第11話:神速の一閃
「バカな……我が間合いにこれほど容易く踏み込んでくるだと……!?」
恐怖に駆られた魔帝ガルーダは、全身の魔力を開放。周囲数キロを蒸発させる極大爆発魔法を展開しようとした。
「消え去れぇぇ! 虫ケラがぁぁぁ!!」
黒い光が世界を包み込もうとした、その瞬間。
バルダスは、そっと息を吐いた。
二十年間、毎日、毎日。雨の日も風の日も、ただひたすらに繰り返してきた、一本の素振り。
才能がないと絶望しながらも、それでも剣が好きで振り続けた、泥臭い基礎の結晶。
「——一撃」
バルダスが剣を抜いたことすら、誰も目撃できなかった。
ただ、空間そのものが「切断」されたような音が一つ。
——スパァン。
次の瞬間、魔帝ガルーダの巨体と、背後に広がる1万の魔物軍勢、そして空を覆っていた紫色の暗雲までもが、直線状に綺麗に両断されていた。
「……な……に……? 我が……切られた……ただの……人間に……?」
ガルーダは信じられないという目のまま、光となって消滅していった。雲が割れ、暖かな太陽の光が平原に降り注ぐ。
一撃。
たった一撃の素振りで、伝説の魔王と1万の軍勢が壊滅したのだ。
静寂が平原を包む。騎士たちも、シエナも、言葉を失ってバルダスを見つめていた。
当のバルダスは、剣をサヤに納めると、首を傾げた。
「ふう……やっぱり、王都の魔物は元気がいいな。ちょっと手応えがあったぞ」
彼は本気で「王都の魔物はタフだな」と思っているのだった。




