第2話 イベントへの招待
ライブから三日後。
ユウキは自社の会議室で、音楽イベントの企画書を見直していた。
イベント名は――
「NEXT RISE FESTIVAL」
まだ世に知られていないアーティストに、大きなステージへ立つ機会を提供することを目的としたライブイベントだ。
「出演者にも、お客さんにも、『また来たい』と思ってもらえるイベントにしたいな」
利益だけを追うつもりはなかった。
音楽業界に新しい風を吹かせる。
そんな思いも、この企画には込められていた。
その日の午後。
Luminous Fiveの五人が、ユウキの会社を訪れた。
「本日はよろしくお願いします!」
先頭で挨拶したのはボーカルのアヤネ。
元気いっぱいの笑顔は、ステージの上と変わらない。
ギターのマアヤは周囲を見渡しながら、
「すごい会社ですね……」
と感心した様子だ。
ドラムのミユキは、
「受付から緊張しちゃった!」
と苦笑している。
キーボードのアグリは静かに会釈をし、
最後にベースのイノリが落ち着いた口調で言った。
「本日はお時間をいただきありがとうございます。」
五人とも礼儀正しかった。
地下ライブハウスで見た印象以上に、真面目なグループなのだとユウキは感じた。
「こちらこそ来てくれてありがとう。」
ユウキはプロジェクターに企画資料を映した。
「イベントは二か月後。出演者は十組ほどを予定しています。ジャンルは自由ですが、オリジナル曲を持っているアーティストを中心に考えています。」
五人は真剣な表情で資料を見つめる。
「出演料もお支払いしますし、映像収録も行います。出演者には後日ライブ映像もお渡しします。」
「えっ、本当に?」
ミユキが思わず声を上げる。
地下ライブでは、自分たちの演奏映像すら残らないことも珍しくない。
この条件は破格だった。
「私たち、本当に出演していいんですか?」
アヤネが少し不安そうに尋ねる。
「もちろん。」
ユウキは迷いなくうなずく。
「この前のライブを見て決めたんだ。皆さんの演奏には、人を引きつける力がある。」
その言葉に、五人は顔を見合わせた。
「ありがとうございます!」
アヤネが頭を下げると、他の四人も続く。
その姿に、ユウキは自然と笑みを浮かべた。
◇
打ち合わせが終わる頃には、夕方になっていた。
会社を出る前、イノリが資料を丁寧にファイルへしまいながら声をかける。
「今日のお話、とても勉強になりました。」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。」
「イベント運営って、出演者だけじゃなくて照明や音響、スタッフの方まで含めて考えられているんですね。」
「みんなが安心して演奏できる場所を作りたいから。」
ユウキがそう答えると、イノリは少しだけ微笑んだ。
「素敵な考え方ですね。」
ほんの数秒の会話だった。
それでも、お互いの距離が少しだけ縮まったような気がした。
◇
五人を見送ったあと。
ユウキは窓の外を眺めながらつぶやく。
「まずはイベントを成功させよう。」
出演者として信頼してもらうこと。
観客に楽しんでもらうこと。
その積み重ねが、きっと新しい縁につながっていく。
そう信じて、ユウキは再び企画書へ視線を戻した。




