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頑ななレイブンフォーク

 霧に沈んだ廃城の中庭へと富士宮ひとみたちは降りて行った。途中から富士宮たちの存在に気づいたのだろう。レイブンフォークとネクロスは戦闘を一時的に中断し、こちらを窺うように闇から見つめてきている。


 両者の視線を感じながら、富士宮はレイブンフォークに向けて話しかける。


「近くの村で商隊の方々から事情を聞いてまいりました。あなたは冒険者のお仲間なのでしょう?よろしければ私たちと共闘いたしませんか?」


 中庭の石畳には、すでに三つの死体が転がっている。死体が身につけている腕章と胸鎧には銀色の剣のエンブレムが施されていた。独自の徽章を作る程度には名のある冒険者パーティなのだろう。村で騒いでいた商人の言葉どおり、A級冒険者たちと見てよさそうだった。有翼人の使用する短槍の柄にも同じエンブレムが彫られているところを見ると、あの死体たちと同じパーティの生き残りなのだろうと見てとれた。


 普通なら共闘の誘いに応じる場面と思えたのだが、レイブンフォークはなぜか警戒の色を強めた表情になる。まるでまずいものを見られたという顔だ。


 次の瞬間、短弓が引き絞られ矢が真っ直ぐに富士宮へ向けて飛んでくる。


 だがその矢は富士宮の顔へ届く直前、横から走った白光に弾かれた。甲高い金属音が鳴り、矢が石畳へ転がる。


 矢を叩き落としたアントニオがそのまま刀を軽く振って一歩前へ出る。口元には機嫌の悪そうな笑みが浮かんでいた。


「いきなり何してくれてんだぁ?」


 その声色だけで空気が軋むようだ。


「やんのかテメエ」


 ヴァルターは即座に槍を引き、ネクロスから少しだけ距離を取りながら視線をアントニオと富士宮へ切り替える。敵を増やしたくないのか、それとも腹を括ったのか、次の瞬間には聞いてもいない事情をべらべらと話し始めた。


「俺たちは確かにA級冒険者だが、商隊の護衛はついでだ。目的は最初からこの廃城のお宝だった。護衛依頼に乗ったのは同じ方向に向かう都合のよさそうな商人がいたからだ。ついでに金ももらえればと思ったが、あいつ意外とケチでな。さっさと依頼を切り上げたいと思っていた」


 馬鹿正直に告白を始めるレイブンフォークはなおも話を続ける。


「この廃城の近くまで来た時にアンデッドに襲われたんだ。目眩しをしてしまえば、さっさとおさらばできると思った。だから負けたふりをして商隊だけ逃がしたんだ。襲ってきたアンデッドをある程度倒せたから城の中に来てみれば、そこの化け物に襲われて俺以外はやられちまった。俺は隠れるのが得意だから夜まで待って、奇襲を仕掛けていたってわけさ。さぁ全部話したぜ、もうほっといてくれねえか」


 なるほど、と富士宮はひとまず納得する。経過として理屈だけは通っているし、嘘をついているようにも思えない。冒険者としてはどうかと思うが、まあ元々冒険者なんてそんなものかもしれない。


 ただしその判断は今の戦況を見る限り、どうやら失敗だったらしい。レイブンフォークのヴァルターはネクロスを単独で仕留めきれず防戦一方になっている。夜目と機動力を活かして何とか食らいついてはいるが、明らかに押されている様子だ。死体になったA級冒険者たちの姿を見ても、このローブのアンデッドがどれだけ危険かは一目瞭然だった。何よりその危険性は富士宮が一番よくわかっている。


 富士宮は努めて穏やかに声をかける。


「事情は理解いたしました。でしたらなおさら、ひとまずあのアンデッドを倒すために協力なさいませんか」


 だがヴァルターは、頑なに首を縦に振らなかった。


「断る」


 即答だった。


「邪魔をするなら、お前たちもあいつも全部片づけて、宝だけもらってトンズラさせてもらう。」


 富士宮は内心でため息をつく。


 あぁ、こいつも脳筋のバカか

 共闘できる見込みは薄いなあ

 なら、やり方を変えるだけだ

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