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三月羅針譚~盾持ちと吸血鬼~  作者: FOXtale
悠久忘れぬ■■の景色
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四層

どうも、作者です。九十五話です。

俺が起きると、いつの間にかみんな身支度をしていた。今日は俺が一番起きるのが遅かったらしい。


(すまん、準備急いだほうがいいか?)


(無理に焦る必要はないわい)


クランがそう言うなら大丈夫だろう。いつも通りの感じで……クランの感情が、いつもより何だか嬉しそうだ。


(何かあったか?)


(まぁの。お前は気にせんでええわい)


そう言われると気になるが……とりあえず準備を済ませてからだな。



――準備を終えて、朝飯を食べながら、今日の会議を始める。実はここから先、何層あるかわかっていない。ギルドが行っていた調査では、この三層までしか調査されていなかった。


そもそも、ギルドの調査記録にはあのサメ型の魔獣の記録も載っていなかったから、元々かなり調査時より変化しているようだが。


「さて、実は先ほどハイカさんに階段を下りていただきました」


俺が起きる前に、そんなことがあったらしい。まぁ、ハイカさんなら階段を下りて少し調査するくらいなら造作もないか。


「その結果ですが、残り階層がわかりました」


「どういうこった? 階段降りただけで分かるものじゃねぇだろ」


アメイの言う通りだな。普通はわかるものではない。基本ダンジョンは迷路の構造になっており、全体を見渡せる構造になっていない。


「それに関しては、実際に降りてもらった方が早いです。とにかく、私が見た限りでは、残りは二層。それも、早ければ今日には攻略できるかと」


その言葉に、俺たちは驚く。ダンジョンは基本一層を攻略するだけでもかなり時間がかかる。そもそも、二、三層を昨日の一日で攻略したのもかなりハイペースと言っていい。


それを、二層分を今日も一日で攻略できるとは、どういう構造なんだろうか。そして、今日攻略するということは、


「ダンジョンの主まで、倒しきるということじゃな」


そういうことになる。ダンジョンのボス。正直、前の時は死にかけたから、苦い思い出しかないが、ダンジョンを攻略する以上、ボスの討伐は絶対条件だ。


「そういうことになります。ですが、四層も少々厄介な可能性が高いので、体力次第では明日に回すことになります」


なるほど、なら、余計気を引き締めなきゃならないな。とりあえず、今日の基本目標は、四層の攻略だ。


「それじゃあ、今日も、頑張ろうか」


一応、俺がそう締めくくると、全員うなずいてくれる。俺が皆の顔を見回すと、二人ほど、昨日と顔つきが違う。


(……アメイとエフィ、何か迷いが無くなったか?)


昨日まであった迷いのようなものが無くなっている気がする。何というか、何か覚悟を決めたような感じだ。


(さぁの。何かあったんじゃろ)


クランがうれしそうだったのは、それが理由だったのだろうか。そういえば、昨日俺がヒビキさんと話してたら、少し共有をこいつが切ったときがあったな。その時、アメイと何か話していたようだし、やはり何かあったんだろう。


はぁ、この感じじゃ教えてくれなさそうだし、とりあえず進むか。




――俺たちは階段を降りていく。ハイカさんに聞いた通りに長い。そのため、その間に少しだけステータスを開くと、そこにはLv.51の文字があった。


「やっと1レベル上がったな」


二層攻略前に確認したが、その時は1レベルも上がっていなかった。というか、ここ二週間ほど一切レベルが上がらなかった。50以降は相当経験値がいるのだろうか。


「やっぱり先に”壁”超えられたか」


「壁?」


そう言ったのはアメイだった。”壁”とは一体なんだろうか。


「Lv.51は一つの壁なんだ。そこを超えるのは、今まで通りのやり方じゃダメでね。簡単な話、何らかの条件を越える必要がある。自分よりレベルが高い特殊個体を倒す、とかな」


なるほど、俺とクランはあのサメを倒したからレベルが上がったのか。とはいえ、だからといって大幅にステータスが上がるわけじゃないんだな。何とも世知辛い。


(まぁ、一種の”箔”みたいなものじゃな)


