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三月羅針譚~盾持ちと吸血鬼~  作者: FOXtale
悠久忘れぬ■■の景色
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奇襲

どうも、作者です。八十九話です。

俺達はダンジョンを進んでいく。上に下にと、階段を使い、分かれ道に当たっては選ぶ。途中までは俺達が選んでたが、いつの間にかアメイとヒビキさん、あとはハイカさんの三人で相談していた。


その間にも、何度か魔獣に遭遇したり、宝箱もいくらか発見し、中々ダンジョン探索らしくなってきた。


「やはり、あるとしたら外縁でしょうか」


「まぁ、そんな感じするよな」


そんな話をヒビキさん達は相談していた。あるというのは恐らく下への階段のことだろう。


外縁というのは、つまり一番端だ。そうなると、まだ先な気がするな。


一層だってかなりの広さだった。そう考えると、この層や三層だって相当広いはずだ。まぁ、もう俺にはあまり現在地がわかっていないが。


とはいえ、ここまでマッピングなどを全て任せきりにしているのは申し訳なく感じてくるな。一層でも、分断されたときに、ヒビキさんやアメイがいなかったらと思うとぞっとする。俺も少しくらいは、現在地を把握する術くらいは学んでおいた方がいいだろうか。


「うーむ、ここまで複雑じゃと、こうダンジョン掘ったりできんかのう」


ダンジョンを掘る。まぁ、それが出来れば通路はほとんど無視できるな。


「出来たら苦労しないんですがね。ダンジョン内というのは不思議なもので、どんなにパワーがあっても、ダンジョン内の構造は壊せないんですよ」


ダンジョンを幾度も踏破しているヒビキさんは、クランにそう返答した。確かに、ここまでかなり暴れているが、エフィの魔法でも、クランの槌による一撃でも、精々表面が少し削れる程度で、ほとんど傷がついていなかった。


だが、たまに素材がダンジョン表面についていて、それが採取することが出来たりと、確かに不思議である。


「それどころか、酸素の枯渇もなければ、そもそも空間自体がねじ曲がっていますから」


酸素の枯渇。確かに、ここまでエフィが炎魔法を何度も放っているが、一酸化炭素中毒になったりはしていない。


それに空間がねじ曲がっている、か。


「やはりダンジョン内と外では広さが違うんですか?」


「そうですね。そもそも、ダンジョンの入り口付近を掘ってみても、全くダンジョンにたどり着かない、なんて話もあるくらいです。根本的に別空間となっているみたいです」


そうなのか……直接地下にあるわけではなく、あくまでダンジョンの入り口を通じて別空間につながっている感じなんだな。


「だったら、ダンジョンの入り口を防がれたら終わりじゃないか?」


「まぁ、そうですね。ただ、ダンジョンの入り口もまた構造物。少なくとも入口自体が壊される、ということはまずありません。それに、ダンジョンを攻略したとしても、深部から崩壊していきますから、まず入り口が消えて閉じこまれる、ということはあまりないですね」


逆を行ってしまえば、人為的に入口を防がれてしまったら元も子もないわけだ。ハイカさんとかエフィなら魔法なんかで無理やり突破できそうだが。


深部から崩壊するというのも、初めて聞いた話だな。前ダンジョンを攻略した時は、俺は気絶してしまって、ダンジョンが崩壊していく様子というのは一切見れていなかったから、今回攻略したら見えるだろうか。


(それはあるまい、ダンジョンが崩壊するのは数日がかりじゃからな。それに、崩壊するところを見るということは、もう閉じ込められる寸前であろう)


それもそうだな。少し興味はあるが流石に危険か。


そんなことを話していると、天井の高い、つまり二階層と三階層がひとまとまりになった部屋が見えてくる。もちろん、魔獣の姿も見える。


「この感じ、最初の部屋と似ていますね」


「しかも、今度は敵わんさかいるし」


「ぼ、僕の魔法で突破しますか?」


まぁ、それがいいだろう。似たような方法でここまで三回ほど敵を処理してきた。やはりエフィの魔法はすさまじく、大抵の敵はそれで処理できてしまう。


それこそ一部屋いっぱいにいる敵でもほとんど潰してしまうほどに。一応、あのラヴァハンドは炎に耐性があるせいで倒せないが、それぐらいならハイカさんが一瞬で処理してしまうのでそれも問題はない。


一応、こっちにも飛び火する危険性はあるが、そこは、俺の盾で防げる。


「そうですね。残った敵はハイカさんにお願いする感じでいいでしょう」


「了解です」


ということで、後は通常通りに敵を倒すだけだ。油断はできないが、かといって力は入れすぎない。流石にここでエフィが失敗するとも思えないし。


エフィは、アメイがいた最前線の位置まで近づき、魔獣たちを射程に収める。


「じゃ、じゃあ、行きます……」


誰もが、少し慣れ始めた作業に油断をしていた。今まで、敵は、こちらに気づかなければ部屋からは出なかったし、近くにマドハンドの気配もない。


エフィが魔法で魔獣を処理するのを眺めるだけ――その考えが命取りになる。


『天焦がす炎よ、我が声に――』


(泉!)


「イズミさん!」


クランの精神共有と、ヒビキさんの声がほぼ同時に重なる。後衛側二人の声、俺はすぐにクランとの視覚共有を最大化し、二人が叫んだ”要因”を見つける。エフィが、殺される。


一歩、猶予はその一歩だけ、俺は最低限の動作で、最大限の力を込める。跳躍、そう言っていいほどの速度で、魔法詠唱のために前に出ていたエフィの背中までたどり着く。多分、一秒にも満たない時間。


俺は盾を構える。その無限とすら錯覚しそうなほど鋭い牙を並べた口に盾をぶつける。盾とぶつかった牙は鈍い音を上げ、通路全体に反響する。


その存在は、攻撃が失敗したと悟った途端、深追いはせず、一瞬にして”土に潜る”。


「え?」


唐突のことで、エフィは魔法の詠唱を中断する。


「まずい! 全員、走れ!」


盾と牙がぶつかった音は、通路を反響して、そして”部屋”にいる魔獣たちの所まで届く。通路に魔獣が押し寄せてくる。


俺はエフィを小脇に抱え、走る! 通路に魔獣が押し寄せれば、気軽に魔法は使えず、あの物量を狭い通路で対処することになる。そうなれば、じり貧だ!


「殿は私がつとめます! とにかく、次の部屋まで!」


走って次の部屋まで到達するだけ、とにかく広い部屋で戦うことを優先し、元来た道を引き返す。幸い、敵の速度は遅い。このまま後退すれば、問題はない――普通ならば。


「くそが!」


アメイは叫ぶ。その悪態をついた先にいるのは、マドハンド、先ほどまで一切存在感を示さなかったマドハンドとラヴァハンドは、俺たちの後退していく先に先回りしており、俺たちへの”攻撃”ではなく、”妨害”を仕掛けてくる。


「エフィ! 後退先のラヴァハンドをお願いします!」


「……は、はい!」


エフィはどうにか放心状態から抜け、俺に抱えられながらも魔法を放とうと、詠唱を始める。その瞬間、先ほどの”牙”が、いや”サメ”が、再び土より現れる!


「ふん!」


その”サメ”をクランが槌でぶっ叩く。サメは攻撃を受けた衝撃で、再び土の中へと消えていく。マドハンドに”サメ”――ここから先、俺たちに息をつく暇など与えられないのだと、俺たちは思い知る。

読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。

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