第4期 第7話 広がる輪
「NEXT RISE FESTIVAL EXTRA」の開催から半年。
全国各地で開催されたイベントは、多くの若手アーティストの登竜門として知られるようになっていた。
ユウキの会社では、新たな集計資料が会議室のスクリーンに映し出されている。
「社長、これまでの開催は十五都市。」
スタッフが報告する。
「出演アーティストは百組を超えました。」
「来場者数も毎回増加しています。」
ユウキは静かに資料を見つめた。
「数字も大切だけど。」
スタッフへ視線を向ける。
「出演した人たちが、また次のステージへ進んでいることが一番嬉しい。」
会議室に穏やかな空気が流れた。
◇
その週末。
今回の開催地は札幌。
気温は東京よりずっと低く、吐く息が白い。
「寒い!」
ミユキが肩をすくめる。
「もう冬なんだね。」
マアヤが笑う。
アグリは温かい飲み物を両手で包みながら言った。
「でも、この空気も好き。」
イノリは会場を見上げる。
「今日も新しい出会いがあるね。」
◇
リハーサルが始まる。
今回出演する新人アーティストの中には、ソロで活動している女性シンガーもいた。
リハーサルを終えた彼女は、緊張した表情でイノリへ近づく。
「あの……。」
「はい?」
「実は、Luminous Fiveさんの動画を見て、ライブ活動を始めました。」
イノリは少し驚きながらも微笑んだ。
「ありがとう。」
女性は続ける。
「私、ずっと人前で歌う勇気がなかったんです。」
「でも、『挑戦してみよう』と思えました。」
イノリはゆっくり頷く。
「その一歩を踏み出したのは、あなた自身だよ。」
「今日も、自分らしく歌ってきて。」
「はい!」
その表情には、少しだけ自信が宿っていた。
◇
イベント本番。
新人アーティストたちは、それぞれの想いを音楽に乗せて届けていく。
失敗しても、笑顔で最後まで歌い切る。
客席からは温かな拍手が送られた。
ユウキはその様子を見ながら、小さく息をつく。
「音楽には、人を前へ進ませる力がある。」
あらためて、そのことを実感していた。
◇
Luminous Fiveのステージ。
「こんばんは!」
アヤネの元気な声とともにライブが始まる。
代表曲。
オリジナル曲。
そして、イベントのテーマソングとして制作した新曲。
客席は自然と一つになっていく。
演奏を終えたあと、イノリがマイクを持った。
「今日出演した皆さんの演奏を、舞台袖から聴いていました。」
会場が静かになる。
「一歩踏み出す勇気は、人それぞれ違います。」
「でも、その一歩は、きっと未来につながっています。」
客席から大きな拍手が響いた。
◇
終演後。
出演者全員で記念写真を撮る。
笑顔が並ぶ一枚。
その写真を見ながら、ユウキは静かに笑った。
「この一枚の中から、未来のスターが生まれるかもしれない。」
◇
ホテルへ戻る途中。
雪が静かに降り始めていた。
イノリは空を見上げる。
「雪ですね。」
「今年初めて見たかも。」
ユウキも足を止める。
「今日、出演していた子たちの目が、昔のみんなと重なったよ。」
「私もです。」
イノリは優しく微笑んだ。
「夢を追いかけている人の目って、すぐ分かります。」
「だからこそ応援したくなる。」
二人はゆっくり歩き出す。
白い雪が街を静かに包み込んでいく。
その雪のように、誰かの夢を支える優しさも、少しずつ日本中へ広がっていた。
そして、新しい出会いは、まだまだ続いていくのだった。




