ダンジョンタイムアタック
どうも、作者です。九十六話です。
さて、次の足場、この場合ステージと言い換えた方がいいだろうか。そこにもやはり、魔獣が待ち構えている。今度の相手は、大型のゴーレムだ。遠目から見ても俺の倍くらいありそうだ。
あのでかいゴーレムを流石に一撃で壊すのは流石に厳しそうだ。そうなれば、あのアイスハンドによる地面凍結と、落ちたら終わりの足場で戦わなくちゃいけないのか。
「こ、これ、ゴーレムの攻撃で足場壊れませんか?」
さっきまで奮起していたエフィが、流石におびえた顔になっている。あの巨体の一撃が重くないわけがない。俺も流石に怖い。
「ダンジョン次第になるので絶対とは言いませんが……経験則的に大丈夫だと思います。特にこういう物理法則を無視した地形は」
確かに、足場の下に柱らしきものもないのに、この場所は特に崩れそうな様子もない。それに、こういう時ハイカさんからお墨付きがもらえるのはありがたいな。
「さて、あのゴーレム、どう倒すかの?」
恐らく、先ほどと地形などのギミックは変わらない。さっきのミノタウロスは何が起こるか分からなかったから、対策をたてなかったが、今度は何が起こるかが分かっている。なら、ここで作戦会議をするのはありだろう。
「今度はゴーレムですか……なら」
「まぁ、クランに任せるのがいいだろうな」
アメイの言う通り、ああいう斬撃が効きづらそうな敵は、打撃武器と相場が決まっているからな。となると、俺が近づいて『交換』するのが手っ取り早そうだ。
(とはいえ、あのゴーレム自体に何があるかわからんからのう)
問題はそこだな。中ボス格である以上、何も持っていないとは言えない……さっきのミノタウロスも何かあったんだろうか、ちょっと不憫に思えてきた。
とはいえ、クランの『魔獣破砕』込みの一撃だったら、相当なダメージになるはずだ。出来るだけ速攻で終わらせたいところだが。
「あのアイスハンドたちはどうする?」
「そこはエフィさんの炎魔法で相殺します」
そうか、凍らせられるなら溶かせばいいのか。事前に詠唱しておけば、階段に降りてすぐに放てばある程度は相殺できるはずだ。
「アイスハンドの凍結の速度が恐らく早いので、凍結しきるまでの間に倒せるのが理想ですね。出来るだけ遅らせるために私とアメイさんでアイスハンドの対処はしますが……正直、あまり時間稼ぎにならないと思います」
つまりはタイムアタックだ。あのゴーレムをクラン主体でできるだけ早く討伐する必要があるわけだ。まぁ、クランにすべてがかかっている。
(お前は半身じゃから、責任の半分はお前にあるわい!)
(仕方ないな。二割くらいは背負ってやるから、全力でつぶしにかかれ)
クランは何も言わずにうなずく。
「とりあえず、了解したのじゃ。殴るのは、癒すのの次に得意じゃ!」
癒し手がそれでいいのかと思うが、まぁここは任せるしかないな。
「それじゃ、行くぞ」
俺たちは階段を降りながら、各々詠唱を始める。クランは『魔獣破砕』、アメイは『火炎嵐』、ヒビキさんは『攻撃指令』をそれぞれ詠唱しながら階段を降り、最後にエフィの詠唱が完成する。
そして、階段を降り切った瞬間、やはりアイスハンドが地面から大量に生えてくる。そして、地面を凍結し始める。
『――火炎嵐』
それを、完成した魔法で打ち消す。さぁ、タイムアタックだ。俺は全力で突進し、ゴーレムに近づく。ゴーレムは腕を振り上げる――それだけじゃない!
ゴーレムの肩から何かが飛び出してくる。それは岩の柱のようなもので、そこから火が噴き出してどこかに飛んでいく。これミサイルか! クラン!
(わかっておるわい!)
『『交換!!』』
俺は後ろにいたクランと位置を入れ替え、恐らくエフィめがけて飛んできたミサイルを盾でガードする。ミサイルは盾とぶつかり砕ける。それによって衝撃と共に礫が四散するが、その程度では、この盾は貫通できない。
「ありがとうございます! 続けます!」
エフィはミサイルに怖気づくことなく炎魔法を放ち続ける。昨日同様余裕はあまりなさそうだが、しかし昨日より気迫があるし、魔法の詠唱に迷いがない。
さて、後はクランの方だが、あっちは二人に任せるか。エフィの防御に専念しよう。
――目の前には、無駄にでかいゴーレム。肩から”みさいる”なるものを飛ばしてきたのは驚いたが、近距離攻撃は特別なものはなさそうじゃの。
わしは敵の攻撃を避けながらそう考える。しかし、それでも当たれば致命傷だ。
(相当やばい場合以外は『交換』なしでいくぞ)
分かっておるわい。わしはそう思いながら、『魔獣破砕』を付与したその槌を、相手の右足に振るう。その一撃によってゴーレムの右足は砕かれ、ゴーレムはバランスを崩す。
それでも、拳は振るってくるあたり殺意が高いなこいつ。しかも、ミサイルをまだ撃ち続けている。ミサイルは、どうもずっとエフィに向かって飛んでいっているようで、これは急いだほうが良さそうじゃの。まぁ、泉がおるから大丈夫か。
(急いでくれ)
そうしてやろう。わしは次の一撃を構えるが、ゴーレムは片方の腕で体を起き上がらせ、わしにもう片方の腕を突き付けてくる。しかし、構いはしない。
当てれば終わり。わしの耐久力では確実にその一撃で死ぬじゃろう。こういう時、人に命を預けるのは辛いのう。まぁ、ハイカ殿なら、信用しかできんが。
わしに飛んでくる拳は、しかして到達することはない。ハイカ殿が腕の関節のようなところに一閃。一瞬で切り落とす。これ、わしじゃなくてもよかったのではと一瞬よぎったが、まぁ頭周りは太い。砕いた方が早いか。
切り落とされた腕に構わず。わしは倒れこむゴーレムにその槌を合わせる。あとは、思いっきり槌を振り落とすだけ。
わしは構えを解かず、ゴーレムを見る。数秒、ゴーレムは動かず、そして何かをする様子もない。つまり、
「――討伐、完了じゃ……急いで階段に向かうぞ!」
わしは急いで階段に向かうが、ハイカ殿にぐんぐんと突き放される。速度の差がすさまじい。外縁からアイスハンドを倒しながら進んでいるヒビキ殿とアメイにも抜かされる。このままでは置いていかれ、わしだけ無限にアイスハンドに絡みつかれそうだ。
(というわけで、運べ)
(すまんが、肩は満員だ。ということで抱えるぞ)
後ろから走ってきた泉にわしは小脇に抱えられ、すさまじい速度でこの”すてーじ”から降りていく。とりあえず、二体目討伐完了じゃ。残りは後一体、そいつもさっさと倒すとするかの。
それにしても、アイスハンドといい、あのゴーレムといい……いや、”答え合わせ”はもうすぐじゃの。
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