第3期 第7話 ツアーファイナル
全国ツアー最終日。
最後の会場は、東京近郊にあるライブホールだった。
開場前。
入口には長い列ができている。
地方公演で初めて彼女たちを知った人。
以前から応援しているファン。
そして、今日のファイナルを楽しみに駆けつけた人たち。
さまざまな思いを胸に、多くの観客が開場を待っていた。
◇
控室。
五人は本番衣装に着替え、静かに準備を進めていた。
「今日で最後なんだね。」
ミユキがぽつりとつぶやく。
「少し寂しいかも。」
マアヤも笑いながら答える。
「でも、最後だから思い切り楽しもう。」
アグリは楽譜を閉じる。
「このツアーで、本当にたくさんのことを学べたね。」
イノリはメンバー一人ひとりを見渡した。
「最初の頃より、みんな自信を持ってステージに立てるようになった。」
アヤネが円陣を組もうと手を差し出す。
「最高の締めくくりにしよう!」
五人の手が重なった。
「おー!」
◇
一方、ユウキはスタッフ席で最終確認をしていた。
今回は主催者ではない。
一人の観客として、そして彼女たちを応援する存在として会場に来ていた。
スマートフォンには会社からメッセージが届く。
「社長、来週の会議資料を共有しました。」
ユウキは短く返信する。
「ありがとう。明日確認します。」
今日は仕事のことを少しだけ忘れよう。
そう決めて、ステージへ視線を向けた。
◇
照明が落ちる。
会場が暗闇に包まれ、大きな歓声が響く。
「皆さん、こんばんは!」
アヤネの第一声で、客席の熱気は一気に高まった。
代表曲。
オリジナル曲。
ツアーで育ててきた新曲。
一曲一曲に、これまで訪れた街での思い出が重なる。
MCでは、アヤネが客席へ語りかけた。
「このツアーで、たくさんの景色を見ました。」
客席は静まり返る。
「初めて私たちを知ってくださった方。」
「遠くから応援に来てくださった方。」
「ずっと支えてくださっている皆さん。」
「本当にありがとうございます!」
大きな拍手が会場いっぱいに広がった。
◇
アンコール。
客席から鳴りやまない拍手に応え、五人が再びステージへ現れる。
「最後の一曲です!」
イントロが流れる。
会場中が手拍子で一つになる。
客席の笑顔。
ステージの笑顔。
音楽が、そのすべてをつないでいた。
演奏が終わると、五人は深く頭を下げる。
「ありがとうございました!」
歓声はしばらく鳴りやまなかった。
◇
終演後。
楽屋には、達成感に満ちた空気が流れていた。
「終わっちゃったね。」
ミユキがタオルで汗を拭く。
「でも、最高だった。」
マアヤが笑顔を見せる。
アグリも静かに頷いた。
「このツアーで、自分たちの音楽にもっと自信が持てるようになった。」
そこへ、ユウキが花束を持って入ってきた。
「みんな、お疲れさま。」
「ユウキさん!」
五人が一斉に立ち上がる。
ユウキは花束をアヤネへ手渡した。
「ツアー完走、本当におめでとう。」
「ありがとうございます。」
アヤネは大切そうに花束を抱えた。
イノリが一歩前へ出る。
「最初は不安ばかりでした。」
穏やかな声で続ける。
「でも、街を回るたびに応援してくださる方が増えて、『また来てほしい』と言っていただけることが、本当に嬉しかったです。」
ユウキは微笑む。
「その言葉は、みんなが積み重ねてきた努力への何よりのご褒美だね。」
イノリは静かに頷いた。
「はい。」
◇
ライブホールを出ると、夜風が心地よく頬をなでた。
ツアーは終わった。
しかし、それは終着点ではない。
新しい出会い。
新しい音楽。
そして、もっと大きなステージ。
Luminous Fiveは、新たな夢へ向かって歩き始める。
その背中を見つめながら、ユウキもまた、自分自身の夢へ向かって静かに歩き出すのだった。




