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聖女と魔王の邂逅②

 話を一通り終えたところで、富士宮は逆に問い返した。


「なぜ魔王様がこんな場所におられるのですか?」


 ヴィヴィアンはぴくりと眉を動かす。だが富士宮が自分の正体を見抜いたこと自体には特段驚いた様子を見せなかった。


 ああ、やっぱり感知できるんだ


 鑑定眼の発動は聖職者だけが察するものではないらしい。ヴィヴィアンはごく自然に答えた。


「その眼の起動は分かる。魔王領にも似た能力を持つ者はいる」


 なるほど

 思ってたよりいるな、鑑定眼持ち

 そりゃトップ層まで行けば被るよな


 富士宮は質問を重ねる。


「ここは魔王領の北辺にあるデミトリスより、さらに人族寄りの土地です。魔王領首都から見れば辺境中の辺境でしょう。国の頂点に立つ方が、お一人の部下だけを連れて来てよい場所には見えませんが」


 ヴィヴィアンは、その問いへ驚くほど素直に答えた。


「不死者の王が復活する予兆があったのだ」


 富士宮の思考が、その瞬間だけ止まる。


 不死者の王。王国へ残してきたブラヒム・ディアスの潜在取得可能ジョブと、まったく同じ名称。


 何でここでその名前が出てくる。


 ヴィヴィアンは富士宮の内心の動揺に気づいていないのか、そのまま続ける。


「この辺りの廃城には、かつて魔王の仇敵であった王族がいた。当時の魔王が、裁定者の力を借りてようやく討伐できたほどの強力な存在だ」


 裁定者、また知らない固有名詞が増えた。


 ヴィヴィアンは言う。


「その復活の予兆が占いで出た。だからお忍びで来てみた、というわけだ」


 そして少し間を置いてから平然と付け足す。


「ついでに前線も見て暇つぶしをしたかった」


 あ、そっちが本音か


 富士宮が内心でそう思ったのと、カイが露骨に肩を落としたのはほぼ同時だった。


「占いなんて、ほとんど当たらないんですから」


 カイは心底うんざりした顔で言う。


「調査ぐらい配下に任せてくださいよ。絶対、暇つぶしの方が本音じゃないですか」


 ヴィヴィアンは悪びれない。


「半分は本音だ」


「半分じゃなくて8割でしょう」


 このやり取りを見て、富士宮は少しだけカイに同情する。


 苦労人だ

 魔王が直情型で、しかも強すぎるタイプだと、側近はこうなるよね

 それでも離れないあたり忠臣なんだろうけど


 またヴィヴィアンの話を聞いた疑問も一気に湧き上がる。


 不死者の王とは何だ

 ブラヒムの潜在ジョブとどう繋がる

 裁定者とは何だ

 執政官と別の役職か、それとももっと根源的な何かか


 それでも富士宮は表面上の聖女らしさを崩さなかった。


「とても興味深いお話です」


 落ち着いた声音でそう言う。


「私としては、その不死者の王とやらについて、もう少し詳しく伺いたいところですが」


 ヴィヴィアンはそこで少しだけ目を細めた。魔王というより、若い王族らしい表情になる。


「それは構わん。だが先に村の始末をつけるべきだろう」


 言われてみればその通りだった。


 周囲にはまだ火の手が残っている。王国騎士の死体も、魔族商隊の残骸もそのままだ。村人たちは遠巻きにこちらを窺っており、今にも腰を抜かしそうな顔で魔王と聖女を見比べている。


 富士宮はそこで一度、小さく息を整えた。


 この出会いは偶然ではない。そう強く感じる。旅の途中で出会ったにしては、イベントの内容が濃すぎる。でもだからこそ、ここで得られる情報は大きいだろう。


 富士宮は、剣を肩に担いだヴィヴィアン・グルーガヴァイスと、疲れた顔のヴァンパイア光魔術師カイを見つめながら、この出会いが自分の行く先をさらに大きく変えるだろうと直感していた。


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