鳥を墜とす
どうも、作者です。九十七話です。
「もうちょい優しく運んでもいいんじゃぞ」
「泉さんありがとうございます」
クランはエフィと違って気遣いが足りないな。先に感謝をするべきだぞ、他の人間にそれやったら好感度が下がる。
(お前じゃなければこんな言い方せんわい)
(そうしろ)
「あと足場は一つだな。さて、次は……」
でかい鳥だ。翼を広げれば俺二人分くらいはすっぽり収まりそうだ。ミノタウロス、ゴーレムと来て、今度は怪鳥か。空を飛んでいるのは、骨が折れるな。
何より、あっちは氷結フィールドの影響を受けないのは厄介だな。
「それにしてもあの鳥、どうして他の魔獣と一緒に襲わなかったんじゃ?」
確かに、空を飛べるなら、特に障害物がない空間なのだから、移動しようとすればできたはずだ。それなら、他の魔獣と連携して俺たちを倒すことだってできただろう。
「恐らく、先ほどの魔獣二匹を見る限り、私たちが足場に着くまでは動けないようですね」
なるほど、そう言えばあのミノタウロスもゴーレムも俺たちが足場に降り立つまで攻撃してくることはなかった。だからミノタウロスには速攻で倒せたし、あのゴーレムにもミサイルを先制で撃たれなかった。
そう考えると、この魔獣たちは一種の門番という訳か。
(ただの門番ならいいんじゃがの)
? まぁ、厄介な魔獣ではあるか。特にあの鳥はかなり厄介そうだ。
「それで、今度はどう攻略する?」
「空を飛ばれるとなると……手段は二つ。魔法でつぶすか、泉さんの『魔鎖』で引きずり落とすかですね」
ヒビキさんが提案したの二つ。俺は魔法の方しか思い浮かばなかったが、そうか、俺の『魔鎖』で落とすという手もあるか。
魔法にしろ、『魔鎖』で落とすにしろ、結局当てなきゃいけないのは変わらないか。
だが、そこら辺の作戦は俺はあまり造詣が深くないからな。そこはヒビキさんとハイカさんに任せるしかないな。
「……そうですね。今度は私と泉さんで倒しましょう。他は先ほどと同じでいいでしょう。ただ、エフィさん――」
――エフィがハイカさんの指示にうなずき、作戦も決まる。あとはハイカさんの指示通りに動くだけだ。今回もタイムアタックなのは変わりない。出来るだけ速攻で、ハイカさんに倒してもらう。
俺たちは階段を降りていき、足場にたどり着く。それと同時に怪鳥は動き出す。さぁ、作戦開始だ。
降りてすぐ、一番最初に動いたのはエフィの魔法だった。あらかじめ完成させておいた魔法を放つ。炎の魔法ではなく、
『剛石乱槍』
土の魔法によって地面から大量の石の槍が飛び出してくる。怪鳥はそれに気づき一瞬で空に飛びたつ。やっぱりそうなるか。
しかし、アイスハンドによる凍結は随分と遅れるはずだ。そして何より、空への足掛かりになる。俺とハイカさんは、唯一槍が出ていない平らな地面を突き進んでいく。
怪鳥に近づく。しかし、いくら近づいたところで上にいる以上なかなか届かないが、
『我が剣に、水の力を』
『水刃』
石の槍を登りながらハイカさんが水の刃を飛ばす。怪鳥はそれを避けながら、羽を飛ばしてくる。それは俺が盾で防ぐ。
(ふむ、今度はお前たちを狙っているようじゃのう)
そうらしい、あまりエフィには近づかないな。多分エフィの魔法を警戒しているんだろう。エフィの魔法ならある程度の距離まで近づけられれば確実に当てるだろうし。
そういう意味ではハイカさんを狙うのが一番いいかもしれない。俺の盾も全方位守るのは骨が折れるしな。
空を飛ばれるのは厄介だが、うん、思った以上にやれそうだな。何より、あれなら設置魔法を使えば確実に……
「泉さん、設置魔法は使わないでください。念のためです」
「? 了解」
俺が使うのを察知したハイカさんがそう言う。意図は分からないが、ハイカさんがそう言うなら従うか。まぁ、無くても何とかなるだろう。