そうか、逆を言えば、レベルが50を超えている人間は何かしらの試練を越えた人間なのか。一種の分かりやすい指標だな。


そんなことを話していると、階段の終わりにたどり着く。いや、厳密には階段は螺旋階段から、普通の階段に変わっただけなのだが、ハイカさんが言った意味が分かる。


「何じゃこの構造」


四層、いや厳密には四層と言っていいか微妙だが、階段の隣は完全に足場がなく、下には青白い光が広がる底が見える。


そして、階段の先には、円形の足場が広がっている。そこで魔獣が待ち構えている。そして、そんな構造が三つ連なり、その先には下へと向かう階段と、階段の降りた先、つまり五層が広がっていた。


簡単に言えば、落ちたら終わりの闘技場が三連戦、といった感じだろうか。


「よく見たら、他にも五層に進む道が見えるな」


確かに、今目の前に広がっている構造が、右側と左側にも見える。恐らく、反対側にもあるのだろう。ということは、三層から四層に向かう道は四か所あったわけだ。


それにしても、明らかに一層や二層のころより狭くなっているな。所謂円錐型の形になっているのか。よくこんな構造で崩れないな。


「これ、落ちたらどうなるんだ?」


「恐らく、”飛ばされ”ますね。ここじゃないこの世界にどこかに」


「つまり、”転移”ですね。そもそも、ダンジョンは異空間です。空間そのものが歪んでいるので、あんな風に、世界を出鱈目につなげる空間が出来たりするんです」


ランダム転移、最悪上空や、海の上なんかにも転移する可能性があるということか。どこに跳ぶかわからない以上、落ちたらほとんど終わりだな。即死しないだけましだが。


というかエフィ、詳しいな。”異空間”、そう言われると納得する。ダンジョンの中と外で明らかにかみ合っていないとは思っていたが、そもそも、入口でつながっているだけで別の空間という訳だ。


「ま、とにかく落ちないようにだけ注意じゃな」


「あと、厄介の意味が分かったわ」


円形の地形とそこに潜む、大型の魔獣。この感じ、簡単に言えば”中ボスラッシュ”だ。そこを通らなければいけない上、先に通じる階段には魔法の壁のようなものが形成されている。


つまり、どう足掻いてもあの魔獣を倒さなければ先へ進めない構造になっているのだろう。


「とりあえず、行きましょうか」


ヒビキさんが俺たちにバフをかけた後、俺たちは階段を降りていく。魔獣が見えている以上、アメイを先頭にしても仕方ないということで、ハイカさんが一番前にいる。


魔獣は一匹だけ。その魔獣の名は、俺でもわかる。”ミノタウロス”、ダンジョンと言えば、やはりあの魔獣だろう。その危険度はA最上位。一切油断できない相手、だが、こちらは六人、あっちは一匹、普通にやれば苦戦はしない。


本当に一匹だけならば、だが。俺たちがその足場に降りた、瞬間、その”腕”たちは現れる。しかし、今度は……


「――泉さん! 速攻です!」


「!」


俺に号令をかけたのは、ハイカさん。俺は考えるより先に、足を動かし、魔獣の元まで全速力で向かう。


そうしている間に、かなりの速度で、”腕”から漏れ出る冷気で地面が凍りつく。つまり、地面が凍り切る前に、速攻を仕掛ける……!


俺は盾を構え、ミノタウロスが振り下ろす剣を受け止める。


変形(チェンジャー)


(泉! 今じゃ!)


俺はクランの合図とともに、横にスライドする。それと同時に、隣からハイカさんが現れ、その”巨剣”を振り上げる。たったの一撃でミノタウロスの最も柔らかい首筋を切り落とし、それきりミノタウロスはは沈黙する。


ハイカさんの剣、先ほどまではハイカさんの身体に見合った大きさだったものが、いつの間にか巨大な剣に変わっている。厳密には、鎧を着ていたレイドさんの体格に合わせたものだろうが。


あの特注の剣には、『変形』機能があるとは聞いていたが、本当だったんだな。


「皆さん急いでください!」


全員全速力で次の足場までの階段に向かう。『交換』も駆使し、”腕”に邪魔される前に何とかたどり着く。


「今度は”アイスハンド”ですか」


「落ちたら終わりの足場で、滑りやすくする凍結とか、性質が悪いな」


アイスハンドと中ボス。なんとも、厄介な組み合わせだ。あと二戦、本当に大丈夫だろうか。

読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。

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