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3


あの無機質な世界はなんなのだろう。


美々は暇があるとよくその事を考えていた。


翼都に聞けばいい?いやいや、翼都には聞かない。彼には自分から話してほしいもの。


そう思って彼の姿を目で追うようになっていた。期待を込めた瞳で。


それが彼にはたまらなかったのか。翼都が私にこう言って来た。


「何か気になる事でもあるの?」

「え?」

「あの世界の話し?」

「あ、あの世界……ね」

「あそこは、ギャンギ人の作った世界なんだ」

「そうなんだ。翼都はあんな世界、よく行っちゃうの?」

「僕は行きたくないんだけどね……」


そう言って翼都は俯いた。


そうか……、翼都の意思と関係なく、言ってみれば引きずり込まれちゃうのか。


そう私は納得した。


ギャンギ人とは一体なんなのだろう。翼都にとってどんな存在なのだろう。

それが、まだ私にはわからなかった。


学校には行かなくてはいけない。今日は翼都と一緒に登校した。


しかし、いつあの世界に引きずり込まれるのか。それが一抹の不安だった。


授業中、教卓に立っている女の先生は数学を教えていた。

私は疲れていたので、思わず舟をこいでしまっていた。



ね、眠い……、


上と下のマブタがほっとくとくっついてしまいそう……。


横の翼都はそんな私をどのように見ているのか。チラッと彼を見ると、彼は


真面目に教科書を見て勉強しているみたいだった。


ああ、彼は偉いなあ……。そう思いながら私は眠りの世界に引きずり込まれた。


夢の中で翼都が笑っている。


彼は地球人じゃないと言う。こんな何もかも……まあ、髪の色が少し蒼いけど。染めているのかな。と最初はそう思っていたが、それが彼の星では普通

の色なのか。今はそう言う風に思っている。


彼は何万光年も向こうの星にいたのだろう。どんなところなのだろうか。一回行ってみたいな。


私は、眠りに落ちながらそんな事を考えていた。気が付くと、翼都はそこにはいなかった。


あれ?どこに行ったんだろう。


目を走らせたが、近辺にはいない様だった。私は探しに教室を出た。



 トイレ……?体育館?校庭?


 いない。


 リーンゴーン……、


 ああ、ほら。授業のチャイムが鳴っちゃったよ。翼都―。


 いったん教室に帰った私。


 あ、


 「翼都!」


 居た。教室の自分の席にチョコンと座っていた。


 「翼都、どこ行ったかと」

 「ごめん、美々。ちょっとね」

 「うん」


 どこに行ってたかなんて聞かない。そんな事聞く必要なんてない。ここにいるだけで、それだけで満足だから。

 

 翼都は夜になると、星を見上げる。すると、彼は少し光るのだ。

 さっきからなんだかそのまま消えてしまうのかと思って私は心配している。


 翼都は、はにかんだ顔でただ笑っていた。


 「大丈夫」


 そう言う翼都。だけど君、消えちゃいそうで心配になるよ。そう思い、ふと手を握ると、


 つ、冷たい、


 私は思わず、そのまま彼の手を持っていた。


 「美々?」


 不思議そうにそう私に聞く翼都。ただ私の手で温めてあげようと握ったの……。

 「……大丈夫だよ、美々」


 そうか、そうね。大丈夫よね。そう思い私は手を放した。


 なんだか、死んでしまいそうで……。気になっちゃう。不思議な翼都。彼はどんなところで生きていたのか。



幸せ?


でも、そんな事を思っている私を見て、彼はただ笑う。


星なんか見ないで。悲しくなるわ。ただ、健やかにいて。





翼都の為にお菓子を作ってあげようと思って、台所に立った。


うーん、難しいわ。頑張って私。


シュークリームを作ってるつもりだけど。あー、カスタード、どれくらいが丁度いいのかしら。


悪戦苦闘してやっと完成。


味見してみる。


うん、美味しい!


そうして、小一時間過ぎると、



出来たっ!



