第3期 第5話 旅の途中で
全国ツアーも折り返しを迎えた。
五都市を予定していたツアーのうち、三公演が無事に終了した。
移動にも慣れ、ホテルでの荷ほどきも以前よりずっと早くなっている。
「最初はキャリーケースの中がぐちゃぐちゃだったのにね。」
ミユキが笑いながら荷物を整理する。
「今はちゃんと片付けられるようになった。」
マアヤも苦笑した。
「そういうところでも成長するんだね。」
イノリはスケジュール帳を閉じる。
「明日は移動だけだから、少しゆっくりできそう。」
「久しぶりのお休みだ!」
アヤネが嬉しそうに両手を上げた。
◇
翌日。
次の公演地へ向かう途中、一行は乗り換え駅の近くを少しだけ散策することになった。
商店街を歩き、地元のお菓子を買い、お土産屋をのぞく。
「これ、おいしそう。」
アグリが小さな焼き菓子を手に取る。
「みんなで食べよう。」
自然な笑顔が広がる。
ライブだけではない。
こうした時間も、ツアーの大切な思い出になっていた。
◇
午後。
ユウキも合流した。
「お疲れさま。」
「ユウキさん!」
五人が笑顔で迎える。
「今日は少し時間が取れたから、一緒に昼食でもどう?」
「ぜひ!」
地元で人気の定食屋へ入り、六人でテーブルを囲む。
「いただきます!」
温かい料理を前に、会話も弾んだ。
「次の会場はどんなところなんだろう。」
ミユキが期待に胸を膨らませる。
「写真で見た感じだと、今までで一番客席との距離が近そう。」
ユウキが答える。
「じゃあ、お客さんの表情もよく見えますね。」
イノリが嬉しそうに微笑んだ。
◇
食後。
川沿いの遊歩道を歩きながら、イノリが静かに話し始める。
「ツアーが始まる前は、不安しかありませんでした。」
「でも今は?」
ユウキが尋ねる。
「終わってほしくないって思っています。」
その言葉に、ユウキは少し驚いた。
「毎日が新鮮なんです。」
イノリは笑う。
「ライブをして、新しい人と出会って、新しい街を知って。」
少し空を見上げる。
「音楽を続けてきて、本当に良かったと思えます。」
ユウキは穏やかに頷いた。
「その気持ちを忘れなければ、これから先も大丈夫。」
「はい。」
イノリは力強く返事をした。
◇
夕方。
次の街へ向かう列車に乗り込む。
窓の外には、ゆっくりと流れる田園風景。
アヤネがぽつりと言う。
「こういう景色を見ると、日本って広いね。」
「だから、もっといろんな場所でライブがしたい。」
マアヤが続ける。
「いつか全国全部回れたらいいね。」
「その夢、叶えよう。」
アヤネの言葉に、全員が笑顔で頷いた。
車窓から差し込む夕日が、六人の表情を優しく照らす。
旅はまだ続く。
新しい街で待つ人たちへ音楽を届けるために。
そして、それぞれの夢へ、また一歩近づくために。




