第3期 第3話 二つ目の街
全国ツアー二か所目。
海が見える地方都市。
朝、ホテルの窓を開けると、潮風が部屋へ吹き込んできた。
「いい天気だね。」
アヤネがカーテンを開ける。
「今日は観光したいくらい。」
ミユキが笑うと、マアヤも苦笑した。
「ライブが終わったら少しだけ歩けるかな。」
イノリはスケジュール表を見ながら言う。
「まずはリハーサルに集中しよう。」
「了解!」
四人が元気よく返事をする。
◇
一方、ユウキは東京で仕事を終えたあと、新幹線で二つ目の会場へ向かっていた。
全国ツアー中も会社の経営は止まらない。
移動中の車内では、スタッフとオンラインで打ち合わせを続けている。
「社長、来月のイベント企画書です。」
「ありがとう。夜に確認して返事をするよ。」
パソコンを閉じると、窓の外には夕焼けに染まる街並みが流れていた。
「忙しいけど、不思議と苦じゃないな。」
そうつぶやき、ユウキは小さく笑った。
◇
会場ではリハーサルが始まっていた。
「モニター、もう少しボーカルをお願いします!」
アヤネがスタッフへ伝える。
「ベースも少しだけ返してください。」
イノリも落ち着いて要望を伝えた。
前回のツアー初日よりも、五人は堂々としている。
スタッフとのやり取りもスムーズになっていた。
「皆さん、慣れてきましたね。」
音響スタッフが笑顔で言う。
「少しだけです。」
イノリは照れくさそうに笑った。
「でも、安心して演奏できる環境を作っていただけるので。」
◇
開演時間。
客席には地元のファンだけでなく、前回の公演を見て遠征してきた観客の姿もあった。
「Luminous Five!」
歓声が響く。
アヤネがマイクを握る。
「今日は来てくださって、本当にありがとうございます!」
一曲目が始まる。
以前よりも客席との距離が近く感じられる。
MCでは会場から笑い声が起こり、演奏では自然と手拍子が広がった。
最後の曲を終えると、観客から大きな拍手が送られる。
「また来てください!」
そんな声が客席から飛び、五人は笑顔で手を振った。
◇
終演後。
会場近くの小さなカフェで、メンバーとユウキは一息ついていた。
「今日は昨日より落ち着いて演奏できました。」
アグリが紅茶を飲みながら話す。
「お客さんの顔を見る余裕もありました。」
「ライブって、毎回違うんですね。」
マアヤが続ける。
「同じ曲でも、お客さんによって空気が変わる。」
ユウキは頷いた。
「だから何度でもステージに立ちたくなるんだろうね。」
「そうかもしれません。」
イノリが静かに笑う。
「今日も新しく応援してくださる方と出会えました。」
◇
ホテルへ戻る途中。
イノリは海沿いの遊歩道で足を止めた。
夜の波音だけが静かに響いている。
「ユウキさん。」
「どうした?」
「このツアーが始まる前は、不安のほうが大きかったんです。」
「今は?」
「今は、次の街が楽しみです。」
そう言ってイノリは海を見つめた。
「一つライブが終わるたびに、自分たちも少しずつ成長できている気がします。」
ユウキは穏やかに微笑む。
「その積み重ねが、きっと未来につながる。」
イノリは力強く頷いた。
「はい。」
夜空には満天の星が広がっていた。
全国ツアーはまだ始まったばかり。
新しい街で、新しい出会いを重ねながら、Luminous Fiveは一歩ずつ前へ進み続けるのだった。




