第3期 第11話 憧れの舞台へ向けて
大型音楽フェスまで、あと三週間。
Luminous Fiveの練習は、これまで以上に熱を帯びていた。
「もう一回、最初から合わせよう。」
アヤネがマイクを握る。
「今日は本番と同じ流れでいこう。」
「了解!」
ミユキがスティックを鳴らす。
マアヤはギターを構え、アグリは鍵盤へ手を置く。
イノリは全員を見渡し、小さく息を吸った。
「いこう。」
演奏が始まる。
ツアーを終えた経験。
新曲を作った時間。
数え切れないライブ。
そのすべてが、五人の音に重なっていた。
◇
演奏を終えると、スタジオに静かな余韻が残る。
「どうだった?」
アヤネがユウキへ視線を向ける。
今日は練習を見学に来ていた。
「良かった。」
ユウキは素直に答えた。
「でも、もっと良くなる。」
五人は真剣な表情になる。
「どこを直したらいいと思いますか?」
イノリが静かに尋ねた。
「技術じゃない。」
ユウキはゆっくり答える。
「今のみんななら演奏は十分伝わる。」
「じゃあ……。」
「初めて見るお客さんへ向けて、一曲目から『また聴きたい』と思ってもらえる空気を作ること。」
五人は顔を見合わせた。
「空気……。」
アグリが小さくつぶやく。
「演奏だけじゃなく、笑顔やMCも含めてライブなんだ。」
ユウキの言葉に、全員が頷いた。
◇
翌日。
大型フェスの出演者向け説明会が開かれた。
会場には、さまざまなアーティストが集まっている。
「すごい人……。」
ミユキが周囲を見回す。
「テレビで見たことがある人もいる。」
マアヤも少し緊張した様子だった。
イノリは静かに資料を受け取りながら言う。
「気負いすぎないようにしよう。」
「うん。」
アヤネが笑顔を作る。
「私たちは私たちだもんね。」
説明会ではステージの使い方やタイムテーブル、リハーサルについて説明が行われた。
すべてが今まで経験したライブとは桁違いの規模だった。
◇
説明会が終わると、ユウキが五人のもとへやって来た。
「どうだった?」
「想像以上でした。」
アグリが率直に答える。
「でも。」
イノリが続ける。
「少しだけ実感が湧きました。」
「本当にこの舞台へ立つんだって。」
ユウキは穏やかに笑う。
「ここまで来たんだから、自信を持っていい。」
「はい。」
◇
帰り道。
イノリはユウキと並んで歩いていた。
夕焼けが街をオレンジ色に染めている。
「ユウキさん。」
「ん?」
「私、昔は人前で話すのも苦手だったんです。」
「そうなんだ。」
「でも。」
少し照れながら笑う。
「ライブを続けて、少しだけ変われた気がします。」
「音楽が変えてくれた?」
「それもあります。」
イノリは空を見上げた。
「でも、一緒に頑張る仲間がいたからです。」
その言葉に、ユウキは静かに頷いた。
「一人では届かない場所でも、仲間となら届くことがある。」
「はい。」
イノリの返事は力強かった。
大型音楽フェスまで、あと三週間。
憧れだった舞台は、もう目の前まで近づいていた。
五人は、その日を最高の笑顔で迎えるため、今日もまた音を重ね続けるのだった。




