第7話 新しい景色
第二回「NEXT RISE FESTIVAL」まで、あと三週間。
ユウキの会社では、イベント準備が佳境を迎えていた。
出演者リストの最終確認。
会場レイアウトの調整。
スポンサーとの打ち合わせ。
毎日が慌ただしく過ぎていく。
そんな中でも、Luminous Fiveの五人は定期的にリハーサルを重ねていた。
◇
「ユウキさん!」
リハーサルを見学に訪れたユウキを見つけると、アヤネが元気よく手を振った。
「今日は新曲を聴いてもらいたいんです!」
「楽しみにしてるよ。」
メンバーはそれぞれの持ち場につく。
ミユキがスティックを軽く打ち鳴らし、アグリがキーボードに指を添える。
マアヤのギターがイントロを奏でると、イノリのベースがその音を支え、最後にアヤネの歌声が重なった。
以前よりも演奏にまとまりがある。
五人がお互いの音を信じていることが、客席からでも伝わってきた。
演奏が終わると、ユウキは自然と拍手を送った。
「すごく良かった。」
「本当ですか?」
アヤネが目を輝かせる。
「前よりも、それぞれの個性が曲の中で生きている感じがしたよ。」
「やった!」
ミユキがガッツポーズを作る。
イノリも小さく笑みを浮かべた。
「そう言っていただけると、自信になります。」
◇
リハーサル後。
近くのカフェで休憩を取ることになった。
今日は五人全員が一緒だ。
「社長って、本当に忙しいですよね。」
マアヤがコーヒーを飲みながら言う。
「忙しいけど、こうして皆さんの演奏を聴く時間は楽しみなんだ。」
「音楽、好きになりました?」
アグリが静かに尋ねる。
「うん。前よりずっと。」
ユウキは素直に答えた。
「みんなと出会ってから、ライブへ行く回数も増えたよ。」
「それは嬉しいですね。」
イノリが穏やかに微笑む。
「私たちも、イベントがきっかけで新しいファンが増えたんです。」
「SNSのフォロワーも少し伸びました!」
アヤネがスマートフォンの画面を見せる。
数字は決して爆発的ではない。
それでも、五人にとっては確かな前進だった。
◇
帰り際。
駅へ向かう途中で、イノリがユウキの隣を歩く。
「最近、毎日が楽しいんです。」
「それは良かった。」
「前は先が見えなくて、不安になることも多かったんですけど……。」
イノリは夜空を見上げた。
「今は、次のライブが楽しみだって思えるようになりました。」
「その気持ちを忘れなければ、きっともっと成長できる。」
「はい。」
少し歩いたところで、イノリが立ち止まる。
「ユウキさん。」
「ん?」
「今度のお休み、もしご都合が合えば、水族館へ行きませんか?」
思い切って誘ったような表情だった。
「ライブや仕事じゃなくて、普通にお出かけしてみたくて。」
ユウキは少し驚きながらも笑顔になる。
「ぜひ。一緒に行こう。」
「ありがとうございます。」
イノリはほっとしたように笑った。
仕事を通じて生まれた信頼は、少しずつプライベートでの交流へと広がっていく。
次の休日。
二人にとって初めての、仕事を離れた一日が始まろうとしていた。




