ふわふわワンコとふわふわパンケーキ
「それじゃ言って来るね」
私は少し寂しそうな顔をする愛犬に行って来ますと伝え家を出る。
もふもふとしている私の愛犬は玄関から移動すると外がよく見える窓辺に移動して私の姿を最後まで見送ってくれる。
家には母がいるので私が外出している時は任せているから安心だ。
家に戻れば愛犬は喜んで出迎えてくれて家中を駆け巡り、そして私は愛犬を思いっきり抱きしめてもふもふして顔を埋める。
お風呂もトイレにも着いてきてはドアの前で座り、出て来るまで待っていてくれる。
そんな愛犬も今は老犬になって眠ってる事が多くなり、お出迎えやお風呂まで着いてくる事も減ったが、私は変わらず顔を埋めてもふもふしている。
そんなある日、愛犬の体調が悪くなり病院へ連れて行くと一日検査入院する事になった。
愛犬のいない家は静かでいつも一緒にいたソファーの上などはガランと空いていて家が何倍も広く感じた。
「私の家ってこんなに広かったっけ?」
そう感じてしまう……。
翌日、病院へ迎えに行くとお医者さんから検査結果を聞く……。
「手術ですか!?」
検査の結果、手術が必要な病気が見つかり私は母と相談をする。
愛犬の歳を考えると手術に耐えられるかわからない……。
お医者さんと相談して、このまま家で家族に囲まれていた方が幸せかも知れないと言う話になり、連れて帰った。
それからは出来るだけ愛犬の側にいてあげ、そして……愛犬は虹の橋を渡った……。
私は涙が止まらなく、落ち込んだ……。
いなくなってわかる……もっと可愛がってあげればよかった……十倍……いや、百倍は遊んであげればよかった……後悔の念が立つ……。
この日から私は食事もあまり喉を通らず、ペットロスになっていた……。
母が心配になり病院にも行く事になるが、精神的な事のためによくなる事はない……。
仕事も続かなくなり、退職してしまう。
ある日、愛犬の幻覚を見た。
だいぶ精神的に来ているのだとその時は考えなかったが、私はその愛犬の後を追うようにして外へと向かう。
愛犬の幻覚は何故か一軒のカフェへと入って行く。
つられて私も中へと入る。
「いらっしゃいませ〜」
そこはコーヒーの匂いに包まれたおしゃれなカフェ。
なんでこんな所に……?
直ぐにお店を出ようとすると、カフェのマスターに止められた。
「お客様、お待ちくださいませ。 せっかくいらっしゃったのだからコーヒーを一杯どうですか?」
「え、でも……」
私は愛犬の幻を追ってここまで来ただけなので、コーヒーを飲むつもりは無い。
「どうやら酷くお疲れのご様子。 一杯のコーヒーでも落ち着きますよ」
「そ、それじゃ……一杯だけ……」
「ありがとうございます。 少々お待ちください」
マスターはコーヒーを作り始めたけど、私は愛犬の幻が何処かにいないかとキョロキョロしてしまう。
「誰かお探しですか?」
「え? い、いえ……すいません……」
可愛い店員さんにキョロキョロしているのがバレて声をかけられた。
「かまいませんよ。 ここに来る方は誰もが何かを探していますから……」
「そ、そうですか……」
変に思われたのだろうか?
