、
そこで待ってくれているはずだから」
◆2
ガリア軍の『山狩り作戦』は、
殺気立つ一方だった。
「追え! 追え!」
「絶対に逃がすな!」
「撃ち殺せ!」
王女らしき子どもの影を捉えた、
五人の海兵どもが、
木々の狭間を、奥へ、奥へと突き進む。
すでに、彼らは、
臨時指揮所に無線信号を送り、
『神林の巫女』を主力とした、
応援の要請を済ませていた。
「巫女さまは、先ほど、
ディムナットの山林に到着されたそうだ!
このまま、追い込むぞ!
たとえ、王女に、
〈カムランの灼天竜〉を召喚されても、
こちらには、
〈伯焔龍フォルティナ〉がついているからな!」
「はっ!」
兵長の激励に、
四人の部下が奮い立ち、
手にした散弾銃に力が籠る。
やがて、茂みが開け、
彼らの前に現れたのは、
苔むした岩場と、四体の海兵の屍だった。
「待て!」「はっ!」
兵長が、先んじて、屍の一体に駆け寄った。
見て取れた死因は、
額から頭蓋を貫かれたことによる脳損傷。
しかも、銃創でなく刺創。正確無比の一刺突。
素人にできる業ではない。まさか、
「王女ではない、何者かが潜んでいるぞ!」
だが、遅かった。
前触れは一切なく、
大木の枝から降り立ったのは、
十字剣を左手に構えた少年。
刹那、兵長の額が刺し貫かれた。
「兵長!」
反射的に、残る四人が散弾銃を構えるも、
すでに、
少年は身を翻し、端の一人の懐へ。
切っ先が、腋から心臓を穿った。
少年の動きは、
素早く、無駄がない。
剣身を引き抜く勢いで、
隣の一人の散弾銃をはじきとばし、
間合いを詰め、
また、額を一突き。
残る二人が発砲するが、
刺した屍を盾にし、
そのまま、急接近。
二人を尻込みさせると、
屍を押しつけ、片方の散弾銃を塞ぎ、
その背後へ回り込んだ。
一閃。
刃が、海兵の首筋を薙いだ。
血飛沫を散らし、大木の幹を真っ赤に濡らした。
さらに、軽やかな足捌きで、
もう一閃。
最後の一人の散弾銃もはじきとばし、
岩へ蹴り倒したところを、
切っ先を喉元に突き立て、仕留めた。
五人を皆殺しにしてしまった少年は、
おもむろに立ち上がり、
十字剣の血を振り払った。
名は、カイ。
齢は十二。
擦り切れた外套を靡かせ、
左腰の鞘に剣身を納めた。
「カイ、お待たせ!」
呼び声に振り向くと、
茂みの向こうから、
栗茶の髪の妹が走ってきた。
そして、もうひとり。
妹の後ろにつく、
黒髪の少女とも目が合った。
「王女殿下、本物か?」
瞠目したカイに、ハナがぎゅっと抱きついた。
「すごいでしょう?
王女殿下、本当にいたの!
はやく洞に逃げ込みましょう!」
興奮するハナを、
カイは、あやすように撫でてやると、
一旦離し、マヤの手前に歩み出た。
彼の目に映るマヤの容姿は、
薄汚いながらも、
その佇まいに、可憐な気品を醸していた。
体をまじまじと見つめられて、
マヤは、よじり腕を抱えた。
「なれが、ハナの兄か」
はっと気づいたカイは、襟を正し跪いた。
「お初にお目に掛かります。
『ダンベリア島解放軍』のカイと申します。
ご無事で何よりでございます、王女殿下」
改まった挨拶にマヤが当惑すると、
横から、ハナが、いたずらっぽく微笑みかけた。
「カイ、真面目なの。仲良くしてあげてね」
咳払いで、妹の横槍を引っ込めたカイは、
周囲の屍を見やりながら、話を続けた。
「王女殿下、ここは危険です。
じきに、敵の増援が駆けつけます。
一刻も早く、ご脱出を。
こちらに、山林の外へ通じる鍾乳洞の入口が」
カイが指差した岩陰には、
子どもが一人入れるかどうかの、
小さな裂け目があった。
奥は暗く、わずかな空気の流出入が、
外界と地底空間とを繋いでいた。
急かすように、カイは、先んじて、
裂け目にくねくねと潜った。
「さあ、王女殿下も」
後ろからハナに促されて、マヤも、
裂け目に踏み入ろうとするが、
不意に、背後の山林に振り向かされた。
柔らかな葉擦れだけが、深緑に響いていた。
「……いないか」
「王女殿下、敵兵でも?」
「……いいや、何でもない。行こう」
◆3
それから、三分後。
苔むした岩場の上空に、
巨獣の羽搏きが鳴り響き、
一帯に、大風が逆巻いた。
大木の幹がしなり、
枝葉が折られ、
草花が吹かれた。
白き翼に、紫色の眼光。
深緑の鳴動とともに舞い降りたのは、
神聖なる〈力〉の化身、
〈伯焔龍フォルティナ〉だった。
ひとり、龍に騎乗していたのは、
〈古の白石〉を首に飾るシルヴァ。
彼女は、龍の背から、
周囲をざっと見渡し、
岩場のあちらこちらに、
海兵たちの屍を見とめる。
彼らだろう、臨時指揮所に応援を要請したのは。
血塗られた苔に足を下ろし、
屍の一体に歩み寄ると、
