第9話 少しだけ特別な約束
第二回「NEXT RISE FESTIVAL」まで、あと一週間。
Luminous Fiveのメンバーは、連日のリハーサルに励んでいた。
ライブハウスには、以前よりも多くの観客が集まるようになっている。
「前のイベントを見て来ました!」
そんな声を聞くたびに、アヤネたちの表情は明るくなっていった。
◇
リハーサルを終えた夜。
ユウキは五人を近くのレストランへ招待した。
「今日は決起会ということで。」
「やったー!」
真っ先に反応したのはミユキだった。
「こうやってみんなで食事するの、久しぶりですね。」
アグリも嬉しそうに微笑む。
テーブルには料理が並び、自然と会話も弾んでいく。
「そういえば社長。」
マアヤがグラスを置いて尋ねた。
「次のイベントって、もうその先も考えてるんですか?」
「実はね。」
ユウキは少し照れながら答える。
「このイベントを毎年続けられるようなブランドにしたいと思ってる。」
「すごい……。」
アヤネが目を輝かせた。
「私たちも、そのイベントと一緒に成長できたら嬉しいです。」
「もちろん。」
ユウキはうなずく。
「出演者のみんなが『また出たい』と思える場所を作るのが目標だから。」
その言葉に、五人は顔を見合わせて笑顔になった。
◇
食事会が終わり、店を出る。
駅へ向かう途中、イノリが少し歩く速度を緩めた。
「ユウキさん。」
「どうした?」
「少しだけ、お話ししてもいいですか?」
他の四人は先に駅へ向かい、二人は少し離れたベンチに腰を下ろした。
夜風が心地よく吹き抜ける。
「イベントのこと、すごく楽しみにしています。」
イノリはゆっくりと言葉を選ぶように話し始めた。
「でも、それだけじゃなくて……。」
「うん。」
「最近は、ユウキさんと話す時間も楽しみになっています。」
少し照れたように笑うイノリ。
「最初は仕事の相談ばかりだったのに、不思議ですね。」
ユウキも笑みを浮かべる。
「僕も同じだよ。」
「本当ですか?」
「イノリと話していると、新しい視点をもらえるし、自然体でいられる。」
その言葉を聞いたイノリは、ほっとしたように息をついた。
「良かった。」
しばらく沈黙が続く。
静かな公園には、虫の声だけが響いていた。
やがてイノリが口を開く。
「イベントが終わったら、またどこかへ出かけませんか?」
「いいね。」
「今度は景色のきれいな場所へ行ってみたいです。」
「じゃあ、候補を探しておくよ。」
「楽しみにしています。」
◇
帰宅したユウキは、自宅のデスクでイベント資料を整理していた。
そのとき、スマートフォンにメッセージが届く。
イノリ:『今日はありがとうございました。みんなもすごく楽しかったと言っていました。来週のイベント、頑張りましょう!』
ユウキは笑顔で返信する。
『こちらこそ。また最高の一日にしよう。』
画面を閉じると、自然と力が湧いてきた。
仕事として始めた音楽イベント。
しかし今では、それ以上の意味を持ち始めている。
夢を追う五人を応援したいという気持ち。
そして、その中でもイノリという一人の女性を、もっと知りたいという気持ち。
第二回イベントまで、あとわずか。
新しいステージが、もうすぐ幕を開けようとしていた。




