第10話 もう一つのステージへ
第二回「NEXT RISE FESTIVAL」当日。
朝七時。
会場にはすでにスタッフが集まり、設営が始まっていた。
「照明チェック、完了です!」
「音響も問題ありません!」
無線から次々と報告が入る。
ユウキは会場全体を歩き回り、一つひとつ確認していく。
前回よりも規模は大きい。
出演アーティストは十五組。
観客も前回の倍以上が来場予定だった。
「社長、緊張してます?」
スタッフが笑いながら尋ねる。
「少しね。」
ユウキも苦笑する。
「成功させたいイベントだから。」
◇
開場一時間前。
Luminous Fiveの控室を訪れると、五人は円陣を組んでいた。
「今日は最高のライブにしよう!」
アヤネの声に、
「おー!」
四人が元気よく応える。
その姿を見たユウキは自然と笑みがこぼれた。
「みんな。」
五人が振り向く。
「今日を楽しんできて。」
「はい!」
「ありがとうございます!」
イノリが一歩前へ出る。
「ユウキさん。」
「ん?」
「ここまで来られたのは、このイベントがあったからです。」
「それは違う。」
ユウキは首を横に振る。
「ここまで来たのは、みんなが努力したからだ。」
イノリは静かにうなずいた。
「……そう言ってもらえると嬉しいです。」
◇
午後三時。
「続いての出演は――Luminous Five!」
大きな歓声が会場を包む。
前回より広いステージ。
客席には多くの観客。
その中には、前回のイベントをきっかけにファンになった人たちの姿もあった。
イントロが流れる。
ミユキのドラム。
イノリのベース。
マアヤのギター。
アグリのキーボード。
そしてアヤネの歌声。
五人の音が一つになる。
以前よりも自信に満ちた演奏だった。
一曲終わるごとに拍手が大きくなる。
最後の曲が終わると、会場は温かな歓声に包まれた。
ステージ袖から見守っていたユウキは、小さく息をつく。
「よかった……。」
それは主催者としての安堵でもあり、彼女たちの成長を見届けた喜びでもあった。
◇
イベント終了後。
出演者たちはロビーで来場者を見送り、スタッフも撤収作業に入る。
Luminous Fiveの五人も充実した表情だった。
「すごく楽しかった!」
ミユキが満面の笑みを浮かべる。
「前よりお客さんの反応が大きかったね。」
マアヤも嬉しそうだ。
「緊張したけど、演奏しているうちに楽しくなりました。」
アグリがほっとしたように笑う。
アヤネはユウキの前に立ち、深く頭を下げた。
「本当にありがとうございました。」
「こちらこそ。最高のステージだった。」
その言葉に、五人の表情が明るくなる。
◇
帰り際。
イノリがユウキを呼び止めた。
「少しだけ、お時間ありますか?」
二人は会場の外へ出た。
夜風が火照った体に心地よい。
「今日のライブ、どうでしたか?」
「胸を張っていい出来だった。」
「そう言っていただけて安心しました。」
イノリは少し笑う。
「実は……。」
バッグから小さな封筒を取り出す。
「これ、皆で選んだんです。」
中にはイベントの写真と、五人からのメッセージカードが入っていた。
『素敵なステージをありがとうございました。』
『また一緒に音楽を届けたいです。』
ユウキは一枚一枚、ゆっくり目を通す。
「大切にするよ。」
「はい。」
イノリは少し照れながら言った。
「次は出演者としてだけじゃなく、もっとイベント作りにも協力できたら嬉しいです。」
ユウキはうなずく。
「ぜひお願いしたい。」
仕事を通じて築かれた信頼は、以前よりも確かなものになっていた。
そして、Luminous Fiveとユウキは、新しい目標へ向かって再び歩き始めるのだった。




