ダンジョンの脅威と対価
どうも、作者です。八十八話です。
「いつもの陣形で!」
前方からくる敵に俺たちは対処する。基本的にはハイカさんが処理して、俺が防御する。これで大抵の敵は処理できる。だが、やはりマドハンドが厄介だ。あらゆる場所から飛び出して、妨害してくる。
足を掴まれると動きにくい。それに、エフィやアメイにも攻撃が飛んでくるから油断ができない。とはいえ、後ろのフォローはクランとヒビキさんがやってくれる。
いざとなれば『交換』もある。それで対処はできるが、やはり、弱い。ハイカさんがいるから楽に対処できているのは間違いない。
しかし、それにしたってここの推奨レベルは70だ。平均レベルが55程度の俺たちでは多少なりとも火力不足になったりするはずだ。それが、あまりになさすぎる。
まだ、何か……。
「ぐっ!」
俺の右肩に何かが飛んできて、燃えるような痛みが広がる……! これは、溶岩か! 高熱が体を襲い、少しずつ肉が焼け溶けていくのが分かる。
「イズミさん!」
『陽なる波動よ、この者を癒せ!』
『治癒』
俺はその溶岩を払い、それと同時にクランの治癒魔法が俺の肩を癒す。だが、今のは……!
「エフィ! ”上”です!」
『! 石よ、獣を撃て』
『石弾』
ヒビキさんの指示にエフィは、壁に張り付いていたその”手”に魔法を放つ。その一撃で敵は沈黙した。しかし、今のはマドハンドじゃない。
魔法を放たれ、絶命したその腕は、土ではなく、溶岩で構成されていた。
「ちっ! 土の次は溶岩、”ラヴァハンド”か!」
アメイがそう叫ぶ。土の次は溶岩か……しかも、今度は遠距離攻撃……土より数段厄介だ。しかも、”ラヴァハンド”は倒した一体では終わらず、次から次へと生えてくる。
「フォーメーションを変えます! クランとイズミを交代! イズミさんは上を警戒してください!」
俺は、未だ痛む右肩を上に突き出しながら、エフィたちに近づく。クランの治癒魔法がないと、相当再生に時間がかかってたな!
「ヒビキさん! 前方の敵はある程度蹴散らしました! このまま通路へ!」
ヒビキさんはそれにうなずき、チーム全体で前進していく。次から次へと生えてくるラヴァハンドは、体から生成した溶岩の弾を、俺たちに落としていく。
幸い、俺の盾はバレンさんがそう簡単に融解しないように作ってくれていたから、問題なく対処できるが、熱耐性の低い武器だとそのまま溶かされそうだ。
溶岩の雨を防御しつつ、どうにかエフィの射線を確保し、ラヴァハンドたちを打ち落としていく。しかし、ラヴァハンドたちは避けたりしてくる。
「当たらなくなってきた」
「交代します!」
先ほどまで前線にいたハイカさんは、俺たちが通路口まで来たのを確認しこっちまでやってきていた。そのまま殿まで下がり、溶岩の雨を避けながら、カウンターで水の刃を飛ばしていく。
やはりすさまじい。俺たちが完全にラヴァハンドの射程から抜け出したのを確認すると、ハイカさんも通路に入る。しかし、後ろからラヴァハンドたちが追いかけてきており、それの対処をせざるをえなくなる。
「イズミ! 前へ」
俺はハイカさんの言葉通りに、一人でスケルトンたちの相手をしていたクランのフォローにつく。さっきから動きが激しいな!
(ちっ! うっとしいわい!)
クランの考えていることはもっともで、スケルトンたちは、クランに群がっている。とにかく数が多い。
クランも魔法と槌で対処しているため、かなり数は減ってきている。しかし、それでもクランは防御が薄い、一発がそれなりに重くなってしまう。俺はクランの死角に行き、そこからの攻撃を防ぐ。
マドハンドが邪魔だ! 足元が飛び出されるだけでも動きが鈍る!
