第5期 第3話 五年間の軌跡
「NEXT RISE PROJECT 5th ANNIVERSARY」まで、あと二週間。
ユウキの会社では最終準備が本格化していた。
会議室の壁には、会場レイアウトやタイムテーブルが貼られている。
「出演者全員のリハーサル時間を最終調整しました。」
スタッフが資料を渡す。
「配信チームとの打ち合わせも完了しています。」
ユウキは一枚ずつ確認し、静かに頷いた。
「ありがとう。」
「五年間の集大成だからこそ、一人ひとりが安心してステージへ立てる環境を作ろう。」
「はい!」
スタッフの返事には、これまで積み重ねてきた自信が感じられた。
◇
一方、Luminous Fiveは都内のスタジオで最終リハーサルを続けていた。
「今日は最初から最後まで通そう。」
アヤネがマイクを握る。
「本番と同じ気持ちで。」
「了解!」
ミユキがスティックを鳴らす。
演奏が始まる。
デビュー当時の曲。
全国ツアーで育った代表曲。
大型フェスで披露したオリジナル曲。
五年間の歩みを振り返るようなセットリストだった。
演奏を終えると、誰からともなく拍手が起こる。
「いいライブになりそう。」
アグリが微笑む。
「今までで一番、自分たちらしいライブになる気がする。」
イノリも静かに頷いた。
◇
その日の夕方。
ユウキはライブ映像の編集室を訪れていた。
大型スクリーンには、これまでのイベント映像が映し出されている。
初めて開催した小さなライブイベント。
全国ツアー。
大型フェス。
「NEXT RISE FESTIVAL EXTRA」。
そして、Luminous Fiveの成長。
「この映像、オープニングで流します。」
映像スタッフが説明する。
「五年間を振り返る内容です。」
ユウキは映像を見つめながら、小さく笑った。
「あっという間だったな。」
映像の中には、まだ幼さの残る五人の姿も映っていた。
◇
数日後。
合同リハーサルが行われる。
ステージには、五年間で出会ったアーティストたちが集まっていた。
「あの頃は高校生でした。」
「今は自分たちでワンマンライブをしています。」
そんな会話が自然と交わされる。
イノリは以前出会ったベーシストと再会した。
「イノリさん。」
「久しぶり。」
「新しい曲、完成したんです。」
「聴かせてもらえる?」
短い演奏だった。
それでも、その音には以前よりもずっと自信が宿っていた。
「すごく良くなったね。」
イノリは素直に拍手を送る。
「ありがとうございます!」
少年は照れながら笑った。
◇
夜。
合同リハーサルを終えたあと、ユウキとイノリは会場の客席へ座っていた。
誰もいないホール。
静かなステージだけが照明に照らされている。
「ここが、満員になるんですね。」
イノリがぽつりとつぶやく。
「きっと。」
ユウキはステージを見つめたまま答えた。
「でも、大切なのは人数じゃない。」
「ここへ集まる人たち全員が、それぞれの夢を持っていること。」
イノリは静かに頷く。
「夢って、伝染するんですね。」
「誰かの挑戦を見て、自分も挑戦してみようと思える。」
「その連鎖が、このイベントを育ててくれた。」
二人はしばらく無言でステージを見つめていた。
やがてイノリが微笑む。
「本番が楽しみです。」
「うん。」
ユウキも笑顔になる。
「最高の一日にしよう。」
客席に静かな照明が落ちる。
五年間の軌跡は、もうすぐ一つのステージでつながる。
そしてその日、新しい未来への扉が再び開かれようとしていた。




