第1話 年収一億の男と、地下ライブハウスの星
皆さま、本作をご覧いただきありがとうございます。
この作品は、一人の青年と五人組ガールズバンドが音楽を通して成長し、多くの人たちの夢を支えていく物語です。
主人公・ユウキは、30代で会社を立ち上げ、音楽イベント「NEXT RISE PROJECT」を企画・運営するイベントプロデューサー。ある日、地下ライブハウスで出会った五人組ガールズバンド「Luminous Five」との出会いをきっかけに、彼らの人生は大きく動き始めます。
ライブハウスから全国ツアーへ。
全国ツアーから大型フェスへ。
そして、日本を飛び出し、世界のステージへ――。
この物語では、成功だけではなく、悩みや迷い、仲間との絆、夢を追い続けることの大切さを描いています。
誰かの一歩が、また誰かの勇気になる。
音楽には、人と人をつなぎ、新しい未来を生み出す力がある。
そんな想いを込めて、このシリーズを書きました。
もしこの作品を読んで、「夢を追いかけてみたい」「誰かを応援したい」と少しでも感じていただけたなら、作者としてこれ以上嬉しいことはありません。
最後まで、ユウキとLuminous Fiveが歩む物語を楽しんでいただければ幸いです。
「……結局、金だけじゃ駄目だったか」
高層ビルの最上階。
窓の向こうに広がる夜景を見下ろしながら、ユウキは一人ため息をついた。
三十五歳。
独身。
彼女なし。
学生時代は勉強ばかり。社会人になってからは仕事ばかり。
「モテたい」
その一心で会社を立ち上げ、昼も夜もなく働き続けた。
創業から八年。
会社は業界でも注目されるIT企業へと成長し、ユウキの年収は一億円を超えた。
高級マンション。
高級車。
腕時計もスーツも一流ブランド。
それでも――。
「……恋人、できないんだよな」
友人からは「理想が高いんじゃない?」と言われる。
社員からは「社長は近寄りがたい」と言われる。
マッチングアプリを始めても、「本当に本人ですか?」と疑われて終わる。
「どうすれば自然な出会いがあるんだ……」
そんなある日。
会社の新規事業として、音楽イベントを開催する企画が持ち上がった。
若手アーティストやインディーズバンドを集める大型ライブイベント。
「面白そうだな」
市場調査も兼ねて、ユウキは都内の小さなライブハウスへ足を運ぶことにした。
◇
ライブハウスの照明が落ちる。
「次の出演は――五人組ガールズバンド『Luminous Five』です!」
歓声が上がる。
ステージへ現れた五人の少女たちは、決して有名ではない。
客席も百人に満たない。
それでも――。
ボーカルのアヤネが歌い始めた瞬間。
ユウキは息をのんだ。
透き通る歌声。
ギターのマアヤが華やかなリフを刻み、
ベースのイノリが楽曲を支え、
キーボードのアグリが幻想的な音色を重ね、
ドラムのミユキが力強く全体を引っ張る。
派手な演出はない。
だが、五人とも真剣だった。
汗を流しながら、全力で演奏している。
(……この子たち、売れてもおかしくない)
ライブが終わる頃には、ユウキはすっかり魅了されていた。
「決めた」
この五人を、自分が主催するイベントへ呼ぼう。
◇
楽屋口。
スタッフに名刺を渡し、代表者と話がしたいと伝える。
数分後。
五人がそろって姿を現した。
「本日はありがとうございました。」
最初に頭を下げたのはボーカルのアヤネだった。
「私は代表のアヤネです。」
「株式会社Bright Stage代表のユウキです。」
名刺を差し出す。
五人が顔を見合わせる。
「社長さん……?」
「今度、大型ライブイベントを企画しています。」
ユウキは企画書を取り出した。
「もしよければ出演しませんか?」
五人の目が丸くなる。
「ほ、本当ですか?」
「もちろん出演料もお支払いします。」
アヤネは驚きを隠せない。
マアヤは企画書を真剣に読み始め、
アグリは小さく「すごい……」とつぶやき、
ミユキは「こんなチャンス初めてかも!」と笑顔になる。
その中で、一人だけ。
ベース担当のイノリだけは静かに状況を見つめていた。
冷静で、落ち着いていて、慎重そうな性格。
ユウキはそんな彼女の様子が少し気になった。
「よければ、詳細について後日お話しできませんか?」
アヤネが笑顔で答える。
「ぜひお願いします!」
こうしてユウキと"Luminous Five"の縁が生まれた。
この出会いが、彼らの人生を大きく変えていくことになるとは、この時はまだ誰も知らなかった。




