第3期 第9話 挑戦への切符
大型音楽フェスへの推薦が決まってから数日。
Luminous Fiveのスタジオには、これまで以上に真剣な空気が流れていた。
「もう一回、Aメロから合わせよう。」
アヤネがマイクを握る。
「テンポはそのままで。」
イノリが静かに全体を見渡す。
「サビで少しだけ勢いを出してみよう。」
マアヤがギターを構え直し、アグリが鍵盤に指を添える。
ミユキはスティックを軽く鳴らした。
「よし、いこう!」
演奏が始まる。
ツアーを経験した五人の音は、以前よりもまとまりが増していた。
一曲が終わると、全員が自然と顔を見合わせる。
「今の、良かったね。」
アグリが穏やかに微笑む。
「うん。」
イノリも小さく頷いた。
「少しずつ理想の音に近づいてる。」
◇
その頃。
ユウキは会社で大型フェスの実行委員会と打ち合わせを行っていた。
「推薦資料はこちらになります。」
担当者へ、Luminous Fiveのライブ映像や活動実績をまとめた資料を手渡す。
「全国ツアーも完走されたんですね。」
担当者が映像を見ながら言う。
「はい。」
ユウキは静かに答えた。
「派手さだけではなく、ライブを重ねるたびに成長してきたバンドです。」
担当者はゆっくり頷いた。
「選考委員にも共有させていただきます。」
会議を終えたユウキは、小さく息をついた。
「あとは、みんなの力を信じよう。」
◇
夕方。
スタジオにユウキが顔を出すと、ちょうど休憩時間だった。
「お疲れさま。」
「ユウキさん!」
ミユキが笑顔で迎える。
「練習、順調?」
「はい!」
アヤネがタオルで汗を拭きながら答えた。
「今日は新しいアレンジも試していました。」
「ライブ映えしそうな感じになったんです。」
マアヤが嬉しそうに話す。
「聴かせてもらってもいい?」
「もちろんです!」
◇
演奏が始まる。
以前よりも表情豊かになったアヤネの歌声。
マアヤのギターは力強く、それでいて繊細だった。
イノリのベースは曲全体を支え、アグリのキーボードが温かみを加える。
ミユキのドラムがリズムを引っ張り、五人の音が一つになる。
演奏が終わると、ユウキは大きく拍手を送った。
「すごく良かった。」
五人の表情が明るくなる。
「ありがとうございます!」
「この曲なら、初めて聴く人にも伝わると思う。」
その言葉に、イノリは安心したように笑った。
「そう言っていただけると、自信になります。」
◇
帰り道。
ユウキとイノリは駅まで並んで歩いていた。
街路樹の葉は少しずつ色づき始めている。
「選考結果って、いつ頃なんですか?」
イノリが尋ねる。
「来週には連絡が来る予定だよ。」
「そうですか……。」
少しだけ緊張した表情になる。
「不安?」
「少しだけ。」
イノリは正直に答えた。
「でも、それ以上に楽しみなんです。」
ユウキは穏やかに微笑む。
「結果はどうであっても、ここまで積み重ねてきた時間はなくならない。」
「はい。」
「その経験は、必ず次につながる。」
イノリは力強く頷いた。
「ありがとうございます。」
◇
その夜。
Luminous Fiveのグループチャットには、一枚の写真が投稿された。
今日のスタジオで撮った五人の集合写真だった。
**アヤネ**
「みんな、お疲れさま!」
**マアヤ**
「来週、いい知らせが来るといいね!」
**ミユキ**
「ドキドキして眠れないかも!」
**アグリ**
「私たちらしく待とう。」
最後にイノリがメッセージを送る。
**「ここまで来られたことに感謝して、胸を張って結果を待とう。」**
その言葉に、四人は次々とスタンプを返した。
夢への挑戦は続いていく。
そして、運命の知らせが届く日が、少しずつ近づいていた。