額を刺し貫かれていることから、
死因が、
王女でない何者かによる攻撃だと推察した。
護衛を置き去りにし急行した彼女は、
〈伯焔龍フォルティナ〉を背に侍らせながら、
慎重に、岩場の捜索を続けてみる。
苔を削った足跡を見るに、
敵らしき者どもは、三人前後。
それらの行方を辿ると、
岩陰の小さな裂け目に集束していた。
「ここに、逃げた?」
奥は暗く、様子は窺えない。
シルヴァは悩んだ。
敵の罠を警戒し、単身突入は避けるべきか。
それとも……。
——ディムナットの山林 地下鍾乳洞
「本当に、山林の外へ通じているのか?」
陽が届かなくなった行路に、
マヤは、不安を吐露した。
先導するカイの懐中電灯が、
乳白の地底空間を浮かべていた。
天井には、
無数の鍾乳石が垂れ下がり、
電灯に照らされるたびに、
石灰の結晶が乱反射して、
今にも降ってきそうな錯覚を起こした。
「王女殿下、どうか、ご安心くださいませ。
このまま進めば、島北部に辿り着けます。
それから、御足元にもご注意を。
窪みに水が溜まっておりますゆえ」
恭しいカイに対し、
ハナが、マヤの背越しに文句をつけた。
「カイ、そんなに改まらないで。
わたし、王女殿下とお友だちになりたいの」
「ハナ、身分をわきまえろ。
おれたちが馴れ馴れしくしていい相手じゃない」
「でも、せっかくの同い年じゃない?」
「そういう問題じゃない。おれたちは軍人だ。
王家の剣となり盾となるのが、おれたちの責務だ」
マヤは、割って入った。
「カイとやら、かまわない。
われも気が安らぐし、
誰か一人を無理に立てるよりも、
ここは、平らかに助け合うべきだろう」
うんうんと頷いたハナだったが、
指先を頬に、また、一考した。
「王女殿下も、ちょっとかたいかも」
「かたい?」
「そう。もっと気さくに話したいな。
ね。マヤって呼んでもいい?」
「え」
カイがつっこむ。
「さすがに不敬罪だぞ」
ハナが笑う。
「仲良くすることが、
罪になんてならないよーだ」
そうこうしているうちに、
鍾乳洞が、冷たさを増していく。
……ザァーッ、
……ザァーッ、
瀬音が響く。
「川か?」
マヤは、カイの外套の裾を引いた。
カイが電灯を掲げ光の輪を広げると、
前方を遮るように、急流が現れた。
地底河川だった。
岸には、石灰の結晶が堆積し、
きらきらと雫を滴らせ、
どこまでも澄んだ流水は、
底の岩の縞模様を透かしていた。
行き止まりかと焦るマヤの前に、
カイが、躍り出た。
「ここは、お任せを」
「……?」
彼の左手が握り締めたのは、
〈縞瑪瑙の勾玉〉の首飾り。
『激流ヲ穿チ獲物ヲ逐フ、不撓不屈ノ迅影アリ』
「行け、〈怪鮫ギャレス=ジョー〉!」
詠唱とともに、光がはじけた。
急流に放たれたのは、粗い皮に覆われた大鮫。
骨格が剥き出しの尾鰭で河川を旋回し、
白色の眼光を睨ませると、
甲冑のように厳つい魚体を岸に迫らせた。
〈怪鮫ギャレス=ジョー〉、力泳!
颯爽と、カイが、大鮫の背に跳び乗り、
岸のふたりを手で招いた。
「マヤも、乗ろう」
「う、うん」
ハナが、先にぴょんと跳び、
後から来たマヤを抱き留めた。
「大丈夫?」
「うん。ありがとう」
「カイ、出してもいいよ」
「了解」
カイの合図で、大鮫が河川を下りはじめた。
カイは、背鰭を手に立ち、
ハナとマヤは、その傍らに腰を下ろした。
マヤは、カイの横顔を見上げた。
「この地底河川が、島北部まで続いているのか?」
「はい。
この地底河川は、地上に出た後、
島北部の大河川と合流します。
そのまま、
下流にある、森都ダンヴァラを目指しましょう。
そこが、
おれたち『ダンベリア島解放軍』の本拠地です」
◆4
〈怪鮫ギャレス=ジョー〉は、
胸鰭で澄んだ水を切り、
ところどころに突き出た鍾乳石の柱を、
器用にすり抜け泳いでいく。
「カイも、ハナも、
頼もしき〈霊獣〉を従えているのだな」
粗い皮を摩るマヤに、
ハナは、得意げに語る。
「カイの〈怪鮫〉も、わたしの〈妖蛇〉も、
古代に起源をもつ最上級の〈霊獣兵器〉なの。
その分、ちゃんと共鳴できるように、
少年練兵場ですこぶる鍛えられたけれど、ね」
カイは、下流を見据えたまま、
ぼそりと釘を刺す。
「ただ、おれたちは、
大青海戦争には従軍していません。
〈霊獣兵器〉を使役する適正年齢、
十二から十八才を満たしてすぐに、
王国が降伏しましたから。
『解放軍』の先鋒を務めるには、
まだまだ、鍛錬と実戦が必要です。
もっと、つよくならなければ」
急流の飛沫に、ハナは、やや顔をしかめる。
ふたりを交互に見つめながら、マヤは尋ねる。
「それにしても、
『ダンベリア島解放軍』とやらは、
どれほどの戦力を揃えている?