「ラヴァハンドの対処は俺がやる! お前は防御に専念しろ!」
そう思っていると、アメイが前に出てくる。確かに、マドハンドだけであれば、アメイでも対処できる。かなり助かるな。
そうして、対応していると、次第に前方からの敵は収まっていく。どうやら、近場の敵はあらかた対処できたらしい。
「ラヴァハンドの撃退完了です!」
ヒビキさんが後ろの様子を報告してくれる。とりあえず、ひと段落だ。
「いったん小休止しましょう」
俺たちは、各々携帯している水を取り出し、水分補給する。
「下に降りてすぐにこれだ。にしてもあの腕、多分”ラヴァハンド”だな。あいつ普通に厄介だろ」
アメイがそんな悪態をつく。あぁ、マドハンドも厄介だったが、それ以上だ。純粋に火力が高い。防御性能は低そうだが。上からの溶岩攻撃が普通に厄介だ。
その上、マドハンド同様唐突に出てくる。相変わらずの不意打ち攻撃だ。
「しかし、下に降りた途端溶岩を飛ばしてこなかったので、溶岩を飛ばす腕力はないようです。あくまで落としてるだけみたいですね」
だから、上の階層にいた時に襲い掛かってこなかったんだな。安全圏からの攻撃をメインにしている感じか。だが、あの溶岩攻撃。俺以外が食らったらまずい気がするな。
「だが、前の通路は分かんねぇが、右の通路はいかなくてよかったな。多分、もう一方の崖についたっぽいし」
そうだな。恐らくその可能性が高い。そして、右側の地下三層部分はまだ魔獣を対処していなかった。そうなると、ラヴァハンドの対処をしつつ、あの魔獣たちも一緒に対処する羽目になっていたかもしれない。
少なくとも、エフィにもう一度広範囲魔法を撃たせることになっただろう。まぁ、エフィの魔力量ならまず問題ないが。
小休止を終え、俺たちは通路を進んでいく。ヒビキさんは、マッピングを進め、アメイが通路の先へ進んでいく。
「……お?」
分かれ道につくと、エフィが片方の道を見て何かに気づいた。特に、何も言われなかったので、アメイの位置まで進み、同じ方向をのぞくと……あれは、宝箱か!
「おお、ついに見つけたか! では、早速……!」
「まてまて! まずトラップの確認!」
アメイはその言葉の通り、慎重に宝箱に近づき、トラップがないかを入念に確認する。そして、無いと確認できたのか、恐る恐る宝箱を開ける。
どうやら、問題なかったようで、もう一度トラップの確認をしながらこちらに戻ってくる。
「はっはっは! 中々いい魔石だ!」
「あ、本当ですね。結構質がいい!」
クランとエフィは目を輝かせながら魔石をのぞき込む。前のダンジョンで見たものより、随分と色鮮やかな赤色をしており、形もきれいな球体だ。
「これなら、高く売れそうですね。流石百年ダンジョン、といったところでしょうか」
ハイカさんもそう太鼓判を押す。
「つっても、二階層に入ってやっとこれが手に入るんじゃ、そりゃ攻略されねぇわ」
アメイが言う通りだろう。あの、迷路内には、一切と言っていいほど宝箱がなかった。そして、その迷路をやっとのことで抜けても、その先のこの二、三階層も決して楽ではない。まぁ、割には合わないな。
「ですが、これなら攻略報酬は期待できますね」
ヒビキさんの言う通り、宝箱でこれだけ質が良ければかなり期待できる。
「さぁ、この調子で進むぞ!」
クランは、宝箱の発見にモチベーションを上げ、意気揚々と言い放ち、進もうとするが、それを俺が引き留める。お前が一番最初に進んでどうする。
「はぁ、ちゃんとアメイの後ろを歩け」
「……わかっておるわ」
絶対忘れてたな。まぁ、いい。ダンジョンの厄介さに疲れが見えていたところだが、やはり宝箱が発見できると気分もよくなるな。この調子で、進んでいこう。
「ラヴァハンド……厄介極まりないですが……本当に厄介なだけ?」
――俺たちは進んでいく。”捕食者”の目に監視されながら。
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