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三月羅針譚~盾持ちと吸血鬼~  作者: FOXtale
悠久忘れぬ■■の景色
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凡人

どうも、作者です。九十二話です。

泉が魔獣を投げ飛ばす。あの魔獣は、泉とクランに任せるしかない。こっちはこっちでマドハンドと、通路から次々と襲い掛かる魔獣をつぶすだけだ。


とはいえ、マドハンドは俺では一切探知ができない。というより、完全に土の中に潜られては、確認もくそもないのだ。しかも、土から現れる際、一切音がしない。これじゃ五感を利用した探知など不可能だ。


しかし、”五感”を利用しない探知なら、あの魔獣たちを探ることが可能だ。そう、ヒビキさんなら。


「……アメイ、左です!」


ヒビキさんが示した方向にマーカーが現れ、それを後追いするようにマドハンドが現れる。俺はそれに攻撃し撃破する。


「この感じでお願いします!」


ヒビキさんは次から次へとマーカーを出していき、俺はそのマーカーの位置から這い出てくる魔獣を攻撃する。


まるで、ヒビキさんは敵の位置が分かっているようだ。いや、実際に分かっているのだ。ヒビキさんは、それができる。


「エフィ、詠唱を止めるなよ!」


「は、はい!」


エフィの詠唱さえ完成すれば、通路の魔獣はつぶせるはずだ。それまで、マドハンドの処理をするしかない。


『天焦がす炎よ――』


さっき魔獣に邪魔された詠唱をエフィは再度詠唱を始める。通路はハイカが抑えている、問題があるとすれば、


「ハイカさん、上からラヴァハンド!」


「!」


ハイカは上から溶岩を落としてくる攻撃を避けつつ、通路から来る魔獣も通さないように攻撃する。


『撃て』

魔弾(バレット)


ラヴァハンドは土の中に潜る前にヒビキさんの『魔弾』によって撃ち落される。やっぱりあのラヴァハンド厄介だな!


だが、今の俺にあれを対処する手段はない、俺もあんな感じ上に手でも出せれば楽なんだがな。そういうわけにもいかない。どうにかして処理するしかない。


それにしても、あの二人がいないとやはりやりづらい。いなくなると途端に、敵の厄介度が増す。あいつらがいるだけで防御と回復を何も考えないでいいのだ。


『――獣どもを燃やし尽くせ』


エフィの詠唱が完成する。


「ハイカ!」


「! 了解です!」


ハイカは通路を空ける。あとは、エフィ次第だ。


火炎嵐(ファイヤーストーム)


通路に向かって炎がなだれ込み、通路にいる魔獣を炎が飲み込んでいく。これで、一掃されはずだ。


やはり、エフィの魔法の精度は怖ろしい。部屋の中には一切炎をまき散らさず、それでいて部屋から続く通路には満遍なく炎をいきわたらせていく。


そこらのキャスターではここまでうまく魔法を操れないだろう。魔王というのは、やはりすさまじいな。本人は一切自覚してないようだが、このチームの要はまず間違いなくこいつだ。


まぁ、本人に言っても謙遜して、”いえいえ、おだてても何も出ませんよ……”という感じで流されてしまうので本人には言わないが……。あいつの自信のなさは、一体何なんだ、一回、クランあたりに聞いた方がいいかもな。


「――すまぬ! ちと遅れた!」


クランの声が聞こえる。どうやらあの魔獣を倒したらしい。あの魔獣を探知なしで倒すなんて、こいつらも中々おかしいな。


「あのサメ、また現れないだろうな」


そう言いながら泉も階段から降りてくる。


「流石にもういないと思います……あれは確実に特殊個体ですね」


「ですね。あの魔獣が簡単に現れるのなら、もっとダンジョンの攻略難易度は高く設定されているはずですし、わざわざ単独で襲い掛かってきたのも、二体以上いない証左です」


ヒビキさんとハイカの言う通りだな。あんな動きができて知能がある魔獣がわざわざ単独で動くより、他の魔獣や同種と動けば俺たち一人二人は、確実に狩れたはずだ。


それに、強すぎる。場合によっちゃ、難易度の低いダンジョンのボスになっていてもおかしくない強さだった。あれがぽんぽんと現れたら流石にやばい。


まぁ……知能の高さで言うなら、いつの間にか現れなくなったあの”腕共”もそうだが……まぁ進んでいけばわかる話だな。


「それで……ヒビキさん、”道”はもうわかってんだろ?」


「……そうですね」


やっぱり、もうそこまでしてくれたか。このダンジョンは思ったより危ない。多分、出し惜しみをしている余裕はない。ヒビキさんにも、”本気”を出してもらわなきゃいけない。


「? どういうことだ?」


「あ、ヒ、ヒビキさんなら確かにできるかもしれないですね」


「……スキル、と考えていいですか?」


ハイカも気づいたらしいが、ヒビキさんにはそういう”力”がある。ヒビキさんがその気になれば、道の探索も、索敵も、トラップの発見も、あの人一人でできてしまう。それが、できてしまう人だ。


「……なるほどのう。まぁ良いわ」


クランは俺の顔を見て、何かを納得したらしい。やっぱこいつ、何にも考えてないようで意外に考えてるよな。


こういう時、案外に鈍いのは相方の方だな。わりと何もわかってない顔をしている。まぁ、異世界人だし、知識がないのもあるし、仕方ないと言えば仕方ないな。


「とりあえず、もう下の層に行くルートが分かったのか?」


あんまりわかってなさそうな泉は、要点だけ言ってまとめてくれる。それで合ってる。


「とはいえ、下層までの道はかなり長いので、道中警戒しながら歩いていきましょう」


とはいえ、多分一番厄介であろう魔獣を討伐したからここからは、宝箱を見つけつつ下層に行くだけだ。



「――クラン、マーカーの位置にマドハンドが現れるのでそこを迎撃してください」


「了解したのじゃ!」


道中、あれだけ厄介だったマドハンド達に一切苦戦することなくヒビキさんのマーカーを頼りに倒せるようになった。


ヒビキさんの『振動感知』。物体に震動を送り、それをもとに物体の位置を特定するスキル。その感知範囲は振動が続く限り全体であり、言ってしまえば地面が続く限り、無限に位置を探れる。本人曰く、脳処理の限界はあるらしいが、少なくともこの階層程度であれば軽く全域を探れてしまう。


実際、地面に潜っているマドハンド達を一切見逃すことなく探知し、マーカーをつけ続けている。まさしく、無法の”力”である。


クランと泉の”魂の共有”もそうだがどいつもこいつもやばい力がありすぎる。もうちょい手加減してほしい。凡人の俺が嫌になる。


最初から、ヒビキさんがこの力を使えば、俺は必要なかった。だから、この人は使わなかったのだ、この力を。俺は気遣われていた。


「アメイさん……」


「謝らないでくれよ、俺がそうしろって、言ったからな」


そう、俺が言ったのだ。この人は徹頭徹尾使おうとしなかったその力を、俺が使えと言った。なら、俺が無力だと思い知らせたのは、俺自身だ。


これで、ダンジョン攻略は大分楽になる。例え、俺が無力になろうとも、そっちの方が優先だ。やっぱり俺、無力でも――


「何をボケっとしておるんじゃ」


クランが言う。ちょっと考え込みすぎたか。


「アメイ、疲れてるなら休みいれるぞ? アメイの目が頼りだしな」


俺は、疲れてないとジェスチャーを取って、俺の顔がこいつらに見えないように二人の前を歩く。三層攻略は、目の前だ。

読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。

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