ダンヴァラは、治めているのか?」
答えたのは、カイだった。
「二十六名を残すのみです。
つい先日、
占領軍に基地を奇襲され、大打撃を受けました。
ダンヴァラが本拠地だとは言いましたが、
生き残りが潜伏しているに過ぎないのが実情です」
「二十六、だけ?」
マヤは、愕然とした。
つづけて、ハナが語り出す。
「そうなの。全然、頼りにならないでしょう?
本当はね、
わたしたち、生き延びるだけで精一杯なの。
それでもって、何が何でも生き延びたいの。
列島の解放とか、占領軍の追放とか、
もうどうでもいいから、
いざとなったら、カイとわたしだけで、
『解放軍』を脱け出しちゃおう、って、ね」
「おい、ハナ」
カイが窘めようとするが、
ハナは、熱弁を止めず、マヤの両手を握る。
「そうしたら、王女殿下が、マヤが来てくれたの。
まるで運命みたいじゃない?
すぐにピンときたの。
ああ、お友だちになれそうだ、って。
ね。カイとわたしが逃げる時は、
マヤも一緒に来て?
お互いにとって心強いでしょう?
数って、それだけで力になるから」
言い終える前に、
カイが、ハナの頭をはたいた。
「王女殿下、こいつの無礼をお赦しください。
おれたち『ダンベリア島解放軍』は、
壊滅状態ではありますが、
まだ、他島の解放軍との共闘は続いています。
エヴァンス大佐が強行させた、
『海軍極秘緊急軍事行動案第十八号』を知り、
王女殿下を助けに参じることができたのは、
『ワーマニア島解放軍』の情報提供のおかげです。
彼らとの連携が、おれたちの活路です」
「そ、そうか、……あれ」
おかしい。話が違う。
マヤが視線を向けると、ハナは、
頭をおさえながら、いたずらっぽく微笑み返した。
「わたし、よくわからない、って言っただけで、
知らない、とは言っていなかったと思うけれど。
あの状況じゃ、
詳しく説明している暇なんてなかったし、
ちょっとくらい端折ってもいいかな、って。
……、
言ったでしょう?
わたしたち、何が何でも生き延びたいの」
「な」
マヤは、言葉を失った。
恐ろしいものだったが、
ここまでくると、逞しくも映った。
カイも、ハナも、ずっと戦ってきたのだ。
自分が、公邸で寝そべり、
戦火の収束を空想していた間にも、命懸けで。
ふたりには、荒波を渡る覚悟があるようだった。
ついていくしかない。
鍾乳洞の出口が、もう光り輝いていることだし。
——『戦艦ユーゲスト=ネーゲル』
第一艦橋・艦隊指揮所
「提督、報告します。
山林で発見された鍾乳洞についてですが、
奥に、地底河川が流れていたとのことです。
何者かが、王女を手引きし、
島北部の下流域に逃亡した可能性が。
なお、鍾乳洞の存在は、占領軍も聞き及ばず、
オーシャニア陸軍により、
情報が秘されていたものと思われます」
副官の報告を受け、
ガイウスは、珈琲を一口、眉をひそめる。
王女を手引きした者というのは、
『ダンベリア島解放軍』の残党か、
『ワーマニア島解放軍』の斥候か。
前者の可能性は高い。
つい先日、占領軍に基地を奇襲されたとはいえ、
軍隊が一人残らず全滅するなど稀な事例だ。
残党が遊撃活動に徹していてもおかしくはない。
では、後者の可能性はどうか。
島周辺の海上封鎖も完璧ではないだろう。
鼠数匹が侵入していることは十二分にあり得る。
もっとも、両者に、本質的差異はないか。
『敵』が取り得る行動など限られているのだから。
「シルヴァは、どうしている」
「巫女さまは、拗ねておられるとのことです。
……やはり、〈伯焔龍フォルティナ〉の攻撃で、
鍾乳洞ごと潰して、仕留めるべきだった、と」
ガイウスは、穏やかに、次の指示を出した。
「シルヴァを本艦に戻してくれ。
ここで目標を片づけられなかったことは惜しいが、
まだ、打つ手はある。
敵が『解放軍』ならば、
王女をワーマニア島へ逃がしたいはずだ。
我が艦隊は、ダンベリア島北東部へ重心を移し、
奴らによるミストン海峡突破に備える」
To Be Continued.




