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三月羅針譚~盾持ちと吸血鬼~  作者: FOXtale
悠久忘れぬ■■の景色
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二層(三層)

どうも、作者です。八十六話です。

「さて、今日からは、二層及びに三層の攻略に入っていきます」


ヒビキさんが食事が終わるころに今日の行程について説明する。二層の攻略、厳密には二層及び三層の攻略である。


なぜ、そんな風に言うのか。それは、二層と三層がくっついているからである。一層が二次元的な迷路だとすると、二層と三層は、上下を行き来する三次元構造なんだそう。


「それでは、フォーメーションを――」



俺たちは階段を下る。階段を下るときはいつも中々に緊張する。まぁ降りた先に魔獣がいるというのは今のところ遭遇していない。階段付近は割と安全地帯なことが多いらしい。


「二層の攻略、大丈夫だといいが」


(問題ないじゃろうて)


クランは楽観的だが、一層の時点でそこそこ痛い目を見ただろうに。まぁ、一層と二層以降では随分と様子が違うし、油断はしない方がいいだろう。


「まぁ、油断はできないですね。何より、前回調査の時からずいぶんと様子が違う」


俺の後ろを歩いていたハイカさんは、警戒心を高めながらそう言った。確かに、一層は前段階の調査では、ダンジョンが意図的に分断してくるなんて思いもしなかった。


ダンジョンが成長するというのは、そういうことなんだろうが、それにしても恐ろしい話だ。防衛機能だとしても、何というか悪辣であった。


「ダンジョンがギミックで分断してくるとか、二層以降もありますかね」


「……可能性としては低いかと。一層と二層以降では力の入れどころが違うはずですから。ただ……あのマドハンドは警戒しておいてください。恐らく、二層以降も出るので」


一層ではギミックに魔力が注力されていた分、魔獣が弱かった。つまり、魔獣が強くなれば、構造そのものを動かすなんていうのは難しくなるわけだ。


それにマドハンドか。確かにあの魔獣は厄介だ。強くはないが、不意打ちが上手い。特に詠唱中に攻撃してくるのは厄介だ。詠唱中はどうしてもそっちに意識が集中しがちだからな。


そういう意味では、やはりエフィには意識を向けておくべきだな。


「ああ、ハイカさんも気を付けて」


「ええ、互いに油断せず行きましょう」


さて、階段を下り終える。その先に広がっていたのは、大きめの空間だった。しかし、魔獣の類は見えない。そして、その空間は、東西南北に道が広がっている。


どの方向に行くか悩む。正直、どこが正解なんて全くもって見当がつかない。


「さて、運がいい人はいますか?」


ヒビキさんは俺たちにそんな問いを投げかけるが、それに対して、全員目をそらす。それはそうだろう。ここ最近、運がいいことはあまりなかった。異世界についてすぐに追放、ダンジョンに潜ればダンジョン暴走。


そして、アイカの誘拐。家出した魔王。まぁ、ここ数か月、散々な目には合ってるな。出会いには恵まれているんだが。


少なくとも、トラブルの種を回避する運に関しては持ち合わせていないのは事実である。


「では、団長と副団長で決めてください」


まぁ、そうなるか……。俺とクランは目を合わせ、とりあえず、いっせいのーでで言うことにした。


「「じゃあ、東で」」


……ぴったり合ってしまった。俺とクランは目を合わせ、互いに微妙な顔をする。うん、この場合合ってしまう方が駄目な気がしてならなかったが。


「それでは、東から行きましょうか」


しかし、ヒビキさんはいつもの調子を崩さずそう言った。まぁ、どう足掻いたって大変なことには変わりない。


行くしかないだろう。俺たちは東の道を進む。フォーメーションは一層とは違い、というか、こちらがいつものフォーメーションである。


探索時はアメイを先頭にして、魔獣に接敵した場合は、俺とハイカさんを前衛にする。そして、中衛にクランを置く。ヒーラーとして前衛をフォローにしながら、後衛二人を護衛する形だ。そして、後衛はエフィとヒビキさんの二人だ。


いざとなればクランと入れ替わって後衛の防御に回れる。そういう風なフォーメーションになっている。


「てめぇら、最初だ!」


通路を出たアメイはすぐさま叫ぶ。接敵が早い! 武器を構え、俺は飛び出す。この判断が間に合わないとまずかった。


俺はアメイの前に立ち、飛んできて何かの攻撃を防ぐ。すごいスピードで何か飛んできた。しかも、()()()。なるほど、三次元っていうのは本当らしい。


俺たちが出た通路の先は、ほとんど崖のようになっている左右が大きくくぼんでいる。おそらく、あの下の場所が三階層だ。


下からの攻撃。今の攻撃は、”鳥”か。俺は少しだけ盾を見ると、鳥の死体が張り付いていた。今突っ込んできたのはこの鳥か。恐らく、突っ込んだ反動で死んだんだろう。


名前は確か、バラハロ。弾丸のように飛んでくる鳥だ。こいつの攻撃をもろに食らうと普通にまずいらしい。


しかも、下と前には弓や剣を持つ武装スケルトン。こいつは厄介極まりないな。


「ヒビキさん!」


まだ、後ろの部屋にいるヒビキさんに話しかける。もうアメイが通路の状況を伝えているはずだ。


「突破します! ハイカとイズミは通路の先まで行って状況を確認してください! それをアイカ越しに通信!」


『精兵共、攻めろ』

攻撃指令(アタックコール)


その言葉を聞くと同時に、俺とハイカさんは飛び出す。


「後ろお願いします!」


ハイカさんは前の武装スケルトンと交戦する。前との戦闘に集中するハイカさんの後ろを援護する。恐らく、ハイカさんは後ろを気にしていない、いや、厳密にはハイカさんは俺に丸投げしてくれてる。


通路はハイカさんに任せればいい。だから、下からの攻撃を防御すればいい。下からは、基本的に弓が飛んでくる。スケルトンたちの攻撃だ。


問題は左と右、両方から弓矢が飛んでくる。それを完全同時に防ぐのは難しい。しかし、俺の前にいるのはハイカさんで、俺に色々と教えてくれた人だ。その人の教え忠実に守るとしよう。


”防御に優先順位をつけなさい”


ハイカさんにずっと教えられていたのはそれだった。誰を守るか、どの攻撃を防ぐか、そこに優先順位をつけろと。俺の身体はどう足掻いたって一つ。すべての攻撃を防ぐことはできない。だからこそ、”致命傷”は絶対に防ぐ。それが、この教えの神髄。


俺はすぐにハイカさんの動きと、下からの攻撃を確認する。ハイカさんは今右に寄っている。だったら、防ぐべきは、”右”。


俺はハイカさんの右隣に立ちその盾を構える。もちろん、後ろからの攻撃にも警戒しつつ。とはいえ、そっちはあっちの部屋からエフィが援護してくれるはずだ。


とにかく、今は右の弓矢を防ぐ。そうすれば、左は、片面くらいであれば、ハイカさんは軽く避けられる。


そうして、前の敵を突破し、通路を抜ける。


「魔獣の影なし!」


ハイカさんの言葉を聴覚を共有してクランに伝える。これであっちにも伝わったはずだ。


あっちの三人をこっちに持ってくるだけ……はぁ、やっぱり、運が悪いな!

読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。

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