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第4期 第6話 それぞれの一歩

挿絵(By みてみん)


秋が深まり始めた頃。


「NEXT RISE FESTIVAL EXTRA」は、十都市目の開催を迎えていた。


今回の会場は、港町にある老舗ライブハウス。


壁には数え切れないほどの出演者のサインが飾られ、この場所で積み重ねられてきた時間を物語っていた。


「歴史を感じますね。」


アグリが壁を見上げる。


「いつか私たちも、ここへサインを書く日が来るのかな。」


ミユキが笑う。


ライブハウスのオーナーは優しく頷いた。


「もちろん。今日の出演者全員に書いてもらう予定だよ。」


五人は顔を見合わせ、小さく笑顔を交わした。



午後。


リハーサルが始まる。


この日の出演者は四組。


その中には、以前「NEXT RISE FESTIVAL EXTRA」に出演した高校生バンドの姿もあった。


「あれ?」


マアヤが気付く。


「前に会った子たちじゃない?」


「本当だ。」


イノリも穏やかに微笑んだ。


以前よりも表情が明るい。


機材の準備も落ち着いていて、ステージスタッフとのやり取りも自然だった。


「成長してる。」


イノリは嬉しそうにつぶやいた。



リハーサル後。


高校生バンドのベーシストがイノリのもとへやって来た。


「お久しぶりです。」


「久しぶり。」


「前に教えていただいたこと、今でも練習しています。」


イノリは笑顔になる。


「ライブも続けてる?」


「はい!」


少年は力強く頷いた。


「この前は初めてワンマンライブもできました。」


「すごい。」


「まだ小さな会場でしたけど。」


「それでも立派な一歩だよ。」


その言葉に、少年は照れくさそうに笑った。



夕方。


イベントが始まる。


一組目。


二組目。


三組目。


それぞれが自分たちの音楽を精いっぱい届ける。


客席から送られる拍手は、以前よりもさらに温かく感じられた。


ユウキは客席後方からその景色を見つめる。


「少しずつ輪が広がっている。」


イベントを重ねるたびに、新しい挑戦が生まれていた。



Luminous Fiveの出番。


「こんばんは!」


アヤネの明るい声に歓声が上がる。


一曲目から客席は自然と手拍子に包まれる。


ライブハウスという近い距離だからこそ、一人ひとりの表情がよく見えた。


MCでアヤネが話す。


「今日は、以前このイベントに出演してくれた皆さんとも再会できました。」


客席から拍手が起こる。


イノリが続ける。


「続けることは簡単じゃありません。でも、一歩ずつ積み重ねた時間は、必ず自分の力になります。」


その言葉に、出演者たちも客席で大きく頷いていた。



終演後。


ライブハウスの壁へ出演者全員がサインを書く。


高校生バンドのメンバーが、自分たちの名前を書き終えて嬉しそうに笑った。


「いつかもっと大きな字で書けるようになりたいです。」


ユウキはその言葉を聞いて微笑む。


「その日を楽しみにしているよ。」



帰り道。


港には静かな波音が響いていた。


ユウキとイノリは海沿いをゆっくり歩く。


「今日、前に出演していた子たちと再会できて嬉しかったです。」


イノリが穏やかに話す。


「続けてくれていたことが、何より嬉しくて。」


「きっかけは小さくても、その先は本人次第だからね。」


ユウキは静かに答える。


「でも、その最初の一歩を踏み出せる場所があることは大切なんだ。」


イノリは海を見つめながら頷いた。


「私たちも、そんな場所を守っていきたいです。」


夜の港には、街の灯りが静かに揺れていた。


夢は一人で育つものではない。


誰かの応援があり、誰かの背中を見て、一歩ずつ前へ進んでいく。


その優しい連鎖は、今日もまた新しい街で静かに広がっていくのだった。


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