第3期 第13話 あの日見上げたステージ
大型音楽フェス当日。
早朝。
会場には、開場前から長い列ができていた。
家族連れ。
友人同士。
音楽好きの人たち。
そして、Luminous FiveのタオルやTシャツを身に着けたファンの姿もある。
「すごい人数だ……。」
ミユキがモニター越しに客席を見つめる。
「今までで一番だね。」
マアヤも静かに息をのんだ。
アグリは深呼吸をしながら鍵盤に触れる。
「いつもどおり。」
イノリが穏やかに言った。
「私たちの音を届けよう。」
アヤネは四人を見渡し、笑顔を見せる。
「今日も最高のライブにしよう!」
「うん!」
五人の声が重なった。
◇
客席後方。
ユウキはスタッフパスを首から下げ、静かにステージを見つめていた。
数年前。
仕事だけに没頭していた自分。
音楽とは縁のない人生だった。
そんな自分が、小さなライブハウスで五人と出会った。
あの日から、少しずつ世界が変わっていった。
「いよいよだな。」
ユウキは小さくつぶやいた。
◇
「続いてのアーティストは――Luminous Five!」
紹介のアナウンスとともに、大きな拍手が響く。
スポットライトが五人を照らした。
アヤネがマイクを握る。
「皆さん、こんにちは!」
歓声が返ってくる。
イントロが流れる。
マアヤのギター。
イノリのベース。
アグリのキーボード。
ミユキのドラム。
そして、アヤネの歌声。
何万人もの観客を前にしても、五人は臆することなく演奏を続けた。
全国ツアーで積み重ねた経験。
何度も練習したオリジナル曲。
そのすべてが、このステージで一つになっていた。
◇
二曲目が終わると、アヤネがマイクを握る。
「私たちは、小さなライブハウスから活動を始めました。」
会場が静かになる。
「最初は、数人のお客さんの前で演奏する日もありました。」
「それでも、応援してくださる皆さんのおかげで、今日この場所へ立つことができました。」
客席から大きな拍手が起こる。
イノリは客席を見渡した。
最前列で笑顔を見せるファン。
初めて彼女たちを見る人。
その全員へ届けるように、静かに言葉を続ける。
「今日、初めて私たちを知ってくださった皆さんにも、またどこかでお会いできたら嬉しいです。」
「最後まで楽しんでください!」
歓声がさらに大きくなった。
◇
ラストナンバー。
五人は笑顔で演奏を終えた。
最後の音が消えた瞬間、会場は大きな拍手に包まれる。
その光景を見たミユキの目には、うっすらと涙が浮かんでいた。
「ありがとうございました!」
五人は深く頭を下げる。
ステージ袖へ戻ると、スタッフたちからも拍手が送られた。
「最高でした!」
「お疲れさまでした!」
アヤネたちは顔を見合わせ、自然と笑顔になる。
◇
終演後。
ユウキは楽屋を訪れた。
「みんな、お疲れさま。」
「ユウキさん!」
五人が一斉に立ち上がる。
「今日のライブ、本当に素晴らしかった。」
ユウキは心からそう伝えた。
「もう、誰が見ても胸を張れるステージだったよ。」
アヤネは照れくさそうに笑う。
「ありがとうございます。」
イノリが一歩前へ出る。
「今日の景色、一生忘れません。」
「私も。」
「私たちも。」
メンバー全員が頷く。
ユウキは穏やかに笑った。
「でも、ここはゴールじゃない。」
「はい。」
イノリの返事は迷いがなかった。
「もっとたくさんの人へ音楽を届けます。」
◇
フェス会場を後にする頃には、夕焼けが空を赤く染めていた。
ユウキは振り返り、大きなステージを見つめる。
「夢は叶えるだけじゃない。」
「叶えた先で、また新しい夢が始まる。」
その言葉に、イノリは静かに頷いた。
「次は、私たちだけのホールツアー。」
アヤネが笑顔で続ける。
「そして、もっと大きな舞台へ。」
五人は並んで歩き始める。
その背中には、自信と希望が宿っていた。
ユウキもまた、その背中を見守りながら、自分自身の新しい挑戦へと歩き出す。
ライブハウスで始まった一つの出会い。
その小さな縁は、多くの人をつなぐ大きな舞台へと育っていった。
そして物語は、さらに大きな未来へ――。
**第3期・完**




