第2期 第3話 それぞれの夢
「社長、こちらが今年の応募リストです。」
スタッフから受け取ったファイルは、昨年の倍以上の厚みがあった。
全国各地から寄せられた出演希望。
バンド、シンガーソングライター、ダンスボーカルユニット――。
「こんなに増えたんですね。」
ユウキは感慨深げにページをめくる。
「少しずつイベントが認知されてきた証拠です。」
スタッフの言葉に、ユウキは静かにうなずいた。
「期待してくれる人がいるなら、その期待に応えないとな。」
◇
その日の夕方。
Luminous Fiveは都内のライブハウスでライブを行っていた。
ユウキも仕事を終え、客席の後方から静かに見守る。
以前は数十人だった観客席も、今ではかなり埋まっている。
演奏が終わると、大きな拍手が会場を包んだ。
「ありがとうございました!」
アヤネが笑顔で手を振る。
ライブ終了後、楽屋へ顔を出すと、五人は充実した表情を浮かべていた。
「今日も盛り上がりましたね!」
ミユキが汗を拭きながら笑う。
「新曲の反応も良かったです。」
アグリもほっとした様子だ。
マアヤはギターケースを閉じながら言う。
「少しずつだけど、お客さんに名前を覚えてもらえてる気がします。」
ユウキは自然と笑みを浮かべた。
「努力はちゃんと届いているんだね。」
◇
ライブハウスを出ると、夜風が心地よかった。
「ユウキさん。」
イノリが隣に並ぶ。
「少しだけ歩きませんか?」
「もちろん。」
駅へ向かう道を二人でゆっくり歩く。
「最近、バンドのことで考える時間が増えました。」
イノリは夜空を見上げた。
「もっといい演奏をしたいとか、もっと多くの人に聴いてほしいとか。」
「夢が大きくなってきたんだね。」
「はい。」
少し照れながら笑う。
「でも、焦らず一歩ずつ進もうと思っています。」
「その考え方は大事だよ。」
ユウキは穏やかに答える。
「長く続けるには、無理をしすぎないことも必要だから。」
「ユウキさんは、会社を続けてきて一番大切だと思ったことは何ですか?」
少し考えた後、ユウキは答えた。
「信頼かな。」
「信頼?」
「社員や取引先、お客さん。どんな仕事も最後は人との信頼で成り立つ。」
イノリは静かにうなずく。
「バンドも同じですね。」
「五人がお互いを信じているから、あんな演奏ができる。」
その言葉に、イノリは少し照れたように笑った。
「そう言ってもらえると嬉しいです。」
◇
駅に着く直前、イノリが立ち止まる。
「そうだ。」
バッグから一枚のチラシを取り出した。
「来月、地域の音楽フェスに出演することが決まったんです。」
ユウキはチラシを受け取り、目を通す。
「おめでとう。」
「ありがとうございます。」
イノリの表情は明るかった。
「まだ昼の小さなステージですけど、こういう機会を一つずつ大切にしたいと思っています。」
「その積み重ねが、きっと次につながる。」
「はい。」
二人は笑顔でうなずき合う。
夢は、突然叶うものではない。
小さな一歩を積み重ね、その先に少しずつ近づいていくものだ。
ユウキも、Luminous Fiveも。
それぞれの夢を胸に、新しいステージへ向かって歩き続けるのだった。