私は上機嫌になって鼻歌を歌いながら後片づけをしだした。


翼都が階段を下りて来た。


「翼都、こっちこっち」


私はそう言って彼を手招きした。


「なにか作ったの?」

「うん、食べて」


翼都の口に運んであげる私。


もぐもぐ……。


彼の口が動く。


「どう?」


そう私が言うと、すぐに、


「うん、美味しいよ!美々」

「ほんと?良かった、作って」


私はそう言って笑った。翼都はシュークリームをもう一個食べた。


こんな毎日が続くと、私は勝手に思っていた。


       




彼が私の前に現れて、一か月が過ぎようとしていた。


私と翼都はよく一緒にいた。あれから変なギャンギ人のいる世界には行っていない。平和に時が過ぎて行った。


今日はいい天気だ。


私は翼都と歩いていた。


翼都が不意に歩くのをやめて止まった。


「翼都?」


翼都は空を仰いていた。見ると、彼は瞳を見開いていた。


「美々……」

「翼都?」

「君にはもう迷惑はかけられない」

「え?」


私は彼の顔を見た。彼の顔は青くなっていた。


「どうしたの?」


すると、彼は突然駆けだした。


「翼都!?」


彼を掴もうとした私の手は空を切った。


走り去る翼都。

私も後を追ったが、追いつけなかった。



何処に……?



私はハッとした、


あの、ギャンギ人とか言う奴の所?

私は彼を探した。しかし何処にもいなかった。


いなくなった。彼が、突然。


家に戻っても、彼はいなかった。




それから、どれ位経っただろう。捜索願も出した。が、どこにもいない。


何処に行ったのか……


どうすればいいのか分からないまま時が過ぎて行った。


家の玄関から音がすると、翼都!?と思い、見に行く始末。そんな事を繰り返していくうちに、彼はもう帰らないのか、という悪しき考えが頭をもたげてきた。



頭を思い切り振ると、そんな考えを吹き飛ばして、



翼都!帰ってきて。



と彼を待った。


一週間後の学校の帰り道。


下校していると、急に目の前の世界が割れた。


え?


私はびっくりしてその場に立ちすくんだ。


どこ……?ここ、


いいえ、美々。私には分かっているはずよ。

そう、ここは、ギャンギ人の世界。

寂しい世界。音のない……。


痛い……、

耳鳴りがする。


そう、私はここに来たかった。


だって……、

ここなら。ここなら、


翼都に逢えるかもしれない。


そんな気がするから。



翼都!



声にならない叫び。私は何度も叫んだ。



美々!


え?


美々、


横に、翼都がいた。


夢じゃないのね。夢じゃ……。


私は泣き出した。


美々、泣かないで。


翼都が私の涙を拭いた。


良かった。翼都、私は貴方に逢いたかったの。本当に。


待ってね、まずは、こいつらの世界から……。


翼都は弓をかざした。


―帰らないとね。


翼都はそう言うと、弓に力を吹き込む。




「ファイアー・エレメント!」



そう言うと、身体が熱くなった。その刹那、世界が砕けた。





「わっ!」




地球に戻ってくると、仰向けに勢いよく落ちた。


「イッタタ……」

「大丈夫?美々」


私はその懐かしい声を、やっと聴いた。聴けた、そう思って泣きながら抱き着いた。


「美々……」

「よかったー……。どこに行っていたの?私、貴方がいないと」



「……ごめんね」



優しい手つきで私の頭を撫でた。


少しして、座ったままの二人だったが、


「聞いて……いい?」


と私が言うと、翼都は頷いた。


「翼都……どこ、行ってたの?」ともう一度さっきのセリフを言い直した。


「……ギャンギ人の所へ……」

「今度は、私も行くわ」

「うん……っていうか、もう君もターゲットに入ってしまった。ギャンギ人

は君も敵視したようだ」


「え?」

「大丈夫、僕が君を守る。何があってもね」


私は思わず翼都に抱き着いた。

「み、美々、苦しいよ」


「翼都、大好き!」


そういって私は翼都の頬にキスをした。

翼都は目をぱちくり。


「何、したの?」

「う、触れただけよ。ただ触れたかったから」


返答に困る私。慌てて赤くなった顔を背けて言った。


「ふうん」

「か、帰ろ!」


私は立ち上がった。

そうして翼都は垣内家に帰ってきた。



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