第3期 第1話 新しい航路
年が明け、春。
「NEXT RISE FESTIVAL」は、インディーズアーティストの間で知られるイベントへと成長していた。
「社長、今年は海外からも問い合わせが来ています。」
スタッフが一通のメールを印刷して持ってくる。
「海外から?」
ユウキは少し驚いた表情で資料を受け取った。
「日本のインディーズシーンに興味がある音楽メディアからです。取材も希望されています。」
「そこまで広がったんだな……。」
最初は小さな挑戦だった。
今では、少しずつ音楽業界の中で存在感を持ち始めている。
「今年はさらに気を引き締めよう。」
ユウキはスタッフたちへ向けて微笑んだ。
「イベントを大きくすることより、出演者に『出て良かった』と思ってもらえることを忘れないように。」
「はい!」
会議室には力強い返事が響いた。
◇
その日の午後。
Luminous Fiveの五人が事務所を訪れる。
「こんにちは!」
アヤネは以前よりも堂々とした笑顔を見せる。
「今日はいい報告があります!」
「何だろう。」
ユウキが笑顔で迎えると、ミユキが嬉しそうに一枚のチラシを差し出した。
「見てください!」
そこには、
**『Luminous Five 全国ライブツアー 決定』**
という文字が大きく書かれていた。
「全国ツアー?」
ユウキは目を丸くする。
「おめでとう!」
「ありがとうございます!」
五人は一斉に頭を下げた。
マアヤが照れながら話し始める。
「まだ五都市だけなんですけど……。」
「それでも、私たちには大きな挑戦です。」
アグリも静かに頷いた。
イノリは穏やかな表情で続ける。
「初めて行く街ばかりなので、不安もあります。でも、それ以上に楽しみなんです。」
「その気持ちがあれば大丈夫。」
ユウキは心からそう思った。
◇
打ち合わせでは、ツアー中のスケジュールやイベント出演について話し合われた。
「途中で地方フェスとも日程が重なるかもしれません。」
ユウキがカレンダーを広げる。
「移動時間も考えて、無理のない予定を組もう。」
「ありがとうございます。」
アヤネが真剣な表情でメモを取る。
「前みたいに勢いだけで走るんじゃなくて、長く活動できるようにしたいです。」
「その考え方は大事だ。」
ユウキは頷いた。
「夢は、一日で叶えるものじゃないからね。」
◇
打ち合わせが終わると、イノリがユウキに声をかけた。
「少しだけ、お時間ありますか?」
二人は会社近くの公園を歩く。
桜が少しずつ咲き始め、春の風が心地よく吹いていた。
「全国ツアー、おめでとう。」
「ありがとうございます。」
イノリは花びらが舞う空を見上げる。
「最初にライブハウスで演奏していた頃は、こんな日が来るなんて想像できませんでした。」
「積み重ねてきた結果だね。」
「でも。」
イノリは少し笑う。
「ゴールじゃありません。」
「うん。」
「もっと大きな会場で演奏したいですし、もっとたくさんの人に私たちの音楽を届けたい。」
その瞳は、初めて会った頃よりもずっと力強かった。
ユウキは穏やかに答える。
「その夢を、これからも応援してる。」
イノリは小さく会釈した。
「ありがとうございます。」
◇
夕暮れ。
ユウキは会社の窓から街を見下ろしていた。
イベントも、新しい事業も、順調に動き始めている。
そしてLuminous Fiveは、全国という新しい舞台へ踏み出そうとしていた。
それぞれの夢は、少しずつ形を変えながら前へ進んでいく。
新しい出会い。
新しい街。
新しいステージ。
第三章は、さらに広い世界を目指す旅の始まりだった。




