第6話 少しずつ近づく距離
イノリと食事をしてから、二週間が過ぎた。
ユウキは第二回「NEXT RISE FESTIVAL」の企画を本格的に動かし始めていた。
スポンサーとの打ち合わせ。
出演候補への連絡。
会場の下見。
忙しい毎日だったが、以前よりも不思議と充実していた。
仕事の合間には、Luminous Fiveのメンバーとも連絡を取り合うようになっていたからだ。
◇
ある土曜日。
ユウキはメンバー全員を集め、イベントの企画説明会を開いた。
「今回は前回より規模を大きくしたいと思っています。」
スクリーンには新しい企画書が映し出される。
「ライブだけじゃなく、出演者同士のトーク企画や物販エリアも充実させる予定です。」
「すごい……。」
アグリが感心したように資料を眺める。
「前回よりお客さんも増えそうですね!」
ミユキは期待に胸を膨らませる。
マアヤは細かくメモを取りながら質問を重ね、アヤネはリーダーらしく全体を確認していた。
イノリは相変わらず落ち着いた様子で話を聞いている。
「何か気になることはある?」
ユウキが尋ねると、イノリが静かに手を挙げた。
「出演者同士の交流時間があるなら、初対面の人でも話しやすいような工夫があると嬉しいです。」
「なるほど。」
ユウキはその場でメモを取る。
「名札に一言プロフィールを書けるようにしたらどうかな。」
「それ、いいですね。」
アヤネも賛成した。
「アイデアを取り入れてもらえるなんて嬉しいです。」
イノリは少し照れながら笑った。
◇
打ち合わせが終わると、自然と雑談が始まった。
「社長って休日は何してるんですか?」
ミユキが興味津々で聞く。
「最近はライブ巡りかな。」
「へぇ!」
「皆さんと出会ってから、音楽を聴く時間が増えたよ。」
その言葉に、五人は嬉しそうな表情を見せた。
「おすすめのバンド、いっぱいありますよ!」
マアヤがスマートフォンを取り出し、お気に入りのプレイリストを見せる。
「今度ぜひ聴いてみる。」
そんな何気ないやり取りが、以前よりずっと自然になっていた。
◇
帰り道。
イノリはユウキと同じ駅まで歩くことになった。
「今日は楽しかったですね。」
「みんなが積極的に意見を出してくれて助かったよ。」
「ユウキさんは、ちゃんと話を聞いてくれますから。」
イノリは微笑む。
「だから、私たちも安心して意見を言えるんです。」
その言葉は、ユウキにとって何より嬉しい評価だった。
「ありがとう。」
駅のホームに電車が滑り込んでくる。
「じゃあ、また来週。」
「はい。また連絡します。」
電車に乗り込んだイノリは、窓越しに小さく手を振った。
ユウキも手を振り返す。
その光景を見ながら、ユウキはふと思う。
仕事の縁から始まった関係は、少しずつ互いを理解し合う信頼へと変わり始めている。
焦る必要はない。
一歩ずつ、お互いを知っていけばいい。
そんな穏やかな気持ちとともに、第二回イベントへ向けた新しい日々が始まろうとしていた。