それにしても石の槍、かなり効果があるな。俺とハイカさんなら石の槍を次から次へと飛び移れるし、何より表面積が増えたのがでかい。氷結する速度が遅れている。その間にヒビキさんとアメイが撃退できる。思った以上に時間制限はありそうだ。
「ですが、思った以上にすばやいですね……攻撃は逆に単調ですが」
確かに、攻撃は大したことがない。直接攻撃はどうかわからないが、どうも空の優位を手放す気はないらしい。
「泉さんプランBです」
「了解」
作戦変更、こっちは時間がかかりそうだったからサブプランだったが、アメイたちのおかげで時間はありそうだし、どうにかなるだろう。
『撃て』
『魔弾』
ハイカさんはより短い詠唱の『魔弾』で怪鳥を攻撃する。羽狙いで墜落狙いだが、やはり魔法は高速で連射できないのが厄介だな。だが、これでいい。
怪鳥はこちらの攻撃を避けながら、アメイやヒビキさんにも攻撃を放つ。しかし、二人も簡単に避ける。やっぱり思った以上に攻撃が単調だな。
それに、ヒビキさんも『魔弾』は装備している。それで反撃はできるし、誘導にも一役買ってくれるだろう。
『――石弾』
余裕ができたエフィが『石弾』をヒビキさんのマーカーを元に敵の上に放つ。そうすれば、怪鳥は必然、高度を下げる。そういえば、あの時の前のダンジョンでもこんな手を使ったな。
「泉さん、今です」
『縛れ』
『魔鎖』
鎖を飛ばす。敵はそれを避けようとするが、ハイカさんとヒビキさんの『魔弾』がそれを阻む。完全に誘導はうまくいったようで、簡単に『魔鎖』は怪鳥の足を巻き付く。
あとは、こいつを引っ張るだけ。よし、ちゃんと『盾持ち』は効いてそうだ。多分数百キロはあるんだろうが、この程度なら引っ張れる。
俺は全力で引っ張り、怪鳥も抵抗しようとするが、そこは空のデメリットだ。掴むところなどどこにもない。『魔鎖』をちぎる方を優先するべきだったな。
怪鳥は地面近くまで引きずり落とす。この距離まで行けば、もうハイカさんの間合いだ。この距離ならハイカさんが負けるわけがない。
「――討伐完了です」
そんなことを思っている間にハイカさんはいつの間にか首を切っていた。ならさっさと退散するだけだな。
俺は後ろに下がって相変わらず足が遅いクランとエフィを抱え、即座に進む。さて、これで四層攻略完了。残りは、五層のみ。
――階段に到着する。タイムアタックになってしまったせいで、四層はほとんど一時間程度で攻略したわけだが。
「今日は流石に休むか? 戦った時間は少ないけど、エフィは大分魔法は使ったし……」
「えと、あまり魔力は減ってないので一応いけます!」
やる気もすごいし、それ以上にエフィの魔力量がすごい。あれだけ大胆に広範囲魔法を使っておいて、魔力切れする様子すらない。昨日も半分くらいしか使ってなかったようだしな。
「わし的には、すぐに戦った方が良いと思う」
「私も賛成です」
ハイカさんとクランはどうもすぐに戦う方がいいらしい。さっきの、ハイカさんの指示といい、二人は何かに気づいているらしい。
「俺は流石に休んだ方がいいと思うが……」
俺としても体力に余裕があるとはいえ、万全な状態で戦った方がいいとは思うが……俺たちはヒビキさんを見る。こういう時は、ヒビキさんの判断に任せるほかない。
「……そうですね。私もクランさんに賛成です。とはいえ、すぐに戦うのは息が切れると思うので、二時間ほど休憩しましょう」
俺たちはうなずく。ヒビキさんがそう判断するなら、俺たちは従うまでだ。あんまり俺、団長らしくないな。
(貴様は背中で示せ、背中で)
そうだな、俺は守るぐらいでしか示せない。とりあえず、今はきっかり休憩しよう。
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