第5期 第12話 約束の場所
海外フェスティバルから帰国して、一か月。
季節は初夏へと移り変わっていた。
ユウキは、最初に音楽イベントを開催したライブハウスを訪れていた。
入口には、あの日と変わらない看板が掲げられている。
「お久しぶりです。」
オーナーが笑顔で迎える。
「本当に久しぶりですね。」
ユウキも笑顔で握手を交わした。
「ここへ来ると、初心を思い出します。」
オーナーは懐かしそうに店内を見渡す。
「最初にイベントを持ち込んできたときは、ここまで大きくなるとは思わなかったよ。」
二人は顔を見合わせ、静かに笑った。
◇
その日の夕方。
Luminous Fiveの五人もライブハウスへやって来る。
「ただいま。」
アヤネがそう言うと、オーナーは嬉しそうに笑った。
「おかえり。」
その一言だけで、五人の表情が柔らかくなる。
「ここが私たちのスタートでした。」
イノリが静かにステージを見つめる。
小さな客席。
低い天井。
初めてライブをした日の景色は、今も変わらない。
◇
オーナーが提案した。
「せっかくだから、今日は貸し切りにしてある。」
「一曲、演奏していかないか?」
五人は顔を見合わせる。
「もちろんです!」
アヤネが笑顔で答えた。
機材を準備し、誰もいない客席へ向かって演奏を始める。
最初に披露したオリジナル曲。
デビュー当時から歌い続けてきた楽曲。
音がライブハウスいっぱいに響く。
観客はいない。
それでも、五人の表情はとても穏やかだった。
演奏を終えると、オーナーが静かに拍手を送る。
「本当に成長したね。」
その言葉に、五人は少し照れながら頭を下げた。
◇
夜。
ライブハウス近くの公園。
ユウキとイノリは、ベンチへ座って夜風を感じていた。
「今日は、不思議な気持ちでした。」
イノリが静かに話す。
「お客さんがいないライブなのに、すごく楽しかった。」
ユウキは微笑む。
「誰かに聴いてもらうことも大切だけど。」
「音楽が好きだから演奏する。」
「その気持ちを思い出せたんじゃないかな。」
イノリはゆっくり頷いた。
「はい。」
「初心って、大切ですね。」
◇
しばらく沈黙が続く。
夜空には無数の星が輝いていた。
「ユウキさん。」
「ん?」
「これから先、十年後も二十年後も。」
「私たちは音楽を続けていたいです。」
ユウキは星空を見上げながら答える。
「きっと続いているよ。」
「音楽が好きという気持ちは、簡単には消えないから。」
イノリは嬉しそうに笑った。
「そのときも、またこのライブハウスへ帰ってきたいですね。」
「もちろん。」
ユウキも穏やかに笑う。
「ここは、いつでも帰って来られる場所だから。」
◇
帰り際。
五人はライブハウスの前で記念写真を撮った。
最初のライブの日にも撮った場所。
五年後の今日も、同じ場所で笑っている。
景色は変わらない。
変わったのは、自分たちだった。
ライブハウスの灯りが静かに輝く。
その灯りは、夢の始まりを見守り続ける灯台のようだった。
そして、物語はいよいよ最後の一話へ。
ユウキとLuminous Fiveが歩んできた旅は、優しい結末へ向かって静かに歩き始めるのだった。




