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第4期 第3話 受け継がれる音

挿絵(By みてみん)


「NEXT RISE FESTIVAL EXTRA」が始まって一か月。


ユウキは全国各地のライブハウスを巡り、新人アーティストたちの演奏を見て回っていた。


「社長、次は名古屋公演です。」


スタッフがスケジュール表を差し出す。


「出演者は四組。そのうち二組は高校生バンドですね。」


「ありがとう。」


ユウキは資料を受け取り、静かに目を通した。


「今回も、一人でも多くの人にステージへ立つ楽しさを感じてもらいたい。」


その言葉に、スタッフも力強く頷いた。



数日後。


会場となるライブハウスでは、リハーサルが始まっていた。


Luminous Fiveはゲスト出演として最後に演奏する予定だ。


「皆さん、お久しぶりです!」


新人バンドのメンバーが緊張しながら挨拶をする。


「よろしくお願いします!」


アヤネが笑顔で応えた。


「今日は一緒に楽しもうね。」


その一言だけで、新人たちの表情が少し柔らかくなる。



リハーサルを見学していたイノリは、一人のベース担当の少女が何度も同じフレーズを練習している姿に気づいた。


「大丈夫?」


声をかけると、少女は慌てて頭を下げた。


「すみません……。」


「本番になると緊張してしまって。」


イノリは優しく微笑む。


「私も最初はそうだったよ。」


「本当ですか?」


「うん。」


イノリはベースを受け取り、ゆっくりと同じフレーズを弾いてみせる。


「難しいところほど、力を入れすぎないほうが弾きやすいこともあるよ。」


少女は真剣に頷いた。


「ありがとうございます!」



夕方。


イベントが始まる。


新人バンドが次々とステージへ立ち、それぞれの音楽を届けていく。


失敗もある。


緊張もある。


それでも客席からは温かな拍手が送られていた。


舞台袖で見守るユウキは、小さく笑みを浮かべる。


「こういう景色を作りたかったんだ。」


音楽の技術だけではない。


挑戦する勇気そのものを応援できる場所。


それが、このプロジェクトの目的だった。



そして、Luminous Fiveのステージ。


「こんばんは!」


アヤネの声とともに歓声が上がる。


会場の空気は一気に熱を帯びた。


全国ツアーや大型フェスを経験した五人の演奏には、以前よりも落ち着きと自信があった。


それでも、ライブハウス特有の近い距離感を大切にしながら、一人ひとりの表情を見て演奏していく。


最後の曲が終わると、大きな拍手が響いた。



終演後。


新人バンドのベース担当の少女がイノリのもとへ駆け寄ってきた。


「さっき教えていただいたことを意識したら、落ち着いて演奏できました!」


「それは良かった。」


イノリは嬉しそうに微笑む。


「ありがとうございました!」


少女は深く頭を下げた。


その様子を少し離れた場所から見ていたユウキも、自然と笑顔になる。



帰り道。


夜風が心地よく吹く中、ユウキとイノリは駅へ向かって歩いていた。


「今日は、教える立場の難しさも少し分かりました。」


イノリが静かに話し始める。


「うまく伝えられるか不安でした。」


「でも、ちゃんと伝わっていたよ。」


ユウキは穏やかに答えた。


「経験は、自分のためだけじゃなく、誰かの力にもなる。」


イノリはゆっくり頷いた。


「そうですね。」


少し空を見上げ、柔らかく笑う。


「私も、昔の自分にしてほしかったことを、少しだけ返せた気がします。」


ライブハウスの灯りが、夜の街に静かに輝いていた。


夢は、一人で叶えるものではない。


誰かから受け取った想いを、また次の誰かへつないでいく。


その輪は、これからも少しずつ広がっていくのだった。


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