第3期 第12話 前夜
大型音楽フェス前日。
早朝からLuminous Fiveの五人は、フェス会場へ向かっていた。
会場は郊外にある大規模な野外ステージ。
何万人もの観客を迎えるため、スタッフが慌ただしく準備を進めている。
「大きい……。」
アグリが思わず足を止めた。
ステージの高さ。
巨大なスクリーン。
客席の広さ。
どれも今まで経験したことのない規模だった。
「ここで演奏するんだね。」
ミユキが小さくつぶやく。
「まだ実感が湧かない。」
イノリは静かに客席を見渡した。
誰もいない客席。
しかし明日には、そこがたくさんの人で埋め尽くされる。
「緊張する?」
アヤネが尋ねる。
イノリは少し考えてから笑った。
「少しだけ。」
「でも楽しみのほうが大きい。」
◇
リハーサルが始まる。
「Luminous Five、お願いします。」
スタッフの声が響く。
五人はステージへ上がった。
「よろしくお願いします!」
音響チェック。
モニターバランス。
立ち位置の確認。
大型フェスならではの細かな確認が続く。
「ベース、少し返してください。」
イノリが落ち着いて伝える。
「了解です。」
スタッフも素早く対応する。
演奏は一曲だけ。
短い時間だったが、五人にとっては十分だった。
ステージを降りると、全員が自然と笑顔になる。
「少し安心した。」
マアヤが胸をなで下ろす。
「明日が楽しみ。」
アグリも頷いた。
◇
午後。
ユウキも会場入りした。
今回はフェス運営スタッフとの打ち合わせも兼ねている。
「ユウキさん!」
五人が手を振る。
「リハーサル、お疲れさま。」
「ありがとうございます。」
イノリは少し照れながら笑った。
「ステージに立った瞬間、鳥肌が立ちました。」
「その景色を、明日は満員のお客さんと一緒に見るんだ。」
ユウキの言葉に、五人の表情が引き締まる。
◇
夕方。
ホテルへ戻る前、六人は会場近くの芝生広場で少し休憩を取った。
夕日がゆっくりと沈んでいく。
「ここまで来られたね。」
アヤネが静かに言う。
「ライブハウスから始まって。」
「全国ツアーもあって。」
ミユキが続ける。
「気が付いたら、こんな大きなステージ。」
マアヤは空を見上げる。
「夢みたい。」
イノリは静かに笑った。
「夢じゃないよ。」
「みんなで積み重ねてきた時間だから。」
その言葉に、四人は頷いた。
◇
夜。
ホテルのロビー。
イノリは自動販売機で飲み物を買い、外のベンチへ座っていた。
そこへユウキがやって来る。
「眠れそう?」
「たぶん……少しだけ。」
二人は笑い合う。
「ユウキさん。」
「ん?」
「もし、明日うまく演奏できなかったらって考えてしまうんです。」
ユウキは静かに首を振った。
「ここまで来るまで、何回ライブをしてきた?」
「……数え切れません。」
「それだけ積み重ねてきた。」
ユウキは穏やかに続ける。
「明日は、その積み重ねを楽しめばいい。」
イノリはその言葉を聞いて、小さく深呼吸をした。
「ありがとうございます。」
「少し気持ちが楽になりました。」
◇
部屋へ戻る前。
イノリは夜空を見上げる。
無数の星が静かに輝いていた。
明日。
Luminous Fiveは、これまでで最も大きな舞台へ立つ。
ライブハウスで始まった五人の物語は、新たな景色へ届こうとしている。
そして、その景色の先には、まだ見ぬ未来が待っているのだった。