「お待たせいたしました」
差し出されたコーヒーには優しい香りとが立ち込める。
「これは?」
「浅煎りした豆で抽出したコーヒーです。 少し酸味がありますが美味しいですよ」
コーヒーの知識はほとんど無いので、香りがいいからと一口飲んでみた。
「……おいし……」
少し酸っぱい……けれどどこかフルーツを感じる優しい甘さがある。
マスターは笑顔で別の準備を始めた。
「お客様、よろしければこちらもおすすめですよ」
店員さんが進めてくれたのはパンケーキだった。
「このコーヒーと合うんですよ! ふわふわで美味しいですよ〜」
「じゃ、じゃあそのパンケーキも……」
店員に押し切られて注文してしまった……。
すると直ぐに甘い匂いかわ漂ってくる。
「いい匂い……少し芳ばしく甘い香り……」
頼んだパンケーキは二枚、お皿のには他にフルーツも乗り、パンケーキにはチョコソースと粉砂糖がかかっている。
ナイフで一口に切ってフォークで口に運ぶ……。
「美味しい……」
最近食欲も無かったのだけど……このパンケーキはもちっと食感も良く、芳ばしい匂いが……。
私の瞳から涙が流れ出した……。
「大丈夫ですか?」
「ええ……大丈夫です……」
店員さんに心配されてしまうも、私も何故涙が流れ出したのか自分でもわからない。
涙を拭いてコーヒーとパンケーキのマリアージュを楽しむ。
「ごちそうさまでした……美味しかったです」
「ありがとうございます。 少しは落ち着いたようですね」
「はい……また来ます」
「その時は別の料理をご用意しておきます」
久しぶりにお腹も膨れ、家に帰って今日はグッスリと眠る事が出来た。
ペロ……。
「ん……」
ペロ……。
「ん……今日も早いわね……、……え!?」
ガバッと起き上がると、ベッドの上には亡くなったはずの愛犬がハッハッハッと舌を出して起こしに来ていた。
「うそ……」
私はゆっくりと愛犬に手を伸ばし頭を撫でる。
そして思いっきり抱きしめた。
愛犬の体温、もふもふの毛並み、愛犬の匂い……全てが本物だ!
私は夢でもいいから愛犬を抱きしめ続けた。
お母さんに愛犬が生きてたと言うと「夢でも見たんじゃ無いの?」 とお母さんは愛犬が亡くなったとは思っていない。
この日、私は愛犬と一緒に一日中過ごした。
散歩も一緒に行き、愛犬がご飯中もずっと見ていた。
愛犬が眠ると私も抱きしめて眠る……。
そう、愛犬は生きている……亡くなったなんて嘘だったのよ……。
その日の夜、愛犬を私のベッドまで連れて来て一緒に眠ろうと愛犬を抱きしめた。
「ねえ、起きて……」
「ん? 誰?」
「僕だよ」
「え!?」
愛犬は私のベッドに座って私に話しかけて来た。
「僕は君の願いで少しだけ話す時間をもらったんだ……」
「話す時間をもらった?」
愛犬の体はキラキラと輝いている。
「僕は君と出会って幸せだったよ……だから泣いたりなんてしないで……君が泣いてると心配で離れられないよ」
「え? だって……さっきまで一緒に……」
「僕はね、天寿を全う出来たんだ……君との思い出を胸に眠りにつく事が出来たんだけど……君の事があまりに心配で彼の力を借りて起きて来たんだよ」
「それじゃ……これは夢なの!?」
「そうだよ……だけど、また一緒に遊べて僕は嬉しかった」
「そんな……それじゃ……起きたらまた……」
「僕は虹の橋を渡るつもりさ。 その先で君が天寿を全うして来るのを待ってるからさ」
「いやだ! いやだよ! せっかく……」
「君がそれだと僕は心配で虹の橋を渡れない。 渡れないと君と出会う事が出来なくなってしまうんだ……」
「そんな……」
「だから君がこれから先、幸せに生きて僕と同じ場所に来てくれるのを待ってる」
「え!?」
「ちゃんと幸せになってよ。 じゃないと僕と同じ場所に来れなくなっちゃうから……僕は虹の橋の先で待ってる」
「……うん……」
「よかった……これで安心して虹の橋を渡れるよ。 僕は君が来るまで一緒に過ごした思い出で過ごすよ。 今まで僕と一緒にいてくれてありがとう」
愛犬は段々と消えて行く。
「ねえ! 最後に教えて! 私といて幸せだった?」
愛犬は目を細めて口角を上げて笑って、コクンと頷いて消えて行った……。
次の日、目が覚めた私の手には愛犬が亡くなった時に少しだけもらった体毛を入れたお守りを握りしめていた……。
「お母さんおはよう」
私はお母さんに元気に挨拶をする。
そして愛犬に出会うためにもう一度頑張ろうと、新しい仕事を探し始めた。
読んで頂きありがとうございます。
不定期連載ですが頑張って書いていきますので、モチベを上げてあげようと思っていただけるようでしたらブクマや★評価をつけていただけますと作者が喜んで踊りながら遅い執筆も早くなると思いますので、どうぞよろしくお願いします。




